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書評:『疫病と世界史』(上)W.H.マクニール
①紹介
カナダの歴史学者ウィリアム・H・マクニールによる『疫病と世界史』(上巻、佐々木昭夫訳、中公文庫、2007年)を紹介します。コロナ禍の時に話題になりましたね。なぜ疫病は発生し、人類に何をもたらしてきたのか。紀元前500年から後1200年の世界を舞台に、その謎を探る壮大な試みです。
②考察
● 「アフリカでヒトに寄生する生物が非常に多様性に富んでいるという事実は、アフリカが人類の主な揺籃の地だったことを示しているということになる」
➢ ヒト現るところにウイルスは有りか。歴史的な大事件であるがゆえに、人類の誕生は極めて深刻な副作用を伴ったと言えよう。いつの時代においても人類は、周期的に訪れる疫病との共存を迫られているようだ。
● 「事実、地球史的な時間の尺度からすると、人口の急増は、なんらかの生態的バランスの崩壊に必然的に伴う一時的な現象であって、僅か数世代の間、人類が数を増しながら生き永らえると、自然の限界がおのずと現れて大きく立ちはだかるということのように思われる」
➢ この説に従えば、中世のペストや100年前のスペイン風邪、近年のコロナ禍が「自然の限界」として人口増加を抑えるために発生したということになるが、慎重ながら推せる。ウイルスは人を選ばない。
● 「島国で孤立しているという状態は比較的緻密な人口の形成を許すが、それはまた、もし何らか未知の感染症が間を隔てる海を跳び越え日本列島に侵入した場合には、悪疫による異常な災厄をもたらすことにもなるのだ」
➢ 日本の脱コロナが他の先進国より遅れた原因はマスク以外にも考えられる。島国という地形柄、日本列島は守りに強そうだが、感染症が入り込みにくい分、一度侵入すると撲滅に相当な時間がかかるのだろう。
③総合
いつの時代どこにおいても、疫病とその原因であるウイルスは人類にとって恐れの対象だろう。それ自体が細胞を持たず、生物か否かという論争を引き起こしていることもまた人類がウイルスに恐怖を覚える原因の一つだと思われる。疫病に直面するというのは、未知との遭遇に他ならない。歴史の教訓を胸に刻みながら下巻へ。
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