【BL二次小説(R18)】 卒業旅行⑪
翌朝。
今日も良い天気だ。
朝陽が眩しい。
カフェテリアに向かう途中、丘の下を走るフリーウェイを眺める荒北と新開。
様々な車が行き交っている。
荒「ワイルドだなァ。見ろよあのトレーラーのぶっとい煙突マフラー、まるでロケットだ」
新「燃費悪そうなデカイ車ばっかだな」
荒「けどサ。ハーレーとかやっぱ憧れるわ」
新「わかる」
アメ車について勝手に誉めたりディスったりしている二人。
荒「ロマンだよなァ。ルート66で大陸横断とかさァ」
新「キャノンボールとか一度体験してみてぇな」
瞳を輝かせ、地平線を見つめる。
荒「見渡す限りの砂漠ン中をさァ。真っ直ぐな1本道をさァ。ロードでさァ」
新「ヒュウ!チャリでグレートレースかい?過酷だぜ?」
荒「……いつかさァ。オメーと二人でさァ」
新「靖友……」
荒「過酷でも楽しいぜきっと」
新「ああ。実現しような」
新開は荒北の肩に手を回した。
東「コホン」
荒「!」
新「!」
背後から東堂の咳払いが聞こえ、飛び上がって離れる二人。
振り向くと東堂と福富が立っていた。
新「お、おはよう尽八、寿一」
真っ赤な顔で慌てて挨拶をする。
東「うむ。おはよう」
福「?」
福富は何も気付いていない。
東堂はそのままフリーウェイを指差して言った。
東「卒業旅行のシーズンになるとな、居るのだよ」
荒「何が?」
東「免許取りたてでレンタカーを乗り回し事故を起こす日本人旅行者がな」
福「本当か」
東「こんな例があった。実話だ」
東堂は語り出した。
東「アメリカを卒業旅行中のA君はレンタカーを運転中、現地人をはねてしまった。被害者は死亡。A君は逮捕された」
3人は黙って聞いている。
東「連絡を受けA君の両親が日本から飛んで来た。保釈金は日本円で億を超えた」
新「億!」
東「到底払える額ではない」
福「……どうなったんだ」
3人はゴクリと唾を飲み込んだ。
東「両親はその場で親子の縁を切り、A君を置いて帰国した」
荒「ウオォ……!」
東「A君がシャバに出てきた時には35歳に」
新「青春時代が……!」
東「事故当時英語はからっきしだったA君は、ネイティブなムショ英語ペラペラになっていたという」
福「壮絶なオチだな……」
真っ青になる3人。
東堂は新開と荒北に向けビシッ!と指を差して言った。
東「ロードムービーに憧れるのも結構だが、事故にはくれぐれも注意するように!」
荒「全部聞いてたのかヨ!」
新「参ったな」
新開と荒北はバツが悪そうに頭を掻いた。
カフェテリア。
それぞれ好きな物を注文して席に着く4人。
新「オレ全メニュー制覇しようと思ってさ」
荒「無理……いや、オメーならやりかねねェ」
トレイに何種類も食べ物を乗せ、新開はご機嫌だ。
東「フク……貴様」
東堂が福富のトレイを見て驚く。
福富は食欲が失せそうなカラフルで毒々しいドーナツを皿に山盛りにしていた。
荒「福ちゃん……その水色のドーナツ、マジで食う気か?」
荒北が心配そうに尋ねるが、福富は平気な顔をして胸を張った。
福「だんだんアメリカ料理が解ってきた。このギトギトで甘々なドーナツを、ブラックコーヒーで流し込む。これが旨いんだ」
そう言ってガツガツと食べ出す。
荒「うえェ……」
ドン引いている荒北。
福「旨い!」
新「ホントかい?オレも試してみよう」
荒「ヤメロ。オレのホットドッグまで不味くなる」
荒北の非難を無視し、新開は福富の皿からレインボー色のドーナツを取ってかぶりついた。
そしてコーヒーを飲む。
新「……あ!いけるよこれ!旨い旨い!」
荒「正気かテメーら」
新「旨いって!ほら食ってみろよ」
荒「ヤメ……ムゴッ!」
無理矢理荒北の口にドーナツを押し込んだ。
新「はい、コーヒー」
荒「ムグムグ……ゴクン」
全員で荒北の顔を覗き込む。
荒「……旨めェ」
新「だろ?」
福「見た目ほど味は毒々しくない。コーヒーに良く合う」
荒「……ちっ」
敗北を認めて悔しそうにする荒北。
東「貴様達……思っていたより順応性が高いのだな。感心したぞ」
東堂が誉め称える。
東「よし。今日の昼食は面白い物を食わせてやろう」
3人「?」
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