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【読書】二十一時の渋谷で

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多分どの年代の人が読んでも、色々考えさせられる小説。
舞台は東証一部上場の映画配給会社。そもそもそんな業種の会社があるとかよく分かっていないのだが、海外で上映されている映画で日本にまだ紹介されてなく、多分これなら日本でも人気が出るだろう…というような映画を見つけ出し、契約して日本で上映する権利を得て、その後映画館に交渉して日本中に映画を広げるような仕事をしている会社なのだろう。

そもそも映画を見に行く人口ってどんな感じで推移しているのだろう。調べてみたら1960年頃は年間10億人が映画見に行っていたのに、2020年頃は1.5億人くらいになっている。(2019年が2億くらいあるのに2020年は1億くらい。2019年に何かとんでもないヒット映画があったのだろうか…)。

その会社がM&Aでなくなることになり、今の社員は色々な判断をしなければ成らない状況に。主人公はこの時がチャンスとある新しい企画を提案し、もう何をやっても同じじゃんとか思っている上司を、ある方法で説得し何とかスタートするのだが。

この会社、本当に色々な人がいて、まるで自分の会社を見ているようだった。この人はうちの会社で言えばあの人だ、もしかするとこいつは俺に似ているのか…など考えながら読むととても面白い。徹底的に悪い奴が出てこないのも安心して読めるのかもしれない。しかも水戸黄門ではないが、ああここでこんな人がちゃんと出でくるのか…という安心感もあり、ハッピーエンド的に進んでいくのも有難い。

映画好きが読むと本当に感動するというか想いに耽る話になるだろう。まあ世の中こんなに上手くいくことはあり得ないので(笑)、そこが小説の良い所なのだが。

これから映画館はどうなっていくのだろう。新聞とネットニュースの関係とはまた違った良さ悪さがあるので一概に「もう映画は無くなります」とは決して言えないが、厳しい産業であることにはまちがいない。でもいくらネットが盛り上がっても映画作る人たちがいないとコンテンツはできあがらないし、いい映画はすごい人が作らないと面白くはならない。映画と言う文化を残すのと、新聞を残すのはある意味人類の課題なのかもしれない。ジャーナリズム・エンターテイメントにおいては。

そんな事を色々考えさせられながら読む本です。

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