KOTARO ANZAI

ADX CEO, Wood Creator 1977年福島県二本松市にて、祖父の代か…

KOTARO ANZAI

ADX CEO, Wood Creator 1977年福島県二本松市にて、祖父の代から続く安斎建設工業の3代目として生まれる。 自然と共生するサスティナブルな建築を目指し、2006年にADXを創業。登山がライフワーク。 https://adx.jp/ #森と生きる

最近の記事

価値観と気遣い

何かを申し込む際などに名前を聞かれて、 「安齋好太郎です」と伝えると、「どんな漢字ですか」と尋ねられる。 そんな時に続けて、 「『安齋』の『安』は、『安い高いの安ですか?』」と聞かれると「むむむ」となる。 他の言い方もあるじゃんと思う。例えば「安心」の「安」とか。 悪気はないと思うが、こういう人とは仕事をしないと決めている。 大切にしていることが違いそうだし、 相手の立場で考えることができなさそうだからだ。

    • 道具

      畑を耕す鍬や、漁業で使う網を思い浮かべてほしい。 どちらも人が生きるために必要な道具として開発されたもので、これまで生活の変化に応じて進化し、今も私たちの暮らしを支えている。 家は、寒さや獣から私たちの身を守るため絶えず進化し続けてきた。 今でも例えば、 ・家事の動線をスムーズにする ・家族のコミュニケーションを増やす ・自分の趣味を堪能する など、快適な住環境のための進化は続いている。 家の次なる進化とは? それは例えば、 ・手頃な価格で建てられること ・美しいデザイン

      • 自然に負けた

        2024年4月に発表した「Earth Walker」は、「地球を冒険する」をコンセプトにしている。 マイナス20度以下の極寒の地や積雪が4mを超える豪雪地帯。スコールが起こる亜熱帯や湿度100%に近い場所でも、安全に滞在できる居住空間を提供する建築プラットフォームだ。 どんなに過酷な環境でも快適に過ごせるよう、日々さらなる研究や実験を続けているが、それでも自然の力は強大だ。これまでの経験も知識も通用しないことが多く、ADXのプロダクトチームからエラーの連絡が入るたびにアッ

        • お金と時間の使い方

          ノルウェーでは、30代でセカンドホームを持つ人が多い。 一見贅沢にも思えるが、意味のあるお金の使い方だという。 週末や夏休み、自然の中のセカンドホーム(サマーハウス、ホリデーホームとも呼ぶ)を訪れて、忙しい日々との距離を置いて自分の時間を取り戻したり、家族や友人と親密な時間を過ごしたりする。人生のかけがえのない時間を過ごす場所を得るために、お金を使うのだ。 日本に生きる私たちが忘れがちな、大切な時間の過ごし方について考えさせられる。いや、「この仕事はやらなければならないこ

        価値観と気遣い

          モノクロの世界

          僕が撮る写真はだいたい白黒です。 これは、建築のアプローチにも似ています。 スケッチを描くとき、僕は白黒の世界から始めます。 (多くの設計者も同じではないでしょうか) 白い紙に黒い線を引き、ある程度形になってから色を入れていく。 線や形がしっかりしていないと、色を入れてもうまくいかないのです。 数年前に買ったライカのカメラは白黒しか撮れません。 「白黒ってカッコよく見えますよね」とよく言われますがその逆で、 白黒で素敵なのであれば、カラーならもっと素敵にな

          モノクロの世界

          ワクワクする未来

          僕は過去を振り返るより、ワクワクする未来を語っていたい。 もちろん、過去は人生の軌跡であり、その軌跡は人生そのものだ。 だからこそ、その軌跡をどう描いていくかのほうに興味があるのだ。 僕は未来を考えるのが大好きだ。 その先に待つエンド・オブ・ライフは、 できればハッピーでありたいし、誰かの役に立っていたいと思っている。 それが人であろうと、動物であろうと、地球であろうと。 何かの役に立っていたいと、いつも思っている。

          ワクワクする未来

          イメージの再構築

          友人から起業家の会に招待された。 正直、そういった集まりに良いイメージを持っていなかった僕は、何か口実をつけて不参加の返事をしようと考えていた。 しかし、友人たちが参加することと、なにより、新しい刺激を求めていたこともあって参加することにした。 18時30分スタートで、計7人の起業家が集まった。 僕が最年長で、ほかは30代前半、20代。そして、学生といった顔ぶれだ。 みんなのプレゼンが始まると、スケールが大きく、ぶっ飛んでいることに驚いた。 「移民をどう受け入れるか」

          イメージの再構築

          白線の上を歩く

          「おもしろいアイデアはどこから来るの?」とよく聞かれるが、特別なことをしているわけではない。 子供のころ、自分で遊び道具やゲームのルールをつくった経験は誰にでもあると思う。 昔は、学校から家に帰るまで道路に引かれた白線を踏まないと進めないゲームを始めたり、帰るルートを毎日変えて新しい発見を楽しんだりした。 昔から誰に頼まれるわけでもなく、ただワクワクを追求してきた。 今でも時々、既存のルールを無視して楽しんでいる。 Google Mapで検索して出てきた経路を使わず、目的

