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追悼:『日本人のための平和論』J.ガルトゥング

①紹介

ノルウェーの平和学者ヨハン・ガルトゥングによる『日本人のための平和論』(御立英史訳、ダイヤモンド社、2017年)を紹介します。彼が先月17日(享年93歳)に亡くなったことを受けて本書を手に取りました。その業績を振り返り、憲法9条に代わる日本の平和とは何か考えてみましょう。

②考察

● 「日本政府が言う『集団的自衛権』は、(略)事実上の軍事同盟であり、正直な言葉に直すなら『米国による他国攻撃に参加する権利』である」
➢ ガルトゥングは一貫して日本のアメリカからの独立、専守防衛、領土の共同所有を主張。本書の出版から7年目の今年、共和党のトランプ氏が再び大統領に選ばれれば、日本は米軍撤退を迫られるだろう。どう転ぼうとも今後の動向は無視できない。

● 「予防とか解消とか言う以前に、そもそも他者の苦しみにも、問題の存在にも気づいてさえいないのが構造的暴力なのだ」
➢ 要は「無関心」だが、かく言う私もそれに間接的に加担してしまっている。自分の仕事や趣味に関連のある社会問題(私の場合はキリスト教徒として、過去にいわゆる「宗教2世」に接触する、政教分離について考えるなど)に関心を持つことから「始まる」。

● 「平和には『消極的平和』(negative peace)と『積極的平和』(positive peace)がある。ただ暴力や戦争がないだけの状態を消極的平和、共感に裏づけられた協調と調和がある状態を積極的平和という」
➢ 2023年に発表された「世界平和度指数」によれば、日本のそれは163ヶ国中なんと9位。しかし、昨今の日本の情勢はどう見ても消極的平和だろう。辞書の言う「平和」は積極的平和であり、日本はそれには程遠い。

③総合

日本の平和教育は自虐史観に基づくもので、新しい発想を摘んで思考停止に陥らせる節がある。だから私たちは米軍や9条に縋るようになったのかもしれない。昨今のウクライナ侵攻や台湾有事の報道に煽られて核武装を訴える者が少なくないが、それは結局アメリカへの従属を許しているのと同義だ。武力行使はあくまで最終手段。一つの主義に傾いてばかりでは平和を作ることはできないだろう。

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