記事一覧
私のこと好き?: Me and Ms. Jone
三羽烏さんの企画に物語形式で参加させて頂きます。
よろしくお願いいたします。
(本文:1643文字)
いつもの時刻に、いつものcafeへ行き、いつも通りブルーマウンテン・ブレンドを頼む。席に着いてバックからスケジュール帳を取り出して開くと、ちょうどあなたがcafeへ入ってきた。私は知らぬふりで、スケジュール帳から視線を外さない。
音でわかるのだ。
あなたが来たことが。
一定のリズム感がある靴音
手をつなぐとき:Be My Love【3,614文字】
漆黒の空には、オリオン座が輝いていた。
都会の空にもかかわらず、これほどはっきりと星座が見られるのは、空が晴れていて空気も澄み、周囲に光がないからだろう。住宅街には、ところどころその暖かな家庭を象徴するかのようなオレンジ色の光が窓から漏れていた。
私はあの時、決断した。
噂の真相を確かめるため、本人の口から聴きたかった。
今までの私たちの関係は何だったのか?
これが思春期特有のホルモンのなせる
「54字の宴」#プレ大会
見出し画像は、
みんなのフォトギャラリー:世界の美術館から使わせて頂きました。
タイトル: The Road from Moret to Saint-Mammès
クリエイター: アルフレッド・シスレー / メトロポリタン美術館
櫟茉莉花さん主催「54字の宴」プレ大会に参加させて頂きました。
いろいろな夏の思い出を54字で創作表現して、みなさんとワイワイ交流できる機会を作って下さり、ありがとうご
カフェ4分33秒 #毎週ショートショートnote
僕はいつまで待ったらいいのだろう?
待ち合わせ時刻通りに来ない彼女に振り回されてばかりいる。
初デートの時、彼女は30分も遅刻してきた。
カラン、カラン。
カフェのドア・ベルが鳴ると、つい「来たか?!」と反応してしまうが、またしても違う人だった。
デートを重ねるたびに彼女の遅刻時間は短くなるものの、待たされるとわかっていながら僕はどうしても先に来てしまう。
前回の遅刻時間は15分程度だった
ガーデンでの静寂:Old Mistake
日曜日にいつも出向いていた会に参加しなくなってしばらく経つ。
夫が子ども達を遊びに連れて出かけてくれる日曜日、私はうちで一人、疲れ果てて体力も気力もなく、ただボーっと過ごすだけだった。
ある時、自宅に一人でいた時に、どうしようもなく落ち込んでしまい、精神衛生上良くないことに気がついた。そこからは、次々と日曜日を中心に外出予定を組むようになった。
そもそも上の子が行きたがる校外イベントは土日に多く
告白水平線 #毎週ショートショートnote
海に来たのは、何年ぶりだろう?
少し時間ができて、近くの海岸まで車を走らせて寄ってみた。
もう少し話したかっただけだったのに、時間がなくてできなかった。
私の言葉が足らずに誤解されたし、それが積み重なって、周囲にも波及したから中傷までされたのかも。
そんなことを思い返しながら、私は逃げるようにこの海岸に辿り着き、車を停めた。
はるか彼方の水平線から寄せては返す波が、音を立てて大きく崩れた時
子どもとの連弾 :Mas Que Nada
第1幕:母の学生時代
「もし聴いてみて、要らないなら、私が欲しいくらいだわ!」
母の学生時代の友達Nちゃんは、ある時こんなことを言ってそのレコードを手渡したらしい。
Sergio Mendes & Brasil ‘66というミュージシャンのレコード・アルバムだ。
ある世代には、青春の曲が数々入ったアルバムなのではないだろうか?
母の両親(つまり私の祖父母)は日本の演歌ばかり聴いていたというか
大切なものの扱い方:Will You Love Me Tomorrow ?
夫婦でアクセサリー店を訪れ、サイズ直しに出していた結婚指輪を受け取ったのは、つい先日だ。
たった数か月のことだったが、サイズ直しのためにアクセサリー店に、夫婦の結婚指輪と結婚指輪に重ね付けできる2種類のダイヤモンドが埋め込まれた婚約指輪を預けている間、私は何だか落ち着かなかった。こんなことが、心理的に何か影響を与えるはずはなく、ばかばかしいと思いながらも、私はその期間をふわふわとした心地のまま過ご
Shyな日本人とGentleman:Tapestry
海外出張の多い私の上司は、ヨーロッパにも行くし、アジアにも行くし、いろんな文化に触れて、多様な人たちと一緒に仕事をしている人だった。私は時々、海外にいるその上司とどうしても連絡を取らざるを得ない時は、現地時刻を世界時計で確認してから、メールやLINEで送るタイミングを測っていたものだ。
そんな折、ヨーロッパの国から帰国して間もなかった上司と二人でエレベーターで乗り合わせた時があった。同じ階で降り
コーヒーの選択:Home Again
私がいつも自宅に常備しているお気に入りのコーヒーが切れたことに気づいたのは、休日の夕方で、その日は夫が子どもを連れて一日遊びに連れ行ってくれた日だった。
私はその間、忙しない日常からしばし解放されて、溜まった家事を一人で片付け、帰宅早々に家族全員で夕食が食べられるように準備していたため、いつもより早く夕食が済んでしまった。子ども達は出かける前に、やるべきことを終わらせてから遊びに出かけたため、あと