          白線の上を歩く

          自然と音

          都心に住むと、さまざまな音が耳に入る。 クルマが走る音、工事現場の音、赤ちゃんの泣き声など、 自然の中の風の音や鳥の声とは異なる多様な音が存在する。 建築の分野では残響音の計画や設計を行うが、都市の音にはノイズがかかる。 やはり、自然の音は心地よい。 ある日、泣く息子を連れて近くのカフェに行ったとき、都心には音を吸収する場所が少ないと感じた。 吸音できる土や樹木がもっと多ければ、都市の居心地はもっと良くなる。 周囲の音について考えると、自然とのつながりが見え

          「虫のことはなんでも聞いてください」

          最近、山で出会ったおじいちゃんと話していたら、 うつむきながら小さな声で、「虫のことはなんでも聞いてください」と話し始めた。 少し間をおいて、「蝶が好きで、気付いたら50年間も追っかけていました」と続いて、 「特に好きなのがチョウセンシジミ蝶で、今、彼らが生息できる場所をつくっています」と。 森林保安の仕事を定年まで続け、今は、蝶が生息するトネリコの植樹をしているそうだ。 岩手、山形、秋田に生息するチョウセンシジミ蝶は年々減っており、絶滅危惧種らしい。 蝶が生息しやすい川辺

          「虫のことはなんでも聞いてください」

          理想の森

          この仕事をしていると、「一番好きな森はどこ?」と聞かれるが、実は困ってしまう。 釜石の森も奄美大島の森も、安達太良山の森も大好きだが、それぞれ個性があるからだ。 釜石には60年間も継続的に手入れをされた立派なスギの森があるし、 奄美にはモコモコと力強い生命力を放つシイノキの森、 安達太良山には天然ヒノキの北限と言われる森がある。 森ごとに異なる景色がある。 森に入った時の雰囲気でいえば、ブナやコナラ、クヌギ、ケヤキなどの広葉樹をメインに、スギやヒノキといった針葉樹がバラン

          ジャン・プルーヴェの言葉

          学生のころ、野山に出かけては建物のデザインを描きまくった。 目の前のなめらかな葉っぱの形や、風の流れをうまくかわす鳥の巣をモチーフにする。 今も、デザインのインスピレーションのほとんどは自然の中にある。 社会に出ると、構造力学やコストを考えなければならなくなった。 自然の美しさを建物として実現させることができるようになった。 ADXには、さまざまな専門分野を持つメンバーがいる。 デザイナーや構造や機能、コストを担うメンバーがホワイトボードを前に議論を重ねる。 異なる専門性

          ジャン・プルーヴェの言葉

          都市に必要なものは?

          都市は、人がつくったものでできている。 建築や道路、車など、目に見えるもののほとんどは誰かがつくり出したものだ。 これからも、人はさらに豊かな生活を求めて、様々なものをつくり続けるだろう。 ところが都市には、深く深呼吸するのに適した場所や、太陽を見て時刻を予測することなど、人が本当に必要とする要素、つまり、自然との関わりが抜け落ちているように思う。 機能としては、空気清浄機やiPhone、時計といったツールで置き換えることが可能だが、深呼吸は、酸素を肺に取り入れるだけでは

          都市に必要なものは?

          時々、原寸大のモックアップをつくる意味

          建築の世界では、実際に建物を施工する前に、「パース」と呼ばれるCGや、机の上に乗るくらいのサイズの模型をつくるプロセスがある。 建築の図面が読めない一般の人に、建ったときのイメージを共有することが主な目的だ。 社内でも、このパースや模型を用いて、「コンセプトを表現できているか?」「周りの自然環境と馴染むか?」など、デザイン面を検証する。 改めて立体で見ることで、平面では気が付かなかった細かな修正項目を発見できることも多く、パースや模型での検証はとても大切だ。 パースや模型

          時々、原寸大のモックアップをつくる意味

          ひみつ道具

          ドラえもんはいつも、のび太が困っていることを解決したり、やりたいことを実現したりするための、最適な道具を出してくれる。 子供のころ、「ひみつ道具の中で1番欲しいものは?」と聞かれて、迷わず、「4次元ポケット!」と答えたことがある(反則だろうけれど)。 不可能を可能にする道具が出てくるあのポケットが欲しいと、本気で思っていたのだ。 今でも仕事をしていると、ドラえもんの4次元ポケットを思い出す。 目の前の課題を解決し、不可能を可能にするために、どの道具を使おうかと考える。 そ

          森が教えてくれること

          数年前から始めた森の調査は、私にとって特別な時間です。 歩きながら、木の形や高さを見たり、木の種類を調べたりしています。 「LiDAR」という最新のセンシング技術を使って、時々、土や水のことも調べています。 森を好きになったのは、地図もなしに森を歩き、キノコや山菜を竹籠に集めていた祖父のおかげです。 祖父は、必要なものを自分でつくることが多く、家具やおもちゃ、時には薬も、森で見つけた材料でつくっていました。 自然のことをとてもよく知っていて、私にもそれを教えてくれました。

          森が教えてくれること