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書評

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#読書感想文

【読書】余命十年

【読書】余命十年

フィクションなんだが,とてもいい話で,読みながら何度も涙を流す感じ。
こんな話は,最後は何とかハッピーエンドになって欲しいと願いながら読むのだが,どんどん悪い方に進んでいき,しかも主人公が自ら進んで自らの意思でそっちに持って行く流れなので,何とも言いようがない。ただ実際に自分がそのような状態になった場合は,どのような道を選ぶかと考えると,なってからしか考えられないという結論。絶対に10年で死にます

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【読書】アクトレス

【読書】アクトレス

ひと言で言ってしまえば,国民的人気の女性歌手の姉が,妹を絞め殺す話。
しかしこう書くと身もふたもないが,例えばトップガンは,「腕のいい飛行操縦士が教官と出来てしまう映画」だし,あの名作マディソン郡の橋は,「欲求不満の男女が旅の恥は掻き捨てみたいにやる話」である(そうなのか)。

最近映画の短縮バージョンのサイトが問題になっていたが,私に任せてもらえばすべてひと言で表現して見せよう(笑)

さてこの

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【読書】月の光の届く距離 宇佐美まこと

【読書】月の光の届く距離 宇佐美まこと

最初に高校二年生が同級生の子供を身ごもってしまい,親に相談したら出ていけとか激怒され,もう死んでやる~とビルの屋上に立っているようなシーンから始まる。その時にひょんなことで屋上に人がやって来て,話をするうちにとりあえず飛び降りるのはやめにしたのだが,とにかく行くところがないのでどうしようか…と困っていたら,その助けてくれた人が,「ここに行ったら~」と紹介してくれた場所がある。奥多摩にある民宿的な施

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【読書】川のほとりで羽化するぼくら 彩瀬まる

【読書】川のほとりで羽化するぼくら 彩瀬まる

初めて読む作家で,しかも私があまり好きではない短編集。しかしこの本はなんか不思議な雰囲気で何となくページの先が気になる感じで読んでしまいました。

①わたれない
新婚で赤ちゃんがいる家庭で旦那の会社が事業縮小で地方に転勤を内示されたことを機に会社を辞め奥さんに変わって家事子育てにチャレンジしようとしている家族の話。全ての育児に対する情報(本・雑誌・Web…)がすべて女性がやるものという視点で書かれ

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【読書】原因において自由な物語

【読書】原因において自由な物語

ミステリーなのだが登場人物の背景が複雑で理解するのに困難を要するが,なかなか面白いので一気に読んでしまう。
まず世の中に,「顔のランキング」を付けて勝手にマッチングするアプリが流行る。これは収入とか家柄とか全く関係なく,単純に顔だけ。評価を良くするためにアップする写真に加工をしたりするのは常套手段。

ある事故で車が炎上し,顔に致命的な障がいが残った男の子もそのアプリでランクを付けられるのだが(自

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【読書】芸人式新聞の読み方

【読書】芸人式新聞の読み方

時事芸人プチ鹿島氏は,毎日12の新聞を読んでいるとの事。(この本を読むまで鹿島という人は知らなかったが)。やはり何かを続けていると他の人にはない価値観が生まれ,存在感も増すのだろう。最初にメジャーの新聞を分析するのに,この新聞はこんな人ですと紹介している(笑)


『朝日新聞』→高級な背広を着たプライド高めのおじさん
『毎日新聞』→書生肌のおじさん
『東京新聞』→問題意識が高い下町のおじさん

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【読書】山狩

【読書】山狩

日本人はやくざが好きなんだろうか? しかし最近の封じ込めでヤクザも元気がないとのことで、やくざの小説を書いてもいまいち人気も現実味もない。そうなると今度は警察の裏話的な小説に流れ着くのだろうか…。

ある山で女性の遺体が見つかり,警察が捜査したが事件を感じられるような不審な点がなく,単なる転落事故として処理されてしまう。ただその女性は地元の有力企業のバカ息子からストーカーされていて,その娘の家族は

