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偶然にしては、運命すぎる旅1【権現堂編】〜予感の彼岸花〜

「いつか行きたいね」

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そう。

私と耳男くんは
本屋さんで
『尾瀬の本』を
見ていた。

以前から、登山をしたがっていた耳男くん。
最近、野花にハマっている私。

そんな2人が
次の旅に目をつけたのが
尾瀬だった。

四季折々の
豊かな自然に触れながら
ハイキングか楽しめ、
キャンプやロッジに泊まりながら
一泊2日で登山をする人たちもいる。

いつもノープランな私たちも
ちゃんと予習をしに、
本屋にやってきた。

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(⇓知らない方へ。ざっと。
知ってる風に書いてますが
今まともに調べました。)

尾瀬とは、
福島県・新潟県・群馬県・栃木県の
4県にまたがり、
山々に囲まれた
本州最大規模の高層湿原のこと。

最大の魅力は、
尾瀬ヶ原に代表される
湿原の美しさにある。
山稜部や山腹にも多くの湿原が見られ、
ハイキングをしながら
池や沼の神秘さや花の可憐さを
堪能できる。
特別天然記念物にも
指定されているという。

また、この一帯は
国立公園保護地域で、
歩道以外への立ち入りが
制限されている場所でもある。

つまり、長い月日をかけ
自然環境が守られているからこそ、
自然本来の美しい姿や
日本の四季に
合わせて咲き誇る花や植物を
楽しむことができるのだ。

尾瀬は
ハイキングに訪れる人の心を
一年中魅了する、
「生きた自然に還れる」
特別な空間なのである。

だけど。

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「なんだろ、アウトドア初心者の
ボクたちには
ハードルが高そうな場所だね。」

耳男くんが本を閉じる。

「そだね~」

「先輩にいつか連れて行ってもらおう」

運悪く
文字の多い本を手にとったせいか、
尾瀬の旅が
難しく感じてしまった。

まぁ、すぐ行かなくてもいいのだ。
いつか行けたら。

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時間は夕方17時。
小腹が空いた。
たこ焼きを食べて帰ろう。

ショッピングモールに入ってる
銀だこの列に並ぶ。
たこ焼きが
出払ったあとのようで
せっせと店員さんが具を入れている。
列が進まない。
結構待ちそうだ。


ー10時間前に戻るー


9月19日、土曜日の朝。

「どこ行こう~」

急きょ決まった、
耳男くん久しぶりの二連休。
二連休なんて
いつぶりだろう。

「いっぱいお出かけできるよ!
車中泊もできるし、ワクワク!」

早朝からテンションMAXの
耳男くん。

しかし。
この数年、毎週のように
お出かけしているため、
突然の休みに
行き場を失っていた。

一度行った場所には
あまり行きたがらない耳男くん。

そうなると選択肢が狭まる。

行き場所に数時間悩み、
ダラダラ。
結局、
今日は近場にしよう!となり、
年に何回か訪れる
「権現堂」に
彼岸花を見に行くことになった。

(正解に言うと近場でもない)

「権現堂」は
と〜っても広い公園で
季節に合わせいろんな花が咲く。

特に春の桜は圧巻で
風が吹けば360度、視界が
桜の花びらでいっぱいになる。

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今日はちょうどお昼頃に
着きそうだったので、
ピクニックがてら
お弁当を持って行った。

