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時々、原寸大のモックアップをつくる意味

建築の世界では、実際に建物を施工する前に、「パース」と呼ばれるCGや、机の上に乗るくらいのサイズの模型をつくるプロセスがある。
建築の図面が読めない一般の人に、建ったときのイメージを共有することが主な目的だ。

社内でも、このパースや模型を用いて、「コンセプトを表現できているか?」「周りの自然環境と馴染むか?」など、デザイン面を検証する。
改めて立体で見ることで、平面では気が付かなかった細かな修正項目を発見できることも多く、パースや模型での検証はとても大切だ。

パースや模型での検証を繰り返した後、「モックアップ」と呼ぶ、実寸の模型をつくることもある。
すべてのプロジェクトでモックアップをつくるわけではないが、同じデザインで10棟以上建てる場合など、量産が前提のプロジェクトでは必ず行うプロセスだ。

実寸のモックアップにも、デザインを確認する意図はあるものの、どちらかと言うと、量産に耐え得る機能性や安全性、施工・メンテナンス性に加え、パースや模型では確認できない、「使いやすさ」や「つくりやすさ」の確認が主目的だ。

「使いやすさ」で言えば、例えば、キッチンの棚の高さやコンセントの位置、包丁の置き場所なども検証する。
ADXの料理好きなスタッフが、「これだと2品同時に調理しにくい」と言いながらチェックする。
設計チームがどれだけスタイリッシュなデザインを考えたとしても、「使いやすさ」を優先するのがADXだ。

「つくりやすさ」は、ADXの百戦錬磨のコンストラクションチームが睨みをきかせてチェックする。
「作業者の安全は確保できるか」「将来どんな経年変化が予想され、その時にメンテナンスしやすいか」など、次から次へと確認していく。

安全性のチェック方法は、ひたすらアナログだ。
階段の段差やコーナー部分の確認では、近所の子供やおじいさん、赤ちゃん連れやにモックアップを体験してもらい、不安なところがないか尋ねるのだ。

僕はこのモックアップが大好きだ。
建築がどのようにつくられ、どのように使われ、どのようにメンテナンスされていくのか。
モックアップを通して、その建物の未来を何年、何十年分も想像する。

実物大で検証し、未来を想像するからこそ、僕らは建物への自信と責任を持てると思うんだ。

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