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高齢期リハビリのココロエ

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これから高齢者になる方たちへ。高齢者リハビリ17年の作業療法士が考える高齢期リハビリにおけるたいせつなことをお伝えしていきます。リハビリは決して機能訓練だけではないんですよ。先入… もっと読む
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高齢期リハビリのココロエ39 高齢者は時間を持て余すようにできている

高齢期リハビリのココロエ39 高齢者は時間を持て余すようにできている

要介護高齢者のほとんどは退屈です。時間を持て余します。施設や通所サービスにて無言で座っている高齢者さん、ホントに多いんですよ。自分がそこにいると想像してみてください、いかがでしょうか?
そんな退屈を解消する介護保険サービスの定番メニューは『塗り絵』や『クロスワード』など、いわゆる脳トレや集団体操です。そしてマンツーマンの機能訓練といったところでしょう。それらが好きなら問題はありませんが、苦手であれ

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高齢期リハビリのココロエ38 結局元気になる高齢者

高齢期リハビリのココロエ38 結局元気になる高齢者

 高齢者のリハビリと聞いてどんなイメージをされますか?『機能訓練』『歩行練習』は必須ですよね。現在の介護保険分野でのリハビリでも結構な割合でそのようなメニューをされている方は多いです。一方で『生活リハビリ』という言葉がありますが、『生活の中で元気になっていきましょう』という概念もあります。「料理は頭のリハビリになるね」「買い物に行くことはいいリハビリだわ。」など、普段何気なく活動していることが心身

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高齢期リハビリのココロエ37 高齢者の肥満対応

高齢期リハビリのココロエ37 高齢者の肥満対応

 介護保険サービスでリハビリを長年してきますとご家族の要望をよく聞きます。『歩けるようにしてほしい』『トイレに1人で行けるようにしてほしい』がその代表ですが、『痩せさせてほしい。そのために施設で運動や機能訓練をしてほしい、家での体操を教えてほしい』という要望も結構あります。
 ご要望もわかりますが『無理です(マンツーマンの機能訓練だけでは)』というのが回答になります。なぜかと言いますと、介護保険サ

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高齢期リハビリのココロエ36 痛みは自分でコントロールするのだ

高齢期リハビリのココロエ36 痛みは自分でコントロールするのだ

【あらすじ】
2年4か月前に直腸がん診断され、治療により一旦、『がん』が消失したかに思えましたが、約4か月前に『がん局所再発』しました。手術ができず、抗がん剤治療で手をこまねいてます。作業療法士として高齢者リハビリは18年です。

【本題】
今日のテーマは高齢者の『慢性痛』です。わたしの『がん』の感じ方と絡めてお話いたしますね。
『慢性痛』とは原因がなく一ヶ月以上続く痛みです。肩や腰、膝が多いです

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高齢者リハビリのココロエ35 そんなリハビリのイメージは捨てちゃいな

高齢者リハビリのココロエ35 そんなリハビリのイメージは捨てちゃいな

 「はい、〇〇さん、歩きますよ~」と施設に勤務する療法士(リハビリ専門職:作業療法士や理学療法士)。歩く距離は施設フロア内50m程度。普段は車いす。歩く頻度は週三回。みなさんがもし、高齢者施設でリハビリを受けるとしたら納得されるでしょうか?歩く距離は一週間で150mということになりますよね。そこに筋トレやストレッチ、自転車こぎなどがはいりますが…。でもですよ、みなさんがイメージするリハビリを、だれ

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高齢期リハビリココロエ34【どんな状態でも行動あるのみ】

高齢期リハビリココロエ34【どんな状態でも行動あるのみ】

健康度チェックです。
1.お腹が空いたらどうしますか?
2.気分転換したいとき何をしますか?
3.楽しみたいとき何をしますか?
4.身体がなまっているとき何をしますか?
1〜4の際に、何か行動できればあなたは健康です。たとえばお腹が空いたら『カップラーメンをつくる』『コンビニへプリンを買いに行く』などがその行動にあたります。
「それが健康?」という声が聞こえてきそうですが、そうなんです、それが健康

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高齢期リハビリのココロエ33【老化とはどうにもならんこと】

高齢期リハビリのココロエ33【老化とはどうにもならんこと】

 わたしは『再発がん』でして『がん』と『共生』しておまりす。寛解するのであれば、『がんに抗うで抗病』なんですが、現代医療の限界と自然の摂理により『抗病』ではないんですよね。いわば「もう、しゃあない!残り時間をできるだけ充実させよう!」という心持ちです。
 ここでですね、民間療法や壺や念珠を購入したり、エビデンスが乏しい最先端医療?には手を伸ばしたりしません。不思議なチカラや最先端医療?へ高額なお金

