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伝説のこどもたち

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私の出会った子どもたち、私にいろんなことを教えてくれた子どもたちについて綴っています。
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#若松かやの

伝説のこどもたち けんちゃん

伝説のこどもたち けんちゃん


肢体不自由児施設で働きはじめて数年経った頃、

感覚統合療法の講習会後、しばらくして感覚統合療法室を作ってもらいました。

私がデザインした滑り台、運動発達のおくれたこどもたちを介助しながら滑ったり、四つ這いで登らせたりするためのものです。未だに、同じデザインのものを今の職場で使っています。そのほかにも、ブランコ、小豆のプール、バネ付きブランコいろいろなものを自分で作ってこどもたちとあそんでまし

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伝説のこどもたち りーちゃん

伝説のこどもたち りーちゃん

りーちゃんが来たのは、小学2年生の時。

1年生の途中から、授業中に独り言が多くなり、小児神経科受診の結果、発達障害(アスペルガー症候群)と診断されました。

2年から、支援学級に変わりましたが、すぐに不登校になってしまいました。

かなりピリピリした女の子だったので、若いスタッフがいいだろうと1:1の環境を作り遊んでもらいましたが、なかなかうまくいきません。スタッフと遊んでいても「トイレ」いうの

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伝説のこどもたち ゆかちゃん3

伝説のこどもたち ゆかちゃん3

ゆかちゃんとおかあさんの毎日は、その日から変わりました。学校から帰ったら、ゆかちゃんの手を持ってその日の出来事をお話しするのです。(書くのですけどね)

わたしたちは、全く気づきませんでしたが漢字や簡単な英語も読めていました。 

その日、私は、ゆかちゃんを背にしてお母さんと話をしていました。

「ねぇ、本当ぜんぜんわからなかったね。ゆかちゃんがわかっているということ、ねぇ」二人で愉快な話をしてい

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伝説のこどもたち ゆかちゃん4

伝説のこどもたち ゆかちゃん4

毎週、ゆかちゃんに会うのは、とても楽しみになりました。最初のうちは、わたしがゆかちゃんの手を支えて文字を綴っていましたが、いつしかそれはおかあさんの役目になり、わたしはもっぱら質問をしていました。

作業療法士としてのわたしは、誰かの手を使って書くのではなく、自分の手で書いて欲しいと思っていたのでペンを持ちやすくしてみたり、一人で持てるようにペンを固定したりと、いろいろなことをしました。結局は、ト

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伝説のこどもたち ゆかちゃん5

伝説のこどもたち ゆかちゃん5

長崎大学でのカニングハム先生の講義がはじまりました。「きょうは、□□のお話をする予定でしたが、わざわざ岡山から来られている方がおられるので、FCのはなしをします」

えー!わたしのために、わざわざ講義内容を変えてくださるなんて

アメリカでのビデオを基にFC(faciritated comunication)とは何かという話が始まりました。それは、まさにゆかちゃんとわたしたちが見つけたコミュニケー

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伝説のこどもたち ゆかちゃん5.5

伝説のこどもたち ゆかちゃん5.5

ごめんなさい。書き忘れていたことがありました。

しかも、これを書いてないと「ゆかちゃん5 」がわからないかもしれないです。申し訳ありません。

ゆかちゃんが、文字を使ってコミュニケーションができるということがわかってから、おかあさんは学校の先生にその話をしました。先生は頭ごなしにそんなことができるはずがないと、ゆかちゃんが知的障害であるということを理解しなければいけないと言われたそうです。この話

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伝説のこどもたち ゆかちゃん6

伝説のこどもたち ゆかちゃん6

ゆかちゃんとの話は、とても面白くていろんなことを質問しました。不思議なはなしもありました。

お腹の中にいた時の話を聞いたときも、

あかいみずのなかにいたよ かあさんのこえがきこえていたよ はやくかあさんにあいたくてでてきたよ

と言うのです。調子に乗って「その前はどこにいたの?」と聞くと

とうさんのおちんちん

わたしと、おかあさんは、え!と顔を見合わせました。

じゃ、「その前は?」

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伝説のこどもたち ちえちゃん 1  就労支援ってなんだろ?

