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トラウマによる機能停止とその影響

昨日の投稿で人の防衛システムについてお話ししました。

人は危機に直面し、戦うことも逃げることもできない状態になると虚脱状態と言って機能を停止します。

機能を停止することで代謝を抑え、生き延びようとするのです。

しかし機能を停止した身体は、感情や知覚まで鈍らせます。
心の痛みや体の痛みを感じなくなってしまうのです。

これは、危機から逃げ延びた後、安全な他の人と関わる時にもネガティブに影響します。

本来人は、自分の気持ちを感じ、相手への警戒を解き、安心した状態で自分をさらけ出すことで人と親密になり、友人になったり、恋人になったり夫婦になったりします。子育てもそうです。人は警戒を解いて初めて、温かな人間関係を築くことができるのです。

しかし、昔極限の危機状態にいた(虐待があった、家庭が機能不全だったなど)場合、体は自分のみを守るために警戒レベルを上げていることがあります。

相手の言動を、自分を傷つけるものだとすぐに判断してしまったり、いつもびくびくしてしまったりすることもあります。(※1)
逆に、防衛システムに支障をきたしていることが原因で、本当に危険な時に気づけず、危険な目に遭ってしまう可能性も増えてしまうのです。
(幼い頃にネグレクトや虐待を経験した女性は性被害に遭う率が7倍高かったというデータや、家庭内暴力を目撃した女性は家庭内暴力の犠牲者になる割合が多かった、というデータもあるそうです)

人が安全だ、と判断する基準。それは人によって様々です。
しかし特に虐待を受けて育った場合、自分を守る防衛システムが適切な状態になっていないことがあり、体が安全な時に「安全だ」と感じられるような援助が必要になってきます。

私自身の話を少しします。
私は機能不全家庭で育ちました。
そして大人になってから、人の一挙一動が、自分を責めるものに感じ「闘争モード」にすぐに入っていました。相手がそんなつもりはないのに、責められていると感じたり、ばかにされている、と感じていました。
相手から「そういうつもりではないよ」と言われても、その言葉とされた行動が結びつかず、困惑しました。これは先ほどの※1に該当します。

そこから、自分の問題や課題に気づき、カウンセリングや治療、独学を続けてきました。そして私の防衛システムは少しずつ回復してきました。今は必要以上に他者からの関わりにびくつくこともなくなってきました。

また、ストレスがかかると、それを感覚として認識できるようにもなりました。

心臓が早い、ドキドキしている、そわそわする。
そういった様々な体の感覚。昔は、そういった感覚をうまく認識することができなかったんです。いわゆる、虚脱の状態だったのだろうと考えています。

人の感覚というのは、その人に何かを知らせるためにあります。
熱いお湯にずっと触れていたらやけどをしてしまうから、「熱い」と感じるし、風邪をひかないように「寒い」と感じます。

しかし長いこと虚脱状態にあった人は、自分の感覚を認識することに難しさを覚えることがあります。認識するとつらくなる環境にいたからです。

問題を回避できない状態(痛くても逃げられなかったり、耐えるしか方法がないなど)の場合、知覚を認識すれば、不快な状態が続きます。痛い状態が続いたり、苦しい状態が続きます。それは人間にとってとても不快で、つらくて、そんな状態が続くなら知覚を封じ込めてしまった方が生き延びるためには楽なのだろうと思います。

安全な環境であれば、熱いと感じればそれを避けることができるし、寒いと感じれば暖を取ることができる。ストレスがかかれば、それから逃げることも助けを求めることも対処をすることもできる。それが本来の人の体のシステムです。

自分の知覚を回復していくこと、防衛システムを適切な状態として取り戻していくことは、不必要に恐怖におびえることなく安心して生きていくために必要なことなのです。

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