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【実践者に学ぶこれからのリーダーシップ】創業140年の老舗企業がこの10年でさらに業績アップ!変わったのは事業内容ではなく、たった1人の「志」だった。株式会社田村ビルズ 田村伊幸社長インタビュー≪アカデミーハウス特別企画≫

KDDI維新ホール

「心を高める、経営を伸ばす」
こんな社是(会社の価値観、考え方)を掲げ、体現することで大きく業績を伸ばしている企業がある。

山口県山口市に本社おく、株式会社田村ホールディングスだ。

その業績もさることながら、とことん「人材」に重きを置く経営方針も全国から注目されている。
新入社員が1年間、仕事以外でも寝食を共にするシェアハウスの設置などバラエティに富んだ福利厚生制度を実施し、「どこで働くかではなく、だれと働くか」をテーマに掲げ、採用活動にも力を入れる。また、次世代のリーダーの育成を目指した本施設アカデミーハウスにも例年若手社員を送り出している。

しかし、創業より140年を迎える老舗企業でありながら、飛躍的に業績が伸びているのはここ10年の話だという。
「この10年でやっている事業は変わっていません。変わったのはたった一つ。リーダーである私の考え方、志です」
そう語るのは、2009年度より社長に就任した田村伊幸氏だ。

業績までも変えてしまうその一人の「志」とは何か。
とことん「人材」に重きを置いているその真意とは。
インタビューから、これからの時代を生き抜く人材、企業についてそのヒントをいただいた。

今回、KDDI維新ホール併設の次世代リーダーを育てるためのシェアハウス「アカデミーハウス」にて株式会社田村ホールディングス代表取締役田村伊幸社長にご登壇いただけることとなりました。講義の前のプレインタビュー開催です!(インタビュー/写真(一部提供) 山中菜摘)

アカデミーハウスとは
KDDI維新ホールに併設した山口市が管理する次世代リーダーを育むための公共のシェアハウスです。
異業種の若手人材(学生・社会人)を対象にした居住型の人材育成施設で、本施設の独自プログラムである、哲学をベースとした時間共有型のキャリア開発「P.C.Tプログラム(Philosophy-based Career Development Through Time Sharing)」の提供等を通じ、山口地域を牽引する次世代のリーダーとなりうる自律した人材の育成等を目的としています。

今回の実践者 
株式会社田村ホールディングス代表取締役田村伊幸社長

株式会社たむらホールディングス代表取締役 
田村伊幸 社長
1969年 山口県生まれ 。法政大学経営学部 卒業後 株式会社船井総合研究所 入社
1995年 田村建材株式会社 入社 2009年 代表取締役に就任


それを「実施するのは誰」なのか

事業に関しては「誰に」「何を」「どのようにして」提供していくのかという事業戦略を練ることはもちろん大切だと思うんですが、それを「実施するのは誰なのか」もすごく重要だと思うんです。
何をやるかと同じぐらい、誰がやるかによって、成功するか失敗するかが決まる。実際の現場ではこれがすごく起きている気がしています。
また、一社単独ではなかなか事業を進めていくのが難しくなってきた時代の中で、他社と組んで事業を進めていくことがとても重要になってきました。
事業として何をやるか。その戦略が的を得ていたとしても、「誰と組んで行うか」という選択で結果が大きく変わってくるんです。
これに対しては経営も人も単位は大きく違えど根本は一緒
「誰がやるか」、「誰とやるか」となった時に選ばれる人が大切な「人材」だと思います。


リーダー選定で一番大切にしていること

では選ばれる人とはどんな人材か。
うちの会社に限定して言うならば、
利己的ではなくて、利他的な考えを持つ人のことだと思っています。
簡単に言えば、自分のためではなく、みんなのためを考えることができる人。
利他的な考え方って、なかなか常に持つことは(私自身、日々勉強中です)難しいと思うんですが、ただ持ちたいと思っているというだけでも、まずは十分だと思います。
人間、無意識にまず第一に自己を本能的に優先してしまうものです。せめて意識の上だけでも、その思いがあるというだけで大きく違うと思います。
今は意識の割合として100のうち3ぐらいかもしれないけども、5とか6にはなりたいんだと、そんな風に向上心を思っている人、こういう人はやっぱりチームの中で輝く存在になると思っています。