伝説のこどもたち ちえちゃん 1  就労支援ってなんだろ?

ちえちゃん(仮名)のことは、幼児期から知ってますが、選択性場面緘黙の女の子です。彼女は、学習面では問題ないのですが、家族以外の人とは、話すことができません。長いこと付き合っているわたしの質問にも、タブレットを使っての返事がやっとです。

中学までは、支援クラスにいました。そのころから編み物が得意で、注文に応じることができます。たとえば「50センチのワニを作って!」と頼むとほぼこちらの思い通りのもの

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伝説のこどもたち ちえちゃん 2 仕事ってなんだろ?

伝説のこどもたち ちえちゃん 2 仕事ってなんだろ?

3時間のうどん屋さんのバイトが週2日、そして内職と結構いそがしいのではないかとおもうのですが、卒業を前にしたちえちゃんは、「まだ足りない。もっと仕事がしたい」といいはじめました。おかあさんが日頃口にしている自立のために必要なお金を貯めているのかもしれません。とても可愛い子なのですが、特におしゃれや趣味にお金を使うこともありません。

お母さんは、まずハローワークに行きました。ちえちゃんの空いている

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KANAちゃん(予告編)

KANAちゃん(予告編)

うちの事業所は、駅前にあるので、いろいろなところからうちに通って来てくれます。しかし、帰りがおそくなったりするときや、家が駅から遠いこどもは、帰りは私が車で送っていくことになります。その時にいろんな話をしますが、それが結構面白いのです。

先日も、KANAちゃんが話しかけて来ました。

「なあ、KANAのはなしも伝説のこどもたちに書いたりするん?」

あ、考えてなかったわ!と、いうか こんなに面白

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伝説のこどもたち KANA3  KANAちゃんの失敗と支援

伝説のこどもたち KANA3  KANAちゃんの失敗と支援

予告編でもお話したように、KANAちゃんは、ADHDです。いろんな失敗をしますが、一番多いのが忘れ物です。これは、私と張り合います。実は、わたしも忘れ物チャンピオンなのです。財布、スマホ、メガネは、一日中探しています。このことは、こどもたちがわかっていてくれるので、「あそこにあったよ」とか教えてくれます。いや、わたしのことは、どうでもいいのです。

大学を卒業して就職が決まり引越しを手伝いに行きま

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伝説のこどもたち ゆかちゃん8 思い出したこと

伝説のこどもたち ゆかちゃん8 思い出したこと

今日運転中に、ふと思い出したことです。
ゆかちゃんが、指文字で話をし始めたころ、調理実習がありました。

おかあさんが、なにをつくったの?と、聞いたら
「カレーとサラダと桃」と書いたそうです。
しかし、その日のメニューは、「カレーとサラダと、コーンスープ」でした。

おかしいな?とおもったおかあさんは、先生に聞いたそうです。メニューは、やはりコーンスープでした。作り方を聞いて、お母さんは、納得しま

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伝説のこどもたち Kくん1 「人は食べてはいけない。」

伝説のこどもたち Kくん1 「人は食べてはいけない。」

Kくんがきたのは、高校3年の時でした。高校を辞めたので就労させたいとのおかあさんの希望とは異なり、Kくんは、別の高校に行きたいと思っていました。

当時はとりあえず、彼に就労というものを意識させようと、まずは、彼を知るためにいろんな話をしてました。

学校の宿題で、新聞を読みなさいと言われていたらしく、いろんなことをよく知っていました。ところが、当時の新聞にたくさん載っていたのは、練炭自殺の記事で

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伝説のこどもたち Kくん2 服の役割

伝説のこどもたち Kくん2 服の役割

当時は、ひと月に1度必ずおかあさんとやってきてました。ただし、おかあさんに歩調を合わせることなく、自分のペースで歩いてくるので、後からくるおかあさんは、大変だっただろうと思います。暑い日だったので、冷たい麦茶を出して、エアコンもきかせていました。 

入ってきた途端「何で、こんなに冷やしたん!」と叱られてしまいました。「体に悪いから、エアコンなんか、つけんでもいいんや、外と同じくらいにしておかんと

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