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【読書】R.I.P 安らかに眠れ 久坂部羊

【読書】R.I.P 安らかに眠れ 久坂部羊

SNSで自殺願望のある人とコンタクトを取り,実際に自殺の手伝いをして3人を殺してしまったという男の妹の手記みたいな形の小説。
今までに実際の世の中でも似たようえな事件は色々あっているので,そんな事件を考えながら読むと,単に自殺ほう助?と言っても考え方がいろいろあるなぁ…と。

死ぬ(死にたい)理由もまちまち。一人はいじめや失恋に耐え切れず自分なんていなければいいという感じ。もう一人は不治の病でだん

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【読書】犯罪者 太田愛

【読書】犯罪者 太田愛

前に読んだ幻夏の前編みたいな小説。本当はこちを読んでから幻夏を読めばよかったのだが,逆に読んでしまった。またこの本はとんでもなく長い。しかも必然性があって長いわけではなく,エサを撒き過ぎて収拾がつかない感じ。悪く言えば冗長…。そうは言ってもとんでもなく面白いので(笑),「長いなぁ」とか文句言いつつ,ハラハラドキドキしながら読み続ける感じ。

いきなり東京の駅前広場で5人がフルフェイスの暴漢に襲われ

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【読書】幻夏

【読書】幻夏

冤罪がテーマの小説。ただ書いたのがあの水谷豊の「相棒」の脚本家なので,普通の小説とはちょっと違う,映像が意識されているのか,テレビ用と小説用は根本的に書き方が違うのか,とにかく伏線をバラまきまくっている感じで,至る所にネタが転がっている。

ストーリーがとても説明しにくい。20年くらい前に行方不明になった自分の息子を探して欲しいという依頼が探偵の所に。その母親には二人の息子がいてそのうちの一人が行

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【読書】死という最後の未来

【読書】死という最後の未来



石原慎太郎・曽野綾子

先日お亡くなりになった石原慎太郎さんに関して、私は支持も批判もする材料を持ち合わせていない。
作家としての石原さんはほとんど読んだことがなく、ちょっと前に大阪の池田小学校で起こった、殺害事件の小説を読んだくらいで(あれはあれでとてもよく書かれていたが、どうして石原さんがこんな題材で書いたのかが謎だった)

政治家としては、小池さんを化粧ババアと揶揄したり、中国を支那と呼

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【読書】共感で広がるTwitterの世界 〜東急ハンズ流企業アカウントの育て方〜

【読書】共感で広がるTwitterの世界 〜東急ハンズ流企業アカウントの育て方〜



表題どおり、東急ハンズの中の人が書いたTwitterアカウントの運用の仕方の本。
10年間、一番最初の立ち上げからやって来た人なので、とても詳しく、具体的に、わかりやすく書かれているので、読んだ人はとてもメリットがあるだろう。本当に丁寧に書かれている。

ただし、これは「東急ハンズ」という、しっかりブランドが立っている企業のTwitterであるわけで、名も知られていない中小零細の企業とか個人経

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【読書】二十一時の渋谷で

【読書】二十一時の渋谷で



多分どの年代の人が読んでも、色々考えさせられる小説。
舞台は東証一部上場の映画配給会社。そもそもそんな業種の会社があるとかよく分かっていないのだが、海外で上映されている映画で日本にまだ紹介されてなく、多分これなら日本でも人気が出るだろう…というような映画を見つけ出し、契約して日本で上映する権利を得て、その後映画館に交渉して日本中に映画を広げるような仕事をしている会社なのだろう。

そもそも映画

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【読書】コロナ後の世界 内田 樹

【読書】コロナ後の世界 内田 樹



この人はリベラルというか左である。
で、最近立憲が資金提供して話題になっているCLPを絶賛したりしていたから、最近はあまり出てこれなくなっているのかもしれないが…(笑)

ただしこの本は私は相当共感しながら読んだ。
コロナが始まってからの日本社会の変遷を的確に分析し今後の展開を予測している。
ただ予測に関してはどうなるかはわからないが、現状の分析に関しては、もう「さすが内田さん」と敬服するレベ

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