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読みがえり

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読んだ本のレビュー(書評)をまとめています。雑多な書棚ですが、興味があればどうぞ!※注意🚨紹介している本を一度読んでから開くのをオススメします。限りなくネタバレに近いので笑笑
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2024年3月の記事一覧

書評:『銃・病原菌・鉄』(下)J.ダイアモンド

書評:『銃・病原菌・鉄』(下)J.ダイアモンド

①紹介

アメリカの進化生物学者ジャレド・ダイアモンド氏による『銃・病原菌・鉄 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』(下巻、倉骨彰訳、草思社文庫、2012年)を紹介します。前回読んだ上巻の続きで、本書はその各論と言えるでしょう。エピローグにおける著者の歴史研究への熱意と使命がひしひしと伝わります。

②考察

● 「一つの発明が一つの社会で独自に誕生するか、それともよそから借用されるかは、その発明自

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書評:『FACTFULNESS』H.ロスリングほか

書評:『FACTFULNESS』H.ロスリングほか

①紹介

スウェーデンの医師ハンス・ロスリングと彼の息子オーラ氏、その妻アンナ氏の三者による『FACTFULNESS-10の思い込みを乗り越え、データを素に世界を正しく見る習慣』(上杉周作・関美和訳、日経BP社、2019年)を紹介します。世界はそれほど悪くないと考えるためには。三十数年にわたる著者の経験が生んだ最強のデータ活用術が今ここに。

②考察

● 「人はドラマチックな本能のせいで、(略)

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書評:『琉球王国』高良倉吉

書評:『琉球王国』高良倉吉

①紹介

琉球史学者の高良倉吉氏による『琉球王国』(岩波新書、1993年)を紹介します。「なぜ沖縄の歴史は暗いのか」という学生の問いに端を発し、著者含め学者だけでなく、様々な職種のウチナーンチュも携わった研究の成果がここに。かつて繁栄した島嶼国家の姿が見えてきます。

②考察

● 「いまもって『日本のなかの沖縄』の内に『日本の外としての沖縄』が内包されている」
➢ 1972年の返還以来、沖縄は日

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書評:『銃・病原菌・鉄』(上)J.ダイアモンド

書評:『銃・病原菌・鉄』(上)J.ダイアモンド

①紹介

アメリカの進化生物学者ジャレド・ダイアモンド氏による世界的ベストセラー『銃・病原菌・鉄 - 一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』(上巻、倉骨彰訳、草思社文庫、2012年)を紹介します。旧大陸のヨーロッパ人とアメリカ大陸の先住民とを根本的に分けたものは何か。すべては、ニューギニア人ヤリが著者に投げかけた一つの問いから始まりました。

②考察

● 「本書のタイトルの『銃・病原菌・鉄』は、ヨー

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書評:『あなたとSDGsをつなぐ「世界を正しく見る」習慣』原貫太

書評:『あなたとSDGsをつなぐ「世界を正しく見る」習慣』原貫太

①紹介

フリーランス国際協力師の原貫太さんによる『あなたとSDGsをつなぐ「世界を正しく見る」習慣』(KADOKAWA、2021年)を紹介します。巷で何かと話題の「SDGs」。それを重視するあまり、見逃されてきた世界の不都合な真実の数々を「知る」ことから始まる真のSDGsがここにあります。

②考察

● 「私たちが豊かで便利だと感じている生活は、地球環境の、そして誰かの『犠牲』の上に成り立って

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書評:『遊動論 柳田国男と山人』柄谷行人

書評:『遊動論 柳田国男と山人』柄谷行人

①紹介

哲学者の柄谷行人氏による『遊動論-柳田国男と山人』(文春文庫、2014年)を紹介します。人は国家と資本をどう乗り越えるべきか。鍵を握るのは、民俗学者の柳田国男が古来より続く日本の固有信仰に見出した「山人」の概念です。

②考察

● 「周辺部の自立と繁栄のためには、中央に対する闘争だけでなく、その内部における『中心―周辺』の構造、あるいは『目に見えぬ階級』を克服する必要がある」
➢ 「周

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書評:『疫病と世界史』(下)W.H.マクニール

書評:『疫病と世界史』(下)W.H.マクニール

①紹介

カナダの歴史学者ウィリアム・H・マクニールによる『疫病と世界史』(下巻、佐々木昭夫訳、中公文庫、2007年)を紹介します。前回読んだ上巻の続きですね。紀元1200年以降を生きた人類の長きにわたる疫病との戦いと共存、克服の歴史をご覧あれ。


②考察 

● 「ユダヤ人は、ペストの毒を故意にばらまいた下手人と見なされて、迫害されるのが常だったのである」
➢ 14世紀のヨーロッパにおける史

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追悼:『日本人のための平和論』J.ガルトゥング

追悼:『日本人のための平和論』J.ガルトゥング

①紹介

ノルウェーの平和学者ヨハン・ガルトゥングによる『日本人のための平和論』(御立英史訳、ダイヤモンド社、2017年)を紹介します。彼が先月17日(享年93歳)に亡くなったことを受けて本書を手に取りました。その業績を振り返り、憲法9条に代わる日本の平和とは何か考えてみましょう。


②考察

● 「日本政府が言う『集団的自衛権』は、(略)事実上の軍事同盟であり、正直な言葉に直すなら『米国によ

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書評:『遠野物語・山の人生』柳田国男

書評:『遠野物語・山の人生』柳田国男

①紹介

日本民俗学の草分け・柳田国男による『遠野物語・山の人生』(岩波文庫、2007年)を紹介します。岩手県遠野に住む佐々木喜善が伝えた説話と、柳田がその地での見聞を元にまとめたフィールドワーク論は私たち日本人に一つの問いを投げかけているようです。


②考察

● 「その夜娘は(略)死したる馬の首に縋りて(略)その首に乗りたるまま天に昇り去れり。オシラサマというはこの時より成りたる神なり」

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書評:『疫病と世界史』(上)W.H.マクニール

書評:『疫病と世界史』(上)W.H.マクニール

①紹介

カナダの歴史学者ウィリアム・H・マクニールによる『疫病と世界史』(上巻、佐々木昭夫訳、中公文庫、2007年)を紹介します。コロナ禍の時に話題になりましたね。なぜ疫病は発生し、人類に何をもたらしてきたのか。紀元前500年から後1200年の世界を舞台に、その謎を探る壮大な試みです。


②考察

● 「アフリカでヒトに寄生する生物が非常に多様性に富んでいるという事実は、アフリカが人類の主な

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書評:『22世紀の民主主義』成田悠輔

書評:『22世紀の民主主義』成田悠輔

①紹介

イェール大学教授の成田悠輔氏による『22世紀の民主主義-選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』(SB新書、2022年)を紹介します。「革命か、ラテか?」と氏が警告するほどに、昨今の民主主義は風前の灯。それに代わる大胆で新たな構想は処方箋になり得るのか。考える余地があります。


②考察

● 「若者が選挙に行って『政治参加』したくらいでは何も変わらない」
➢ 「若者」の総数は日

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