山口市にある田村ビルズグループ本社

一人の思いが仲間を変え、会社の業績を変える

もちろん、大切なことはわかっているけれど、なかなか実践するのは難しいという人も多いと思います。
でも、なりたいと志すことはとても大切。私自身の経験からそれを学びました。

うちの業績のグラフを見てみると、おかげさまで徐々に伸びているんです。
じゃあいつから伸びているのかというと、僕が利己的なものを少し抑えて、利他的なものを心の中で増やしたいなと志したところから伸びているんです。
やっている事業自体は変わってないんですよね。
社長である私の考え方が変わった。実はそこだけなんです。
リーダーの考え方が変わる。そこだけなんですよ。

もちろん、なかなかすぐには結果は出ないかもしれないけど、
徐々に業績が変わり、社員が増え、やめなくなって、利益が増えて。
田村ビルズという会社の業績をもって志の大切さを数字証明できたように思います。結果が後からついてくるのでちょっと大変なんですけど。
(そのタイムラグもなんだか真実っぽいじゃないですか笑)

人は考え方がその行動の上に乗っかってくるものです。
社長の考えが変われば、当然事業の戦略にも影響してきます。
結果、ビジネスモデルなどテクニカルなものは全部、ここに影響を受ける。
社員だったらお客様だったり協力業者さんだったり、関係者皆さんへの配慮やコミュニケーションというのも少しずつ変わってきてるはずだと思います。
そういうものがスパイラル的に重なって結果を作っていく。
リーダーのマインドが変わるとそこまで影響していくものです。


社員全員が毎日開く手帳。ここに、社是・経営理念・人事理念、2部10章からなるTAMURAフィロソフィ、経営の原点「経営十二ヶ条」、安全七ヶ条、さらには朝礼の進め方まで
、田村ビルズの価値観のすべてがまとめられています。
TAMURAフィロソフィ勉強会の様子
TAMURAフィロソフィ勉強会の様子

確かに、言ってることはわかる。でもやっぱり信じて体現するのは難しいんですよね。
なぜなら僕が信じなかったから笑 わかるけれど、信じていなかった。
四十歳で、社長になる前、専務の時はビジネスモデルだ、なんだって、わちゃわちゃ色んなことやってたんです。でもなかなか情けない業績が十年十五年二十年つづいてきたんですよね。
私はじめ、多くの人はそんなに甘くない。そんな志よりも、こういうプロダクトで、こんなビジネスモデルを考えた方がいい! と目先の手段からやってしまうものです。
もちろん、うちの会社も細かい戦略についても、バリバリやるんですけど。
でも、それを考える人がそもそもどんな考えかっていうのが
最後のアウトプットである商品に影響すると思うんですよね。
本当に、小手先じゃなくてその根幹に何があるのか
そのビジョンは誰が考え、伝え、現場でどのような考え方の人がそれを実際にやるのか、それが大切だと身に染みて感じています。


人事は経営者からの一番わかりやすいメッセージ

人材は重要。これはどこの経営者も同じ思いだと思うんですけど。
じゃあ重要だって考えたことを、どのように体現するのかっていうところで組織ごとに大きな違いがあると思います。
僕らの会社のメッセージとしては「どこで働くかじゃなくて誰と働くか」というテーマをずっと言い続けてはいるんですけど。やはり、何をやるかと同じぐらい誰がやるかっていうのは本当に企業の命運を左右すると思っているので、事業戦略と同じぐらい、力を入れなきゃいけません。
力を入れるって事は何かって言うと、お金と時間を使うってことだと思っています。
ちゃんと大事なお金使って、人材育成に予算を使う。人件費や時間をかけて採用する。宝である社員にはこの2つを多くかけるべきだと考えています。

うちには20代の若手の執行役員がいるんですが、言ってしまえば何十人かごぼう抜きで出世しているわけです。でも、彼が執行役員になることに誰からも異論がなかったんですね。先輩社員も歴が長い人も全然。
それはなぜかというと、彼は周りのためにとか部下のためという「利己よりも利他」のマインドを理解をして、なおかつ数字をあげていたんです。

これはもう経営理念と合致しているので何の異論もなかったですね。
なので「抜擢」じゃないですね。みんなの感覚の中では、それはもう当たり前だよねって感じだったと思います。

