KOTARO ANZAI

ADX CEO, Wood Creator 1977年福島県二本松市にて、祖父の代か…

KOTARO ANZAI

ADX CEO, Wood Creator 1977年福島県二本松市にて、祖父の代から続く安斎建設工業の3代目として生まれる。 自然と共生するサスティナブルな建築を目指し、2006年にADXを創業。登山がライフワーク。 https://adx.jp/ #森と生きる

記事一覧

夫婦喧嘩とクルミの木

我が家は共働きで、子育てという、森の中を走り回るような日々を送っています。 そんな生活の中で、お互いの時間を巡る小競り合いが絶えません。 私は、「朝は仕事に集中…

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5日前
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納豆は冒険の始まり

僕は無類の納豆好きだ。 「なぜか?」と聞かれれば、 「あれを食べないと落ち着かない」と答えるだろう。 今では、それほど納豆が好きなのである。 納豆は、簡単に言えば…

KOTARO ANZAI
10日前
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「SANU CABIN MOSS」

最近手掛けた「SANU CABIN MOSS」は、 標高1500mの地でも快適に過ごすことができる。 断熱や積雪、そして自然環境を考慮し、 ADXが設計、施工した新しい建築である。 これ…

KOTARO ANZAI
2週間前
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価値観と気遣い

何かを申し込む際などに名前を聞かれて、 「安齋好太郎です」と伝えると、「どんな漢字ですか」と尋ねられる。 そんな時に続けて、 「『安齋』の『安』は、『安い高いの安…

KOTARO ANZAI
1か月前
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道具

畑を耕す鍬や、漁業で使う網を思い浮かべてほしい。 どちらも人が生きるために必要な道具として開発されたもので、これまで生活の変化に応じて進化し、今も私たちの暮らし…

KOTARO ANZAI
1か月前
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自然に負けた

2024年4月に発表した「Earth Walker」は、「地球を冒険する」をコンセプトにしている。 マイナス20度以下の極寒の地や積雪が4mを超える豪雪地帯。スコールが起こる亜熱帯…

KOTARO ANZAI
1か月前
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お金と時間の使い方

ノルウェーでは、30代でセカンドホームを持つ人が多い。 一見贅沢にも思えるが、意味のあるお金の使い方だという。 週末や夏休み、自然の中のセカンドホーム(サマーハウ…

KOTARO ANZAI
1か月前
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モノクロの世界

僕が撮る写真はだいたい白黒です。 これは、建築のアプローチにも似ています。 スケッチを描くとき、僕は白黒の世界から始めます。 (多くの設計者も同じではないでしょ…

KOTARO ANZAI
2か月前
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ワクワクする未来

僕は過去を振り返るより、ワクワクする未来を語っていたい。 もちろん、過去は人生の軌跡であり、その軌跡は人生そのものだ。 だからこそ、その軌跡をどう描いていくかの…

KOTARO ANZAI
2か月前
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イメージの再構築

友人から起業家の会に招待された。 正直、そういった集まりに良いイメージを持っていなかった僕は、何か口実をつけて不参加の返事をしようと考えていた。 しかし、友人た…

KOTARO ANZAI
3か月前
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白線の上を歩く

「おもしろいアイデアはどこから来るの?」とよく聞かれるが、特別なことをしているわけではない。 子供のころ、自分で遊び道具やゲームのルールをつくった経験は誰にでも…

KOTARO ANZAI
3か月前
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自然と音

都心に住むと、さまざまな音が耳に入る。 クルマが走る音、工事現場の音、赤ちゃんの泣き声など、 自然の中の風の音や鳥の声とは異なる多様な音が存在する。 建築の分野…

KOTARO ANZAI
4か月前
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「虫のことはなんでも聞いてください」

最近、山で出会ったおじいちゃんと話していたら、 うつむきながら小さな声で、「虫のことはなんでも聞いてください」と話し始めた。 少し間をおいて、「蝶が好きで、気付い…

KOTARO ANZAI
5か月前
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理想の森

この仕事をしていると、「一番好きな森はどこ?」と聞かれるが、実は困ってしまう。 釜石の森も奄美大島の森も、安達太良山の森も大好きだが、それぞれ個性があるからだ。 …

KOTARO ANZAI
6か月前
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ジャン・プルーヴェの言葉

学生のころ、野山に出かけては建物のデザインを描きまくった。 目の前のなめらかな葉っぱの形や、風の流れをうまくかわす鳥の巣をモチーフにする。 今も、デザインのインス…

KOTARO ANZAI
6か月前
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都市に必要なものは?