車を降りると、青空。
台風通過後の影響か、
季節はずれの暑さに汗ばむ。
橋を渡る。

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すると…。

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「わぁ〜!すごいね!」

そこには
彼岸花の海が広がっていた。

やっぱり、
何度足を運んでも
「権現堂」は素晴らしい。
初秋の景色も美しかった。

しかし、今日は
照りつける日差しが暑い。
手が汗ばむ。
だけど、繋ぐ手からは
軽やかに
"楽しい"が伝わる。

さぁ、チカラを出すために
ランチタイムだ。

日陰を選び、シートを広げる。

腰をおろした木陰は
心地よい風が吹き抜け、
さっきまでの暑さが
嘘みたいに涼しくなって、
とっても気持ちよかった。

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「は~、平和~令和~」

「ちょうどいい~。
今のこの感じ、本当にちょうどいい~」

お弁当を食べながら
漏れる幸せ。

「はあ、今日は特に
お弁当が美味しく感じるね~。
自然はどんなものも
美味しくさせるよね~。

何を食べるか
どこで食べるか
誰と食べるか、だね。
ね、耳男くん!」

「(聞いてない)
あ~、今日はずっとここにおれるわ~」

たわいもない会話を
空に放つ。

「権現堂来てよかったね~。
この空眺めてるだけで
もう今日は充分楽しいよ~。」

「…ってかパン子さ、
その小さなオムレット
食べるのに
どんだけ時間かかっとるん!」

私の片手に握られた
オムレットのカケラを
不信そうに見る耳男くん。

「え、だって美味しいから
ちょっとずつ食べたいもん」

「美味しいものは
パクパク食べるほうが
美味いよ。
ボクを見てみい!ほれ!」

大きな手につかまれた
オムレットは一段と小さく見えた。

パクッと口に運ぶ耳男くん。

「1(ひと口)、2(ふた口)!」

2秒で食べた。

私が5分くらいかけて食べてた
セブンのマカダミアナッツ入り
オムレット(4個入り)を、
本当2秒で食べた。

「パン子はもっと
食べていいんだからね。
ほれ1、2!」

これは、彼のやさしさだ。
摂食障害の私に
好きなものをたくさん食べなさいと
遠回しに私に伝えてくれてるんだ。

相変わらずいい奴だな…
と思ったけど、
さっきまであった
食後のオムレットは
いつの間にか
3個なくなっていた。

「は~気持ちいい~」

ご飯を食べたあとは
脱力。
そのまま寝転び、
青色を楽しそうに遊ぶ白い鳥たちを
ただただ眺めた。

こんなにスカッと晴れたのも
久しぶりな気がする。

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……ミ、ミミ。

 耳には弱弱しいセミの声が届く。

「もう命を終えようとしてるね。
 足が少し震えてる。」

耳男くんが言う。

「ってか2週間って
命、短すぎるよね。
その間にこの世界に慣れて
友達つくって恋愛もしてって
分刻み。
やることいっぱいだよ。

鳴く以外のことに
そのチカラと時間を
使ったらいいのにね。
もったいないよ」

食べることや痩せることに
異常に執着して、
命をもったいないことにしてきた女が言う。

ついには、セミの声がしなくなった。

耳男君が命の終わりを
確かめようと立ち上がり、
セミを触る。

その瞬間…

「ミーーーーーーーーー!!」

すごい声で飛んで行った。

え、どこにそんな馬力
隠し持ってたん?ってくらいに。
驚き過ぎて、
謎の小躍りをする耳男くん。
爆笑。

「生き物って最後の最後に
チカラ出すっていうやん。
うちのじいちゃんも亡くなる直前、
ギュッと手を握ってくれたもん。」

「ひえ~、ビックリした」

照れ隠しか、さらに変に踊り出した。
ドンタコス、ドンタコス。

セミが止まっていた
桜の枝を見ると、
先の方が3つに分かれ
ふっくらとしていた。

「もう次の花を咲かす準備してるんだね」

「そうだね」

終わったんじゃない、
始まってるんだ。

終わる命とはじまる命が
絶えず巡っている自然。
見えていないだけで、
人間の世界でも
常に命は巡っている。
私のカラダの細胞も
常に巡っている。

朽ちて咲いて
泣いて笑って
繰り返していくんだ。

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「こうしてね、足を運んで
目で見て、耳で聴いて、さわって。
自然を感じることが
大事なんだよ」

サラッと良いことを言う耳男くん。
たしかに、だ。

この権現堂もたまに来るけど、
毎回感じることが違う。

咲く花も違えば、
見る時間も天気も
私の心も毎回違うから、
同じ場所だとしても
行く度に
オリジナルの感動がある。

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情報が溢れ、
目的が情報の答え合わせ化してる
昨今でも、
やっぱりその場に足を運ばないと
本当のことは感じれないなと思う。

特に旅は想定外なことが起きるから、
たくさん感じれることがあって
楽しい。

それにしても
自分がこんなに自然を
好きになるなんて
結婚する前は
想像もしてなかった。

きっと、
誰と過ごすかで
開く人生の扉が変わる。

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1人では開かなかったはずの
「自然を愛す扉」が
今や全開。
自然を感じる時間が
大好きだ。

それに「感じる」ことは
人間にとって
すごく大事なことだと思う。
そのまま
心のパワーになるから。

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コロナになって
いろんな制限があるけど、
「感じる」ことをしないと
人間の心は褪せていくと思う。

不要不急の概念は
人それぞれだけど、
心のパワーが減ったら
それを溜めることを
怠っちゃいけない。

目に見えてないだけで、
あるんだから。

目に見えないものだからって
優先順位を下げてはいけない。

人間の健康的な生活において
心のパワーは
必要不可欠だから。

感染対策をしながら
適度に外に出て、
自分の心を健康にしたいなと思う。

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「ぐるっと回って帰りますか」

「うん!」

今回、桜の次に人気の
彼岸花の時期に初めて来たけど、
人気の意味が分かった。

本当にあふれていた。
紅色の海というか、
彼岸花の絨毯みたい。
「わ~!」と
声をあげてる人たちがたくさんいた。

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昔は故人を想うイメージがあって
なんだか寂しい気持ちがした
彼岸花。

だけど移住して、

「彼岸花は
曼殊沙華と書いて
マンジュシャゲとも言うんだよ。
天界の花っていう
意味があるの」

そう地域の方に教えてもらい、
イメージが変わった。

なんでも、古くから
おめでたいことが起こる前に
天から花がひらひらとふってくる、
「良いことの前兆」だと
語り継がれているらしい。

その視点で見れば
今、目の前で咲き誇る彼岸花は
「めちゃくちゃいいことが起こる」
最高の景色ってことになる。

なんだか嬉しい。

花だって視点を変えて見るだけで、
心が感じることは
こんなにも変わる。

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そして今回、新しい発見もあった。

特徴的なカタチをしている花びら。
じっくり見ると、
どれも花びらが6枚。

そして、
「1、2、3」
「1、2、3、4」
咲きかけの花を見ると、
円を描くように
順に花びらが開いていた。

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「え~すごい。
花びらが一枚開いたら、
その隣がまた一枚開くんだ。
バラバラじゃないんだね。
縁(円)を描く花だ〜」

花って種や球根はそれぞれ
バラバラなのに、
複雑な花びらのカタチも
重なり方も同じで、
すごいなぁと思う。
特に椿の花は
美しい設計と思う。

その日は彼岸花の他にも
向日葵やコキア、
小さな百日草や
コスモスも咲いていて、
私たちの心を
ハッピーな色にしてくれた。

花と空に元気をもらった
1日だった。

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あ、たこ焼き。
やっと順番がきた。
15分か20分くらい待った。

座って頬張る。

「美味しい〜!
出来たての銀だこは裏切らないね!」

「うん!
シンプルに上手い!」

待つほど美味い、銀だこ。
学生のカップルのように
たこ焼き一個一個に感動しては
笑い合う。

それにしても、
なにか大事なことを忘れているような…。

2に続く。

泣き虫 パン子

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