人事って社長経営者としてもすごく一番わかりやすいメッセージだと思います。こういう人が会社の中で多くの人を率いるリーダーになっていくんだという、社内メッセージ。
その「こういう人」を一個一個言葉にしたら尤もらしい言葉が並ぶと思うんですけど、人事ってリアルじゃないですか。その人の仕事ぶりとか、普段の立ち振る舞いとか、みんな現場で実際に見て感じて分かってるじゃないですか。だから「リーダーとはこういう人のことなんだ」とリアルに感じて、解釈して、自らもリーダーシップを発揮してほしいと思っています。


次世代のリーダー像とは

今の若い世代は凄くリテラシー高いので、情報収集も色んなところからできて、ビジネスにおけるテクニカルなところっていうのはとても長けていると思います。
でも、最終的にその情報を編集して、加工して、抽出して使うのは自分なので、それができる人間力の部分を高めることも必要です。
テクニカルな部分と、人間力とそれを両方持てるようなリーダーっていうのはこれが特に必要になってくるんじゃないかなとは思いますけどね。

じゃ人間力って何だろうっていうね。
昔から言われてることではありますけど
実際どうやって、身につけていくのかはとても難しいことと思います。
でもそこの一つの解を求めるチャレンジがこのアカデミーハウスでもあると思うんです。
プログラムや共同生活の中で様々ないろんなことをやりながら一年間という期間で一人の人間として、人間力を高めるようなことがアカデミーハウスでできればと思うんですよね。

時間の共有で生まれる化学反応

うちには入社1年目が入るシェアハウスがあるんですが、そこに住むことで寝食を共にしてもらっています、でも実はそれがどのような意味を持つのかはっきりとはまだよく分かっていないんです。
分からないんですけど、若い時期の一定期間、同じ志をもって同世代で寝食を共にすることで生まれる何かというもがあると思うんです。

実際のシェアハウス
シェアハウスでの様子


アカデミーハウスの場合は一年です。長い人生の中でいうとたった一年かもしれないけれど、それが、かけがえのないない一年になるかもしれない。
もちろんそうなるかどうかは自分次第だと思うんですけど。
松下村塾も実は寝食共にする中で、農作業をしたりしているんですよね。
高杉晋作達も学ぶだけでなく、みんなで野菜を作ったりしてるわけです。
その中で天下国家を論じたりしてたっていうのを聞くと、
やはりそういう経験の中に何かがあるんだろうなと思います。
何かって言っても分かんないですよね。笑 
ただそんな化学反応みたいなものがある気がしています。
そんな「仕事」や「学び」の時間以外の時間の共有っていうものを大切にしていかなきゃいけないと思います。
同じ志を持って、切磋琢磨する仲間が寝食共にしていく。そういう場を作るっていうのは会社としてもとても大切なんだと思います。

会社以外で社員同士でコミュニケーションが取れるよう、
定期的に開催されるコンパも開催されている


出会いは「一瞬早足らず一瞬遅からず」

僕はいつも社内でも言うんですが、事業との出会いも人との出会いも「一瞬早からず一瞬遅からず」と思っています。
まさにその時、そのタイミングで出会う。お互いが響きあうタイミングっていうのがあると思っています。
これが半年前だったらどちらかがまだそのステージにいなかったかもしれないし、半年遅くても何かビビッとこなかったかもしれない。人との出会いとかっていうのは、何ていうんですかねやっぱり、絶妙なタイミングみたいなものがあるように思います。

でも、これはお互いが高め合おうとしている志があって初めて起こることだと思っています。
例えば、憧れの人に凄い話を聞きたいとか、出会いたいという強い思いがあったとしても、なかなかそのチャンスってないとめぐってこないと思うんです。けれど、自分が負けん気を持って頑張ろうという気持ちを持ち続ければ、どこかのタイミングで「こいつは何か面白い」とか「目がキラキラしてる!」と相手に思いが伝わって、話を聞けるチャンスが巡ってくることもある思うんです。
またその出会いという点が次につながり、線になって、話がどんどん展開していくこともあると思います。
一見、偶然に見えて、様々な要素が重なった時それが必然に変わっていく。そんなタイミングが人としても事業としてもあるように思います。

良い出会いをしたいなら、仕事に打ち込むべし

良い出会いのためにこれをやる! なんてことはあんまりないんですが、
ただ、自分を高めるために日々のコツコツ努力することは大切と思います。そして自分を高めるためには一生懸命働く以上のことはないと思っています。特にリーダーは。
組織論とか色々あるとは思うんですけど、真面目に一生懸命働くというものに勝るものはないと思うんです。
そんなリーダーは必ず、信頼を得て仲間が集まって結果を出せるとか。
ラッキーが巡ってくるということもあると思います。