都市は、人がつくったものでできている。 建築や道路、車など、目に見えるもののほとんどは誰かがつくり出したものだ。 これからも、人はさらに豊かな生活を求めて、様々な…

KOTARO ANZAI
6か月前
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夫婦喧嘩とクルミの木

夫婦喧嘩とクルミの木

我が家は共働きで、子育てという、森の中を走り回るような日々を送っています。
そんな生活の中で、お互いの時間を巡る小競り合いが絶えません。

私は、「朝は仕事に集中させてくれ!」と主張し、
妻は、「夕方こそ自分の時間が欲しい!」と譲らない。
これはまるで、クルミの木同士が森の中で、「おい、そこは俺が根を張る場所だぞ!」
と張り合っているようなものです。

クルミの木は、自分の周りに他の植物が近づかな

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納豆は冒険の始まり

納豆は冒険の始まり

僕は無類の納豆好きだ。
「なぜか?」と聞かれれば、
「あれを食べないと落ち着かない」と答えるだろう。
今では、それほど納豆が好きなのである。

納豆は、簡単に言えば大豆を納豆菌で発酵させた食品だが、
その見た目や匂いに、初めて食べるときには躊躇してしまうだろう。
特に海外の人たちには抵抗感が強いのではないだろうか。

ふと、誰が最初にあれを食べようと思ったのだろうと考える。

どの分野でも、普通の

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「SANU CABIN MOSS」

「SANU CABIN MOSS」

最近手掛けた「SANU CABIN MOSS」は、
標高1500mの地でも快適に過ごすことができる。
断熱や積雪、そして自然環境を考慮し、
ADXが設計、施工した新しい建築である。

これまで、建築の「計画」「工事」「時間」といった要素は、
「設計者」「施工者」「オペレーター」といった分業体制に依存してきた。
しかし、今後は変わっていくだろう。

設計者が自ら建築を手がける時代が再び訪れつつあるの

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価値観と気遣い

価値観と気遣い

何かを申し込む際などに名前を聞かれて、
「安齋好太郎です」と伝えると、「どんな漢字ですか」と尋ねられる。

そんな時に続けて、
「『安齋』の『安』は、『安い高いの安ですか?』」と聞かれると「むむむ」となる。
他の言い方もあるじゃんと思う。例えば「安心」の「安」とか。

悪気はないと思うが、こういう人とは仕事をしないと決めている。
大切にしていることが違いそうだし、
相手の立場で考えることができなさ

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道具

道具

畑を耕す鍬や、漁業で使う網を思い浮かべてほしい。
どちらも人が生きるために必要な道具として開発されたもので、これまで生活の変化に応じて進化し、今も私たちの暮らしを支えている。

家は、寒さや獣から私たちの身を守るため絶えず進化し続けてきた。
今でも例えば、
・家事の動線をスムーズにする
・家族のコミュニケーションを増やす
・自分の趣味を堪能する
など、快適な住環境のための進化は続いている。

家の

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自然に負けた

自然に負けた

2024年4月に発表した「Earth Walker」は、「地球を冒険する」をコンセプトにしている。

マイナス20度以下の極寒の地や積雪が4mを超える豪雪地帯。スコールが起こる亜熱帯や湿度100%に近い場所でも、安全に滞在できる居住空間を提供する建築プラットフォームだ。

どんなに過酷な環境でも快適に過ごせるよう、日々さらなる研究や実験を続けているが、それでも自然の力は強大だ。これまでの経験も知識

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お金と時間の使い方

お金と時間の使い方

ノルウェーでは、30代でセカンドホームを持つ人が多い。
一見贅沢にも思えるが、意味のあるお金の使い方だという。

週末や夏休み、自然の中のセカンドホーム(サマーハウス、ホリデーホームとも呼ぶ)を訪れて、忙しい日々との距離を置いて自分の時間を取り戻したり、家族や友人と親密な時間を過ごしたりする。人生のかけがえのない時間を過ごす場所を得るために、お金を使うのだ。

日本に生きる私たちが忘れがちな、大切

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モノクロの世界

モノクロの世界

僕が撮る写真はだいたい白黒です。
これは、建築のアプローチにも似ています。
スケッチを描くとき、僕は白黒の世界から始めます。
(多くの設計者も同じではないでしょうか)

