夏始め手解き

青嵐草叢の足元どこまでも

遠くの青に 近付けなくて


睡蓮の葉の上を歩いてみたくて

子供になっても歩けなくって


入道雲遠く私は海の底

怖いものなど何もない今


浴衣姿「私が夏になる」と言う



何もない 夕凪だけを 纏って行く

そう言って電話は切れた


暮れかかる川辺の日青鷺飛んで入り

赤とんぼまだ飛ばない日暮に


伸びてくる影を夕立が攫って

途方も無い夏の夜の始まり


誘蛾灯の音に怯える君の手を

取り敢えず先を急ぐと三日月



鏡越しの真夏の夜の夢歪む顔



あたくしを遣り込める貴方精悍な
顔つきをしていらっしゃいますとても


近くても遠くても暑いならいっそ

近い方がいい夜の終わりに

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