#254 「分からない」が「分からない」、優秀「すぎる」管理職の不幸
組織改善を仕事にしています。自社の。いろいろな症状があるのですが、今回は優秀「すぎる」管理職の不幸についてメモ。
1、優秀「すぎる」人が管理職になる不幸
いくつかの組織改善の経験から、組織に改善が必要だ、というときに原因として疑うべきは管理職だということが分かって来ました。
特に優秀「すぎる」担当者が管理職になる場合が危険、です。
優秀「すぎる」人は、なぜ危険か。
いくつかありますが、大きな理由を2つご紹介します。
☑️ 1つ目は、部下の仕事のスピードと質に関して見積もれないこと
☑️ 2つ目は、仕事の指示が簡潔過ぎること
1つ目の見積もりができないこと。
管理職が部下に依頼する仕事の見積もりが大きくズレることです。
仕事を頼んだ上司の感覚では1日でできる仕事なのですが、部下にしてみれば3日はかかる、ということです。
結果、何が起こるか?
上司は、「何やってんだ?」「なんでこんなに時間がかかるんだ?」という思いを持って部下に質問します。上司側は「単なる優しい質問」と思っていても、部下にはそのトーンが伝わってしまいます。
部下はやっていることを一生懸命説明します。でも、上司にしてみれば、そのプロセスそのものがそんなに時間がかかることには思えないのです。どうしても。
2つ目の仕事の指示が簡潔過ぎること。
上司は自分なりに考えてその結果を伝えます。当然それだけでは簡潔過ぎます。背景や前後関係が分からない部下にとっては、確認したいことも出てきます。
ところが、部下が質問すると、一度言ったことを2回言わせるの?という雰囲気がビンビンな対応をします。
結果、何が起こるか?
部下は、「まだわかんないけど、3回目は聞けない…」となり、分からないところは、自分なりの解釈で仕事を仕上げようとします。
そうやって頑張って仕上げた仕事を、「なんでこうなるの?」と上司から言われ、挙句、「分からなければ質問しなさい。」と言われます…
2、拡大する不幸…
これが続くとどうなるか?
結局溝は埋まらず、マイクロマネジメントが始まります。
日報では飽き足らず、午前1回、午後1回、どんな作業にどれくらい時間がかかったかを報告させる、という指示を出す、というのが典型です。
部下にしてみれば完全に疑われているな、という気持ちになり、防衛のために報告を詳しく書きます。当然作業に割く時間は減ります。余計仕事は遅くなります…
悪循環で、不幸か拡大するのです…
3、優秀「すぎる」管理職の言い分
さて、このような場合で関係者にヒアリングを行うと、管理職の言い分は以下のようになります。
☑️ あまりにも仕事ができない部下を持たされて苦労している
☑️ 対策として、業務量や進捗を確認するために報告をしてもらいどこが問題か確認、指導しているが、改善されない
☑️ 解決策としては優秀な部下にしてほしい
一方、部下の言い分は以下のようになります。
☑️ 上司ほど頭の回転が速くないので理解ができないことがあるが何度も聞くのは申し訳ない。
☑️ 何を聞きたいのか整理してから聞かないとと思うとなかなか質問できない。
☑️ 細かく報告しているが、それに対してのフィードバックはないのでどうして良いか分からない。
この部下の反応は、このままいくと、心を病むケースです。
(不満を爆発させてもらった方がこちらはまだ安心だったりします)
4、まとめ
いかがでしたでしょうか?
(暗い話ですいません)
こうした優秀「すぎる」管理職には何が足りないのでしょうか?
それは、部下が「分からない」ことが「分からない」ことなのです。
(つまりは、その点について能力不足なのです)
こうなると、どう対処していいか分からず、とりあえずマイクロマネジメントになりがちです。が、結局分かることは「なぜそれにそんなに時間がかかるのか分からない」ということだけで解決することができず、単に「仕事ができない部下」というレッテルを貼っておしまい、なのです。
厄介なのは、優秀「すぎる」ので、その「分からない」は自分の能力不足だとは認められないのです。というか、そんなことは最初から思い付きもしません。
これは部下にとっても、そして上司にとっても不幸です。
よく、高い視座、という言葉があります。
2つ上の職制の視座を持って仕事をしましょう、というアレです。
上方向ばかり強調されますが、下方向へも動かせる力が必要なのです。
木を見て森を見ず、と言いますが、どちらも大事ですし、もっと言えば、1本1本の木の下で根はどうやって木を支えているのか?という視点も大事なのです。
最後までお読みいただいてありがとうございます。
視座の上下も他の能力と同様、身につけることができるものだと思います。が、その存在自体が分からないとなると、なかなか難しい、ですね。