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WAKIMIZU

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#現代短歌

独りごちてサイゴニ

山裾が燃え出したとき呟いた イマノアナタヲゼンブクレナイ

重ねれば忘れてゆける思い出も クズレオチタヨトウフノカタマリ

滝壺の白とグレーと青緑 セカイハアラタニアカイヨアカイ

ぶくぶくのあわのまにまにうかびちる ゆめはいつでもにおいがなくて

新幹線 迫り出してくる建物の 向こうの空に 君は立ってる

ねぇだれか 私が歌った歌のこと 覚えていたり しないでしょうか?

泣けちゃうの 掴んでいられず飛び去った 風船みたいに空が赤くて

車達 向かう先には 朧月 今にも消えてしまいそうな君

微睡みに 夜も瞼を閉じてゆく 切なくたっていつの間にやら

てんじょうをながめているとおもいだす ゆめのなかではできることなど

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夕立を疾走して行く藍染と博多の帯の青い残像

南風歌運んでもレクイエム

クレマチスの着物今では切れ端

あの田圃はどうなったじゃろうかもう見えん

ラムネの瓶キラキラビー玉乾涸びた河原の底にコツンと沈む

さいはてに往った友達 赤蜻蛉

想い出は 提灯通りの 夜と笛

執拗に思い出させるかみなりぐも

揚羽蝶 車輪の下で 夢になる

灼熱の窓の外とテレビゲーム

夕立を疾走して行く藍染と博多の帯の青い残像

カウントダウン

3、

無いはずの 平成32年から 未来人だと云う人が来た

姿見に 外の草木が 映されて

永遠の美を望まれている

髪結えば 神が鳴るなり 窓の外

天は蛇口を ひねって怒る

夕立は 凌霄花の 色をして

スカートの裾は 人魚の尻尾

2、

初めて来たはずの町から、懐かしい匂いがして狼狽えること

幼い頃、スーパーの棚の見えないところには、何か特別なものが置いてあると思っていたこと

記憶

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ワタシタチ休日ハ何時モ シャボン玉 何ガオワッテモ始マッテモ

足取リノ軽イ週末タチヲ縁取ル雷雲デ ケーキ ヲ焼ケバ

ソノ匂イニ揚羽蝶ハ誘ワレテ夏ヲ惜シンダ大人ノ餌食ニ

1.

サッキマデ暢気ニ眺メテイタ筈ノ 「東京都庁ヲ呑ミ込ム雲塊」

ターコイズブルーノ空気ヲ落トス雨

都会ノ空ヲ支配スル稲光

人々ガ大地ノ揺レル覚悟ナド出来ナイ内ニ光デ揺レテ

天ト地ヲ縫ッテ繋ゲテ往ク落雷

雨ヨリモ光ハ降ッテコノ淀ム空気ヲ震ワセテユクノデス

安堵スル鬼雨後ノ空

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夏は夜、夜は幻

簡単に脆い心を砕く夜 月も欠ければ草木も眠る

「そういえばしばらく雨が降っていないですね」幻が言った

泡が部屋に充満していく過程をちゃんと見届けなければ明日まで届かなくなってしまう

だから私は必死で狭い部屋の床にオールを突き立てる

しかし漕いでも漕いでも何処にも着かないまま

空が部屋に入り込んでくる隙間をちゃんと無くさなければ明日まで息がなくなってしまう

だから私は必死で暗い隅の穴に光

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夏始め手解き

青嵐草叢の足元どこまでも

遠くの青に 近付けなくて

睡蓮の葉の上を歩いてみたくて

子供になっても歩けなくって

入道雲遠く私は海の底

怖いものなど何もない今

浴衣姿「私が夏になる」と言う

何もない 夕凪だけを 纏って行く

そう言って電話は切れた

暮れかかる川辺の日青鷺飛んで入り

赤とんぼまだ飛ばない日暮に

伸びてくる影を夕立が攫って

途方も無い夏の夜の始まり

誘蛾灯の音

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梅雨入りの心を降らせろこの世界中に

雨の空に魚を泳がせたい そう言った君の横顔に
傘から落ちた雫が光る 泣いているのは僕の方

五月雨の 音は優しく 低気圧

濡れた手に レインコートは へばりつき

紫陽花の 色をした心 スケルトン

雨粒と同じ数だけ君想い

紫陽花ゼリーを懐かしんでもお昼は自分で考えなくっちゃ

私が想いを空に託して 雨と一緒にあなたの上空へ あり得ないようでできるかもしれない そんなことを考える6月

雲の上

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