でもやっぱり、時間軸はそれぞれあると思うんですよね。
そのチャンスが来るのは明日かもしれないし、下手したら十年後かもしれない。
でも本当に時間かかってでも、続けて続けて、そうやって初めて体現されていくものがあると思います。

実は僕なんかも、経営者の団体とか全然何にも入ってないんです。
人脈広がりますよとか、色んなことを言われてきたんですけども、
結局入らなかったんですよね。いわゆる地元の同世代の経営者の方々、ほとんど知らないんです。
でも、とにかく一生懸命働く中でいろんな出会いがあったし、助けられる場面も多くありました。

シンプルに今を一生懸命頑張る。
自分のことを頑張って初めて、そこから出会いがあるのだと思います。
世の中そんな捨てたもんじゃないですよ。

田村ビルズの資格支援制度を使って勉強する様子

山口をどうするではなく、自分がどうするのか

なんか地域をとにかく盛り上げたい! とかいうじゃないですか。
でもそれって実はチョット違和感があって。
場所にこだわることは、正直あんまり意味がないと思っています。

僕の知り合いに岐阜の企業の社長がいるんです。
その人は今、カンボジアで活躍しているんです。
カンボジアは湖の上で生活する水上生活者が多く、そこで水草の過剰繁殖が問題になっているんです。
水草って処理しても処理しても、一晩で一気に繁殖してしまうもので、
ボートの行く手を阻んだり、エンジンに絡まったりして大変な被害になっているそうなんです。

それを元々、岐阜で古紙の事業をやっている彼がどうにかしようと、考えたんです。
紙からエタノールを精製する技術を応用して、大学とも協力して水草からエタノールを精製する研究進めて、今ではその技術を水草の被害で困っている方へ輸出しています。しかもそのエタノールは水上生活者のボートの燃料にとして使ってもらっているんです。しかも、日本の中古の農機具まで輸出して、そのオイルの活用もしてもらう。
害となっていたはずの水草から燃料を作り、その技術を伝え、作物も作るというそんなスキームで頑張ってやってるんです。

しかも、さらにそこからが面白くて。
精製されたエタノールの余剰の部分からクラフトジンを作って、向こうでクラフトジンのバーを始めたんですよ。(それで作るジン・トニックがめちゃめちゃ美味しいんです笑)
彼は彼の思いをもってカンボジアで活躍している。その一方で、この会社が名が売れることで、人が集まり事業が発展し、岐阜が盛り上がっているんです。
岐阜を盛り上げたいと思ってない。けれど、結果として良くなってるわけですよね。

そりゃお祭りとかなにかイベントをやったら盛り上がるとは思います。
けどそれはその日限定で盛り上がって終わってしまうことがほとんどだとかもしれません。
自分たちが一生懸命、毎日頑張って、その結果として地域が盛り上がる。
なにかそういうその発想から山口どうこうあまり関係なく、頑張った結果として、フィールドとして自分が山口にいるであればいいんじゃないかと思うんですよね。

一生懸命、毎日頑張るといっても、何も考えず純粋まっすぐ行ったらいいというものでもありません。ビジネスならばちゃんとお金を回して儲かるように戦略を練って、マーケティングをして、人を集めてという部分もしっかりやらなきゃいけない。じゃないと歩き続けられないです。ただそこでも重要なのが、誰かのためにどうしたいのか。この志だと思います。


今後アカデミー先に期待したいこと

ここって本当に希少だと思うんです。
本当に10年後、15年後、OBOGがたくさん生まれていく中で、
アカデミーハウス出身なんだ! と自他ともに誇れるようなそんな場になってほしいなと思うし、これが山口県のみならず他県にも同じように出ていけばと思いますよね。壮大な挑戦だと思います。

1人のリーダーの「志」が周りを動かし、根底から企業を変えていく。
そんな「志」を持つ者同士が時間を共にすることで想像を超える化学反応があるかもしれません。

次世代のリーダーを育てるためのシェアハウス「アカデミーハウス」。
3期生の募集開始は2022年8月末の予定です。
お楽しみに。詳細・お問い合わせはこちらから。


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