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魂の文学を求めて - 遅読者の読書彷徨

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魂に響く書を求める遅読者の読書彷徨記。読書歴はたかだが10年、さらに小説は僅か2年前ほどと浅学だけど、書かずにはいられない読後の感情を記していきたいと思います。該当の書を読んだこ… もっと読む
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西村賢太『どうで死ぬ身の一踊り』を読んで。

西村賢太『どうで死ぬ身の一踊り』を読んで。

すっかり忘れていた「西村賢太」昨年の2月頃だっただろうか。突然、まるで発作のように「西村賢太」のことを思い出した。早速アマゾンで購入しょうと「西村賢太」で検索してみると、初期の小説ばかりか最近の小説までもが絶版となっていた。しかも中古本はとんでもない値段がふられていた。これは諦めるしかないなと思った。こんなに人気なのかと驚くとともに、最近の作品ですら重版もせずにあっさり絶版にしてしまう出版社の堪え

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【悲しみよ こんにちは】朝吹登水子訳

【悲しみよ こんにちは】朝吹登水子訳

「悲しみ」と「こんにちは」、まるでN極とS極を強引にくっつけたようなこのタイトルが昔から気になって仕方がなかった。

子どもの頃、日曜洋画劇場で映画の予告編を家族で観たことがあった。僅かに1分ほどの映像を見ながら、父も母も、ともに悲しい物語だと歎息たんそくしていたのが強く印象に残っていた。それ以来、映画でも本でも構わない、いつかこの物語に接したいと願っていたのだが、そうした気持ちも大学生になった頃

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『日本文化史』家永三郎著 横溢なる批評精神による日本史観

『日本文化史』家永三郎著 横溢なる批評精神による日本史観

むかし、『R25』なるフリーペーパーが流行った。創刊したのが2004年あたり。もう15年以上も時を経過しているのかと時の流れの早さに驚くばかりだが、このフリーペーパーについて記憶に残っている人も少なくないだろう。社会人若年層をターゲットにしたリクルート発行のフリーペーパーで、発刊から数年はかなり流行っていた。当時勤めていた職場でもよく目にしたものである。どんなものが書いてあるのかなと中を覗いてみる

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『神曲 地獄篇』 読後の違和感とその正体とは。

『神曲 地獄篇』 読後の違和感とその正体とは。

いろんな本を読み漁っていると、どうしてもダンテの『神曲』やゲーテの『ファウスト』の引用が目につく。無学で何も知らない私は、少しはその手の古典に触れておいたほうが良いのではと手にしたのだが、全くと言っていいほど興が乗らなかった。欧米圏では文学史上最高傑作と評されることもしばしばある『神曲』だが、世界史音痴で浅学なうえ、当時のフェレンツェの歴史を知らない。そもそも西洋の言葉で書かれた詩句を日本語に直す

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