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スタッフJの歩み

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大事なことはコイントスで決めます。
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#エッセイ

マックでこんなこと考えるもんじゃない。

マックでこんなこと考えるもんじゃない。

幼い頃からマックだった関東の生まれ育ちの私はマクドナルドといったらマック、なのでマクドとは言ったことないのですけれども。

そういえば最初に富山に来たとき、ここではエスカレーターの左右どちらに並ぶのだろうと気になった覚えがあります。(実際は列ができるほど過密な場は富山でそんなになかった......) 本屋にてにょろにょろ散歩しているときは、東日本と西日本で別の表紙となる雑誌の回で、富山は西日本の表

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あの年、クリスマスマーケットで。

あの年、クリスマスマーケットで。

引っ越してきた10月、早くも富山は寒かった。家具家電も揃っていないので、薄い寝袋をフローリングに敷いて、そのまま寝た。真っ白な平面の壁は、年季が入ってその分だけ暖かみがあった。でもそれだけで。とにもかくにも寒かった。私は太平洋側で生まれ育ったのである。

しばらく経つと、祖母から小包が送られてきた。そういえば新居の住所を伝えていたかもしれなかった。小さい割に案外どっしり重かった。それもそのはずで、

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主役の白えびに代わって

主役の白えびに代わって

富山といえば白えび。
駅なかに白えび。
寿司屋に白えび。
居酒屋に白えび。
スーパーに白えび。
ポスターに白えび。

ところで私は白えびを食べたことがございません。一度エビの名がつく居酒屋さんで白い塊の乗ったネタを口に運びかけたら、すかさずそこにいた人が「それ白えびだよ!」と注意してくれたのでした。危ない、呼吸困難で救急車にお世話になるところでした。一度も食べたことがないのだからそれが白えびだとも

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スマホのない生活、牛乳のある生活

さて、気ままに、あんまり元気ではなかった頃の話をします。

あのころ私はドイツに留学していまして、念願の留学自体は泣いて喜ぶほどのものでしたが、訳あって心身は丈夫ではありませんでした。
ドイツでは授業を休む際も、プライベートに踏み込んだ質問をするのはナンセンスなので、なぜ休みなのか?どんな病気なのか?などを問われることは基本的にありませんでした。それは大きな救いです。といいながら、生真面目な日本人

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雨の日に映画はいかがでしょう。

雨の日に映画はいかがでしょう。

......しとしと、雨が降り続いております。

富山に移住する前に脅されたことの一つに、「太平洋側から来る人は、どんよりした気候が辛くなってしまうよ」というお言葉がありました。

雨音だけなら落ち着くのに、実態としてのジトジトした雨はどうも好きではありません。皮膚が重くなるような感覚で、ときどき頭も痛くなるからです。映画に登場する雨って、どうしてあんなに世界観を引き立ててくれるのでしょうね?(ど

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川沿いでアイスコーヒー

川沿いでアイスコーヒー

氷の入った真っすぐなグラスに、冷蔵庫から取り出した滑らかな液体を注ぐ。それが、日本でいうアイスコーヒー。けれどそればかりではアイスコーヒーの真髄を味わっていない、とドイツのアイスコーヒーの虜になってから思うのである。

詩人ヘルマン・ヘッセが青春時代を過ごした街として知られる、南ドイツのテュービンゲン(Tübingen)。ネッカー川に沿って、中心部の小さなお店が連なる。市外からの観光客が必ずカメラ

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無人の旅館にて

無人の旅館にて

たんぽぽが元気な季節。
まあるい綿毛が張りつめた風船みたいで、
だからやさしさのつもりで
スニーカーで蹴りたくなる。

さわさわと綿毛が飛んでいく。
どこかで成長するんでしょうきっと

ところで

旅館のエアコンは作動しない。

そんな季節じゃないからです。

提灯ランプがぶら下がっているけれど、
さわさわ揺れることはない。

揺れたらこわいね。
いやいや。

無人の旅館にいま

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ガラス作家を知ってますか。

ガラス作家を知ってますか。

「将来何になりたい?」と聞かれたら

「絵本作家」

と答えていました。

そこで富山県民なら、

「ガラス作家!」と答える子どももいるのでしょうか。

関東出身のスタッフは、ガラス作家という生き方があるなんて喜代多旅館に来るまで知りませんでした......。

併設のフレンチレストラン「ビストロカドゥー」には、ガラス作家さんの作品が飾ってあります。それが初めての出会いでした。

実は富山市内の駅

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無職ホームレスか、喜代多旅館。

無職ホームレスか、喜代多旅館。

二択の、コイントスでした。

ギリギリでいつも生きていたらしい自分は、大学の卒業式二日前に進路が決まりました。

そして、身ひとつで初めての北陸・富山へやってきたのです。

ちょうど前の家の契約期間が切れたタイミングだったので、もう来週には引っ越してきて働けますよ、という無鉄砲さで。

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さて。
初めて喜代多旅館に来たときの、率直な印象は?

「旅館だけど、旅館では

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