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高齢期リハビリのココロエ32【恥骨骨折後の触れないリハビリ】

高齢期リハビリのココロエ32【恥骨骨折後の触れないリハビリ】

 恥骨骨折をされた80代後半の女性を担当いたしました。骨折後は言わずもがな車椅子生活でした。本人も「もう歩けるようになんて絶対にならない。」と落ち込んでおられました。
 恥骨とは骨盤の一部です。イラストのマルで囲んだところで、体重を支えたり、内蔵を守ったりしてます。

で、やっぱり足を動かしたり、立ったりすると痛いんです。2週間は安静が必要となります。
 さて、安静期間ですが、車椅子生活。動くと痛

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高齢期リハビリのココロエ31 リハビリは難しく考えなくていいんです

高齢期リハビリのココロエ31 リハビリは難しく考えなくていいんです

 勝手に良くなるんですよ、頭手足を使う生活をしていれば。たとえば、こどもって遊びの中で身体が強くなっていきます。中年に差し掛かると体力や筋力は落ちますが身体を動かす趣味をもつと、それなりに身体機能はアップします。そもそも身体を動かす仕事であれば、強い身体をキープできます。
 だから難しく考えなくていいんだと思います、高齢期リハビリも。要介護になっても手足頭を動かす生活をすること。何も特別な筋トレや

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高齢期リハビリのココロエ30 退院直後の介護保険リハビリが大切

高齢期リハビリのココロエ30 退院直後の介護保険リハビリが大切

来年は介護報酬改定ですね。訪問リハでは『退院したら早く介護保険のリハビリサービスを使ったほうが機能回復しますよ』というデータが厚労省から示されてます。
 平均すると在宅復帰後約3週間を経て介護保険リハビリサービスが入るパターンが多いみたいですね。わたしも退院直後の在宅でのリハビリが大切だと考えます。その理由は、在宅に戻るとどんどん衰えていくからです。多くの方はハンデを抱えた要介護高齢者であり、どう

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高齢期リハビリのココロエ29 高齢者施設に入所する男性利用者はすることがない

高齢期リハビリのココロエ29 高齢者施設に入所する男性利用者はすることがない

ある老健の男性利用者のお話です。「退屈、することないわ。」と70代後半糖尿病の男性利用者。「ここはなんもすることないなぁ。」と80代片麻痺の男性利用者。
 施設では様々な作業や活動を提供してます。頭手足を動かさないと人は弱っていきます故、施設側は活動の選択肢を用意し、かつ増やしているわけです。『なぜするのか?』や『生活を通して心身を健康にする方針』も説明はしています。しかしどうしても男性は施設での

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高齢期リハビリのココロエ28 『歩けないなら家に帰ってくるな!』

高齢期リハビリのココロエ28 『歩けないなら家に帰ってくるな!』

「車椅子なら家に帰ってくるな。」
「家に帰るには歩けないといけない。」
高齢者リハビリ(わたしは老健施設勤務:介護保険サービスのリハビリ施設)に関わってますとそんな言葉をよく耳にします。これはご家族の発言なんですが、反対に自分が同じ立場ならどうでしょうかね。「車椅子でも帰らせてくれ!なんとでもなる!」って言うんじゃないでしょうかね。
 私達、リハビリの専門家からみればご家族のストップにより在宅復帰

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高齢期リハビリのココロエ22 高齢者リハビリは税金のむだづかい?

高齢期リハビリのココロエ22 高齢者リハビリは税金のむだづかい?

よくTwitterで見かけるのが、『高齢者に公金からリハビリ費用を出すのはムダだ』という意見です。ある意味、非常に鋭いご指摘だと思います。さらに、リハビリを受ける方は『マッサージ』を希望し、セラピスト側も希望通りにしてしまう、そんなものは税金の無駄遣いだ!と。
 これ否定できません。要介護高齢者は週1〜2回、1回につき20分〜60分程度の機能訓練や動作練習をしたとて著しい機能回復など望めないことが

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高齢期リハビリのココロエ27 利用者・家族はウソをつく?

高齢期リハビリのココロエ27 利用者・家族はウソをつく?

セ=セラピスト 利=利用者 家=家族
セ「立ち上がれますか?」
利「できません、立たせてください」
→実際はものにつかまれば立てる

セ「歩けますか?」
利「全然、歩けないんです」
→実際は歩行器で歩ける

セ「◯◯さんは、ごはん食べておられますか?」
家「食欲が無く食べられてないんです」

→いつもの7割程度は食べられる
 えてして、医療職・介護職スタッフが利用者本人や家族へ質問した時に『客観的

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