白い紙に黒い線を引き、ある程度形になってから色を入れていく。
線や形がしっかりしていないと、色を入れてもうまくいかないのです。

数年前に買ったライカのカメラは白黒しか撮れません。

「白黒ってカッコよく見えますよね

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ワクワクする未来

ワクワクする未来

僕は過去を振り返るより、ワクワクする未来を語っていたい。
もちろん、過去は人生の軌跡であり、その軌跡は人生そのものだ。
だからこそ、その軌跡をどう描いていくかのほうに興味があるのだ。

僕は未来を考えるのが大好きだ。
その先に待つエンド・オブ・ライフは、 できればハッピーでありたいし、誰かの役に立っていたいと思っている。

それが人であろうと、動物であろうと、地球であろうと。
何かの役に

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イメージの再構築

友人から起業家の会に招待された。
正直、そういった集まりに良いイメージを持っていなかった僕は、何か口実をつけて不参加の返事をしようと考えていた。

しかし、友人たちが参加することと、なにより、新しい刺激を求めていたこともあって参加することにした。

18時30分スタートで、計7人の起業家が集まった。
僕が最年長で、ほかは30代前半、20代。そして、学生といった顔ぶれだ。
みんなのプレゼンが始まると

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白線の上を歩く

白線の上を歩く

「おもしろいアイデアはどこから来るの?」とよく聞かれるが、特別なことをしているわけではない。

子供のころ、自分で遊び道具やゲームのルールをつくった経験は誰にでもあると思う。
昔は、学校から家に帰るまで道路に引かれた白線を踏まないと進めないゲームを始めたり、帰るルートを毎日変えて新しい発見を楽しんだりした。

昔から誰に頼まれるわけでもなく、ただワクワクを追求してきた。
今でも時々、既存のルールを

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自然と音

自然と音

都心に住むと、さまざまな音が耳に入る。
クルマが走る音、工事現場の音、赤ちゃんの泣き声など、 自然の中の風の音や鳥の声とは異なる多様な音が存在する。

建築の分野では残響音の計画や設計を行うが、都市の音にはノイズがかかる。
やはり、自然の音は心地よい。

ある日、泣く息子を連れて近くのカフェに行ったとき、都心には音を吸収する場所が少ないと感じた。
吸音できる土や樹木がもっと多ければ、都市

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「虫のことはなんでも聞いてください」

「虫のことはなんでも聞いてください」

最近、山で出会ったおじいちゃんと話していたら、
うつむきながら小さな声で、「虫のことはなんでも聞いてください」と話し始めた。
少し間をおいて、「蝶が好きで、気付いたら50年間も追っかけていました」と続いて、
「特に好きなのがチョウセンシジミ蝶で、今、彼らが生息できる場所をつくっています」と。

森林保安の仕事を定年まで続け、今は、蝶が生息するトネリコの植樹をしているそうだ。
岩手、山形、秋田に生息

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理想の森

理想の森

この仕事をしていると、「一番好きな森はどこ?」と聞かれるが、実は困ってしまう。
釜石の森も奄美大島の森も、安達太良山の森も大好きだが、それぞれ個性があるからだ。

釜石には60年間も継続的に手入れをされた立派なスギの森があるし、
奄美にはモコモコと力強い生命力を放つシイノキの森、
安達太良山には天然ヒノキの北限と言われる森がある。
森ごとに異なる景色がある。

森に入った時の雰囲気でいえば、ブナや

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ジャン・プルーヴェの言葉

ジャン・プルーヴェの言葉

学生のころ、野山に出かけては建物のデザインを描きまくった。
目の前のなめらかな葉っぱの形や、風の流れをうまくかわす鳥の巣をモチーフにする。
今も、デザインのインスピレーションのほとんどは自然の中にある。

社会に出ると、構造力学やコストを考えなければならなくなった。
自然の美しさを建物として実現させることができるようになった。

ADXには、さまざまな専門分野を持つメンバーがいる。
デザイナーや構

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都市に必要なものは?

都市に必要なものは?

都市は、人がつくったものでできている。
建築や道路、車など、目に見えるもののほとんどは誰かがつくり出したものだ。
これからも、人はさらに豊かな生活を求めて、様々なものをつくり続けるだろう。

ところが都市には、深く深呼吸するのに適した場所や、太陽を見て時刻を予測することなど、人が本当に必要とする要素、つまり、自然との関わりが抜け落ちているように思う。

機能としては、空気清浄機やiPhone、時計

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