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伝説のこどもたち ちえちゃん 1  就労支援ってなんだろ?

ちえちゃん(仮名)のことは、幼児期から知ってますが、選択性場面緘黙の女の子です。彼女は、学習面では問題ないのですが、家族以外の人とは、話すことができません。長いこと付き合っているわたしの質問にも、タブレットを使っての返事がやっとです。

中学までは、支援クラスにいました。そのころから編み物が得意で、注文に応じることができます。たとえば「50センチのワニを作って!」と頼むとほぼこちらの思い通りのものが届きます。しかし、そればかりやっていると、肩こりするようになりちよっとしんどくなってきたみたいでした。

高校は、いわゆるサポート校を選びました。ところが真面目な彼女には、暇で退屈だったらしいのです。「アルバイトがしたい」と、ちえちゃんはおかあさんにたのみました。他人と喋れないちえちゃんが、アルバイト!おかあさんは、とても驚いたそうです。でもちえちゃんは、真剣でした。「アルバイトしたいけど、それを伝えることができないんだから、電話をしてほしい!」アルバイト情報誌を持ってきて言ったそうです。何件か連絡して、うどん屋さんがOKをだしてくれました。面接には、おかあさんも一緒にいきました。一通り説明がすんだあとは、週2日3時間のアルバイトが始まりました。なんの問題もありません。公共の交通機関や自転車を使うのは抵抗があるので徒歩で行きます。それが、1年ほど続いた後、今度は「アルバイトだけでは、物足りない内職がしたい」といいはじめました。情報誌で見つけた内職受け渡しは、お母さんと一緒にやりますが、わたしは、この時点での話を聞いて、「うちに通ってきているこどもたちに爪の垢をください」とお願いしそうになりました。

卒業を控えたちえちゃんのおかあさんは、1昨年から次に行くところを探していました。就労移行支援事業所へも足を運びました。「うちの子は、緘黙のためしゃべることができないのですが」と伝えたところ、「それではプログラムがこなせ無いので難しいですね。」と言われたそうです。しかも2箇所の事業所から。おかあさんが、その時点でわたしに連絡してくれていたら、きっと怒りまくって電話していたはずなのですが、それを知ってか知らずか、その話を聞かせてくれたのは、だいぶん後になってからでした。

1箇所だけは、どうぞ来てくださいとのことだったので、ちえちゃんをつれて、話を聞きに行きました。スケジュール表をもらって、家に帰ったら、ちえちゃんが、言ったそうです。「あたしは、いかんからね!なんでいかなきゃいけないのか、わからない。あんなことを練習してもできるようには、ならないから!」スケジュール表をみせてもらって、そりゃそうだ。と思いました。1日目は、フリートーク、そして、毎週 ほう・れん・そうの練習や、電話応対の練習。ちえちゃんは、喋れないですとつたえているのに…。

と、言うことで、就労移行支援にはいかないことにしました。おかあさんは、今後のことを考えてちえちゃんの所属する場所を作っておきたかったのです。だったらうちが、日中一時支援をやってるんだし、相談も今まで通りうちですればいいじゃんということになりました。

たまたま、アルバイトのシフトのことで、お母さんは、うどん屋さんに連絡しました。そうしたら、店長さんが、「ちえちゃんは、もう卒業だよね、どうするの?」と聞いてこられたそうです。そこでお母さんは、前述のことを語りました。すると、「ほら、お母さん、お母さんは、なんでもちえちゃんのことを先にやりすぎなんだ。ちえちゃんは、おかあさんがおらんでも、ちゃんとできるんだよ。現にうちで、ちゃんとバイトがやれている。よそにいかんでも、うちにくればいい、これから時間も長くすればいいし、なんでもできるんだから。」と、言われたそうです。それを聞いたちえちゃんは、「いや、あたしは、あそこはあれだけでいい。もし、もっと仕事するなら、ほかのところでやるから」と、いいました。ちえちゃんによると、トイレをつたえることができないそうです。ですから、3時間が限度。また、お昼休みとか、お昼ご飯は1人で家で過ごしたいとのことでした。それをするから、仕事ができているのです。

そうなんです。福祉の専門である就労移行支援事業所も、一般代表のうどん屋さんも、どちらもちえちゃんのことを理解していないということです。

場面緘黙の人は、とても理解されにくい人たちです。彼らは、とてつもない不安を抱えています。家や一部の場所や人とは、なんなく話すことができますが、それ以外では話すことができません。それだけではなく、外にいる時に感じた不安感は、家で爆発することも多いです。おとなしい子に見えますが、家ではとても手のかかることが多く暴言や暴力もたまに現れます。わたしが今まで、出会った緘黙の人たちは、皆何かよくわからない不安を抱えていました。練習して喋れるようになるわけでないです。また、文字カードや、パソコンを使えばいいという意見もありますが、それでは解決できないコミュニケーション(社会性を含む)の問題だと思います。

ちえちゃんのはなしは、これで終わりではありません。今日、新しい話を聞いたからです。 それは、明日書こうと思います。

就労移行支援って、個別対応してくれないのかな?喋れない人たちへの工夫とかないのかな?






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