こんにちは!鹿冶梟介(かやほうすけ)です。
皆様は“指導者”と聞くと政治家や経営者を思い浮かべるかと思いますが、もう一つ語るべき指導者たちがおります。
それは宗教指導者あるいは教祖です。
今の世界情勢を見ると宗教が良い意味でも悪い意味でも大きく関わっており、宗教指導者(教祖)たちの影響力は政治家以上と言えましょう。
宗教指導者と言えば、世界三大宗教の開祖イエス、ブッダ、ムハンマドが有名であり、彼らについて精神医学的に解説したい…、という強い欲求はあるのですが、如何せん彼らにまつわるエピソードは話が盛られすぎて、もはや神話レベルに信憑性がありません(三大開祖の病跡学的アプローチをする精神医学者もいるようですが、漫画のキャラクターを診断するのと同様のネタ研究ですね😅)。
一方、三大宗教ほどではありませんが人々に多大な影響を与える宗教は世の中に数多あります。
そして、その中でも社会的に悪い意味で影響を与えるがいわゆる「カルト」です。
カルトとは、「崇拝」「礼拝」を意味するラテン語”cultus"から派生した言葉であり、現在では特定の指導者(教祖)を熱狂的に信じる新興宗教集団のことを意味します。
カルト教団の指導者の多くは強力な指導力、揺るぎない理念、蠱惑的なカリスマ性を備えておりますが、中には明らかに”精神疾患”と診断できるケースもございます。
今回のnote記事では、カルト教団の代名詞とも言える「人民寺院」の教祖、”ジム・ジョーンズ”を精神医学的に解説したいと思います!
【人民寺院とは】
人民寺院(Peoples Temple)とは1955年に米国インディアナポリスで設立されたキリスト教系宗教。教祖はジェームス・ウォーレン・ジム・ジョーンズ。人種平等を掲げ、キリスト教と共産主義を融合させたイデオロギーを持つ。
【ジム・ジョーンズとは】
米国出身。1931年生まれ。
人民寺院の教祖。
南米ガイアナにジョーンズタウンという街を作り、信者918名と移住。
カリスマと恐怖で信者を支配し、ジョーンズタウンでは悪逆非道を繰り返した末、信者918名と共に集団自殺した(1978年: 人民寺院事件(後述))。
尚、この数字は米国同時多発テロ(2001年)が発生するまで米国民最多の被害者数を記録した事件であった。
【ジム・ジョーンズの生涯】
1000人近い殉教者を出した人民寺院事件…。
この事件の首謀者ジム・ジョーンズは一体どのような人物であったのでしょうか?
ジムの人物像を俯瞰するために、まずは彼の生涯を見てみましょう。
【人民寺院事件とは】
さてジム・ジョーンズの生涯では詳細は述べませんでしたが、彼が引き起こした世紀の大事件があります。
それは、「人民寺院事件」という集団自殺事件です。
前述のように人民寺院は1970年代から政治と深く関わるようになりますが、キリスト教の否定や共産主義への傾倒から次第に周囲から白眼視されるようになります。
そこでジムは南米ガイアナの北部に1500ヘクタールを超える土地を借り、楽園「ジョーンズタウン」を設立します。
米国での活動が困難になった信者たちは希望を求めてジムとともに「ジョーンズタウン」に移住を決意します。
ところが、そこは理想郷とは程遠い恐怖と暴力が支配する「偽りの楽園」だったのです…。
信者達は夜明けから夕暮れまで週6日労働を強要されますが、痩せた土地であったため食糧の自給は困難でした。
また子供たちは親元から話され、教団の教義や共産主義に関する洗脳教育が行われるようになります。
唯一の娯楽だった映画鑑賞もやがてソビエト連邦のプロパンガンダや米国の社会問題をクローズアップしたドキュメンタリー映画ばかりになります。
このような厳しい生活であったため逃亡を企てるものがおりましたが、ジムは逃亡をはかる信者を「長期治療室」なる拷問部屋に送り向精神薬(クロルプロマジン、チオペンタールなど)を投与して“再教育“します。
1976年鉄道軌道近くで四肢が切断された元信者の遺体が発見されました。
この報を受け米国下院議員のレオ・ライアンは人民寺院の関与を疑い、1978年11月17日ジョーンズタウンを訪問します。
同年11月18日、訪問時に何人かの信者が「ジョーンズタウンから逃げたい」と申し出たため、ライアン議員はこれらの信者と共に空港に向かいますが、その途中武装した信者たちの襲撃を受け殺害されました。
同日の夕方、ジョーンズは集会を開き「革命的自殺」を信者に促します。
信者たちはシアン化合物を含んだ「クール・エイド(Kool-Aid)」というジュースを飲み次々と息を引き取りました。
事件後に現地に派遣された調査団は、このお世の地獄と言える光景を目にしました。
子供を含む合計914人の信者の遺体が整然と列を成して楽園中を埋め尽くしていたそうです...。
↓人民寺院に関するドキュメント映画です。
【ジム・ジョーンズの診断 part1】
このような恐ろしい事件を起こしたジム・ジョーンズですが、後に多くの精神科医が彼の精神科的診断を試みました。
小生もさまざまな文献を渉猟いたしましたが、ジム・ジョーンズの行動パターンが「パーソナリティ障害」に該当することはすぐにわかりました。
そこでこのパートでは、記録に残るエピソードからジム・ジョーンズをパーソナリティ障害の観点から診断したいと思います。
1.反社会性パーソナリティ障害
反社会性パーソナリティ障害とは、社会的義務を顧みないこと、また他者の感情に対する共感が欠如していることを特徴としている人格(パーソナリティ)障害です。
犯罪者に多く言われているこの障害ですが、果たしてジム・ジョーンズは該当するのでしょうか?
基準A, B, C, Dを満たすためジム・ジョーンズは「反社会性パーソナリティ障害」の可能性は高いと考えられます。
2.自己愛性パーソナリティ障害
自己愛性パーソナリティ障害とは優越感、賞賛への欲求、共感の乏しさなどを特徴とするパーソナリティ障害です。
要するに重度のナルシストですね。
果たしてジム・ジョーンズは自己愛性パーソナリティ障害に該当するのでしょうか?
このように、9つの基準のうち6-7を満たしており、ジム・ジョーンズは自己愛性パーソナリティ障害の診断基準に該当する。
<後編へ続く>
後編では、ジム・ジョーンズをさらに精神医学的に診断します。またカルト対策についても解説します。乞うご期待!
↓人民寺院事件をモデルにした映画だそうです。
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