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裸の王様の娘(小説)

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記事一覧

裸の王様の娘(5)

裸の王様の娘(5)

ケビンの話を聞いてから、私の頭にはいつも五重の塔があった。その塔を見たくて見たくてたまらなかった。この5つの層はそれぞれ「earth(地)、water(水)、fire(火)、wind(風)、sky(空)」を意味することも私を興奮させた。Japónハポンには、Tojiの他にNikko Tosho gu という同じ五重の塔があって、調べると
こちらの心柱は上から吊るされており、浮いている状態で保たれ

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裸の王様の娘(4)

裸の王様の娘(4)

「依存」

これは父について考える時に、いつも思う言葉だ。

祖父よりずっと前の代から、王の発言は絶対だった。だが、父はそれを良しとはせず、わざとユーモラスな雰囲気を出して、周囲が意見を出しやすいようにしていた。あえて反対意見を出させるような、見当違いの発言をすることもあった。「自分に対する依存」に不安を感じていたかのように。なぜ、わざわざそんなことをするのか、幼心にそう思ったが、それについて深く

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裸の王様の娘(3)

裸の王様の娘(3)

「快楽」と「魂とつながること」。
動物的な生殖は知っていたが、この2つは初めて実感を伴って理解できた気がする。いや、「理解」というより「じんわりと浸透し、体感した」という表現の方が適切かもしれない。言葉で説明できうる範囲から、大きく逸脱した世界のように感じた。
ケビンは「こうした方がいい」「こうあるべき」「これが正しい」という表現を使ったことがない。あくまで、自分のいち意見を述べるだけだ。ただ、な

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裸の王様の娘(2)【再掲】

裸の王様の娘(2)【再掲】

ケビンはハープを奏でるかのように、ゆっくりと私の体を指でなぞり始めた。

ケビンはわざと生物学を教える時の調子で話し、思わず笑ってしまう。硬直していた心と体を見透かされていたようで、ひどく恥ずかしくなった。静かに呼吸を整えると、少しだけ落ち着く。二の腕の辺りから肩へ、そして私の胸部へとゆっくりとケビンの指は歩みを進める。私はケビンの指の動きと同じように、ケビンの体を目でなぞった。
細身の体ではあっ

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裸の王様の娘(1)

裸の王様の娘(1)

「いいかい、アン。明日のパレードの様子をしっかり見ておくんだよ」

そう父はにっこりと微笑み、私の頭を優しく撫でた。

翌日のパレードは混沌だった。父は王冠と縦縞のパンツだけを身につけ、堂々と人々の前を歩いたのだ。最初こそ、作り笑いを浮かべた大人達によって静粛さが保たれていたが、5歳ぐらいの少年の「王様は裸だ」というたった一言で魔法が解けたように、皆、口々に「王様は裸だ」と言い始めた。発狂、嘲笑、

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