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偶然にしては、運命すぎる旅5【覚満淵編】〜手繰り寄せた景色〜

「え?
ここ尾瀬やない?」

そう。そこには
昨日、本屋で見た
尾瀬の写真のような世界が
広がっていた。

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軽く心が震える。

「え、昨日見た写真に
すごく似てるんだけど。
尾瀬って何県?」

「いや、
もっと新潟のほうだと思うけど…
似てるね。」

「尾瀬みたいだよね!?
行ったことないけど!(笑)」

「うん。最高やん、ここ」

感動がとまらない。
緑に囲まれた中にある、
木でできた遊歩道。

本当に尾瀬っぽい。

耳男くんの両手がずっと
ヒラヒラしている。

「やばい。
歩いてるだけで楽しいね」

緑も水もとってもキレイ。
神秘的な雰囲気。

木々が日傘になって
涼しい風を運んでくれる。

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橋の下に降り、
水の温度を確かめる耳男くん。

「冷たい?」
「うん!
そしてキレイ!」

耳男くんは
川を見つけると
必ずといっていい程、
水を触りたがる。
そして、
冷たいと嬉しがる。

木漏れ日にあたる
耳男くんの笑顔が可愛い。
橋の上から写真を撮る。

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「魚が泳いでるよ〜」
「気持ちよさそ~」

なんだろう。
「楽しい」
が何度も漏れる。

道の先に見える
陽が差しているほうへ
歩いていく…。

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すると…。

さらに
そこは別世界。


透明な湖。
ぐるっと囲む山。
青空。
湖を渡る遊歩道。

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「いや、尾瀬やん!」

「すご~~~!
景色最高~~~~!」

風がやさしく
体をほぐす。
紅葉し始めた木々に
心が落ち着いていく。

そよそよ揺れながら
歌う草木。
ゆらゆら揺れる、
水面の模様。
ヒラヒラ泳ぐ、
耳男くんの両手。

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リズムに乗りながら
遊歩道を歩く、
幸せそうな後ろ姿が
嬉しい。

よく分からないけど
尾瀬、
みたいなところに来た。

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「尾瀬もこんな感じなのかな〜」

「ね〜。
わっ、ここにも
パン子ちゃんとボクがいます!」

湖を見ると、
2人の影が映って揺れている。

いいタイミングで見つけるな~。

パシャ。

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影の写真を撮るのが
好きな耳男くん。
待ち受けにもして
思い出を大事にしてくれている。

カタチだけの影は
ずっとずっと歳をとらない。

それにしても、耳男くん…

「ね、乙女?」

「ん?何?
ここは尾瀬〜」

「なんでもない。
ここは尾瀬(どこ)〜?
私はパン子(だれ)〜?」

さっき見た
迷子の羊の気持ちが
少しだけ分かった。

本当に本当に
ここは、どこ?


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種を明かそう。

実は、
私たちがたどり着いた
覚満淵(かくまんぶち)。

本当に
「小さな尾瀬」と言われている
場所だったのだ。
なんと
「小尾瀬」と呼ばれいた。

なんでも
気軽に短時間で
ハイキングができるコースとして、
赤城山では
有名な場所だという。

(あとで調べて分かった)

「覚満淵」は
群馬にある赤城山の山頂、
標高1,360mにある湿原で
湿生植物と高山植物の
宝庫なんだとか。

自然観察に最適で、
いつ来ても四季折々の絶景を
楽しめる。

つまり、
尾瀬まで足を運ばなくても
尾瀬気分が味わえる、

「ミニマム化した尾瀬」
なのだ。

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…すごい。


何がすごいかというと
私たちが今日、
「小尾瀬」に
辿り着いたことが、だ。

たしかに昨日、
「尾瀬に行きたいね」と
本屋に行った。

だけど今日、
私たちは
コスモスを見に来たのだ。

「鼻高展望花の丘」にある
コスモスを見に来たわけで、
群馬にも山にも
行きたかったわけではない。

もちろん、
「小尾瀬」と呼ばれる場所が
あることも知らないし、
「尾瀬のような雰囲気の場所」に
行く予定もなかった。

どちらかというと
昨日本屋で手にした本の
文字の多さにハードルを感じ、
尾瀬に行くことを
若干諦めかけていた。

なのに。
なのに、だ。

「小さな尾瀬」と言われる
場所にたどり着いたのだ。

「小尾瀬」と呼ばれている場所は
他にない。

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偶然?
耳男くんといると
こういうことが起きる。

自然は
繋がっているから?
自然と
たどり着いてしまうものなの?

ううん。

きっと、
手繰り寄せてるんだと思う。

私たちは知らず知らず、
胸の中に閉まっている願いを
探しているのだと思う。

よく、"導かれた"
という言葉があるけど、
それは後付けの話で。

本当は
瞬間瞬間にある
小さな選択肢の中で、
こうなりたい
ここへ行きたい。
心に秘めた想いに
近いものを選び、
偶然と呼ばれるものを
手繰り寄せてるのだと思う。

何かに導かれたように見えて、
ちゃんと
自分が導いている。

そして。

感性が似た2人が
2人で同じことを想ってるから
心で願っている場所に
たどり着きやすくなるんだと思う。

1人では巡り会えなかった。
耳男くんとだから、
私は今日
「小尾瀬」にこれた。

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もしコスモスのあと。

ジェラートを食べに
群馬の町並みが見渡せる
牧場に行かなければ?
日本の伝統品
だるまに興味を示さなかったら?
野花を見たいと思わなかったら?
たくさんある山の中でも
赤城山を選んでなかったら?

きっと、
「小尾瀬」には
辿りついていない。

やっぱり頭のどこかで
尾瀬のような景色を
求めていたのだと思う。

ひとつひとつの選択が
小尾瀬に向かう
道のりになっていたのだ。

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話を戻す。

蝶々みたいなアメンボの影。
明日は十五夜、風に揺れる芒。
見たことのない植物や赤い実。
来月には
絶好の紅葉が楽しめるだろう。

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半周くらいを終え、
歩いた道を振り返る。

すると。

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そのままぴょんっと
飛び乗れそうなほど
はっきりと雲が
湖に映っていた。

鏡のよう、
2倍に広がる空。

「キレイ…」

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建物も看板も雑音もない、
自然だけでできた世界。

美しい。
シンプルに、
美しい。

欲するものがない。
あるのは
ここにいていいんだ、
という愛。
だけど、
愛があれば
満たされていく。
シンプルな世界。

日本は、
美しい。

これが本来の
人のカタチのような気がした。

ベンチに腰掛ける。

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高齢のご夫婦、若いカップル
家族、友人グループ、
ハイキングスタイルの女性。
通り過ぎる人みな、
微笑んだ表情。

きっとここに居る誰もが
今、満たされいる。

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「ね、尾瀬の初心者コースって
こんな感じかな?」

「ねっ。
この10倍は広いだろうけど!
なんかボクらにも
行けそうな気がしてきたよ」

「うん!行こうよ!
湖を一周するだけで
こんなに楽しいんだもん。
この20倍くらい広いと思うけど!笑
耳男くんとなら
キツくても
楽しく頑張れるよ!」

「ひゃっほ〜い!」

必然のように辿り着いた
小さな尾瀬を歩き、
再び私たちは
尾瀬に行くことに決めた。


6に続く…。

泣き虫 パン子

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