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読みがえり

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読んだ本のレビュー(書評)をまとめています。雑多な書棚ですが、興味があればどうぞ!※注意🚨紹介している本を一度読んでから開くのをオススメします。限りなくネタバレに近いので笑笑
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記事一覧

読書:『国家』(上)プラトン

読書:『国家』(上)プラトン

①紹介

哲学者プラトンによる『国家』(上巻、藤沢令夫訳、岩波文庫、2008年)を紹介します。前回読んだ『饗宴』に引き続き、彼の亡き師ソクラテスが主人公として登場。「正義」とは何か。師の口を借りてプラトンはそれを為政者に求められる資質とし、哲学を修めた者による政治の実現を説きましたが、それには疑問の余地があります。


②考察

● 「われわれが国家を建設するにあたって目標としているのは、(略)

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読書:『禅と日本文化』鈴木大拙

読書:『禅と日本文化』鈴木大拙

①紹介

仏教学者の鈴木大拙による『禅と日本文化』(北川桃雄訳、岩波新書、1964年)を紹介します。本書は鈴木が海外に仏教を紹介するために英語で著されました。私たちの日々の生活の中に宿っている禅の精神。それが日本文化に及ぼす影響は計り知れません。


②考察

● 「禅の教義は、形態を超越して精神を把握することなのであるが、それは、われわれに自分たちの住む世界は特殊諸形態の世界である事実、精神は

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読書:『教誨師』堀川惠子

読書:『教誨師』堀川惠子

①紹介

ノンフィクション作家の堀川惠子氏による『教誨師』(講談社文庫、2018年)を紹介します。著者自らが浄土真宗の僧・渡邉普相に取材した本書は、50年にわたり教誨師として彼が死刑囚たちと重ねた対話と告白。生を説きながら、罪人を死へと導かなければならない矛盾がここに。死刑の裏側を炙り出す衝撃の一冊です。


②考察

● 「最初から、法の決まりの中でわれわれ教誨師になっているわけですから。拘置

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読書:『愛するということ』E.フロム

読書:『愛するということ』E.フロム

①紹介

ドイツの精神分析学者エーリッヒ・フロムによる『愛するということ』(鈴木晶訳、紀伊国屋書店、2020年)を紹介します。「愛」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。恋愛指南書をお探しなら他を当たるのが良いかもしれません。技術としての愛を説く世界的ベストセラーの古典が改訳・新装版として現代に甦ります。


②考察

● 「愛は技術である」
➢ 本書の内容はこれを前提とし、これを結論としている。

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読書:『善の研究』西田幾多郎

読書:『善の研究』西田幾多郎

①紹介

哲学者の西田幾多郎による『善の研究』(岩波文庫、2012年)を紹介します。東洋と西洋。双方の哲学の影響を多分に受けつつ、それらを見事に日本思想に組み入れた西田の語る「善」とは何か。その根底に、通常の経験を超えた「純粋経験」を見出すことができるでしょう。


②考察

● 「自己の意識状態を直下に経験した時、未だ主もなく客もない、知識とその対象とが全く合一して居る。これが経験の最醇なる者

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読書:『犠牲』柳田邦男

読書:『犠牲』柳田邦男

①紹介

ノンフィクション作家の柳田邦男氏による『犠牲-わが息子・脳死の11日』(文春文庫、1999年)を紹介します。ある夏の日、心を病んだ次男が自死を図り緊急搬送。その後に判定された脳死という現実。本当の死が訪れるまでの数日間、残された家族が葛藤と苦悩の末に選んだ答えとは。逝く息子と彼を見守る父による魂の記録です。


②考察

● 「もちろん脳死患者だからといって放置するのではなく、私たちは

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読書:『饗宴』プラトン

読書:『饗宴』プラトン

①紹介

哲学者プラトンの『饗宴』(久保勉訳、岩波文庫、1965年)を紹介します。愛(エロス)とは何か?誰もが抱きそうな疑問から始まった曲者揃いの酒気帯びディスカッション!最後の話し手ソクラテスは何を語るのか。これより開宴です。

②考察

● 「愛すべきものとは真に美しく、きゃしゃで、完全で至福な者です」
➢ 有象無象の論客5人による戯言を聞き終え、口を開いたソクラテス。ここで彼は以前会った女性

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読書:『人生論ノート』三木清

読書:『人生論ノート』三木清

①紹介

哲学者の三木清による『人生論ノート』(新潮文庫、2011年)を紹介します。本書は23の章で構成されており、中には生きるうえでの困難や生きづらさを打ち砕いてくれる言葉が多々あるかもしれません。どこから読むかはあなた次第。最初に選んだものが、あなたの求めている答えでありますように。

②考察

● 「幸福について考えることはすでに一つの、恐らく最大の、不幸の兆しであるといわれるかも知れない」

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読書:『塩狩峠』三浦綾子

読書:『塩狩峠』三浦綾子

①紹介

小説家の三浦綾子による『塩狩峠』(新潮文庫、2005年)を紹介します。明治時代に北海道で実際に起きた列車脱線事故に取材した本書は、主人公の鉄道員・永野信夫がクリスチャンとなり、犠牲の死を遂げるまでの物語。神の愛とは何か。その真髄に迫ります。

②考察

● 「愛とは、自分の最も大事なものを人にやってしまうことであります。最も大事なものとは何でありますか。それは命ではありませんか」
➢ 幼

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読書:『バカの壁』養老孟司

読書:『バカの壁』養老孟司

①紹介

解剖学者の養老孟司氏によるベストセラー『バカの壁』(2003年、新潮新書)を紹介します。平成で一番売れた新書として名高い本書のテーマは「『話せばわかる』なんて大うそ!」ということで、人間の脳からその謎に迫ります。日常生活における口論や世界を巻き込む宗教戦争の原因は、人間が必要としない情報を遮断する癖にありました。

②考察

● 「自分が知りたくないことについては自主的に情報を遮断してし

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読書:『存在と時間』(下)M.ハイデッガー

読書:『存在と時間』(下)M.ハイデッガー

①紹介

哲学者ハイデッガーによる『存在と時間』(下巻、細谷貞雄訳、ちくま学芸文庫、1994年)を紹介します。上巻の続きですね。下巻のテーマは現存在(=人間)の終末としての死についてであり、これまた難解な内容ですが、誰かを弔ったことのある読者にとっては上巻より読みやすいのではないでしょうか。

②考察

● 「死とは、現存在が存在するやいなやみずから引き受けるあり方(存在の仕方)である」
➢ ハイ

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読書:『沈黙』遠藤周作

読書:『沈黙』遠藤周作

①紹介

小説家・遠藤周作による『沈黙』(新潮文庫、2003年)を紹介します。キリシタン迫害が厳しさを増す日本に潜入した司祭ロドリゴが棄教に至るまでの物語。自分や信徒が塗炭の苦しみを味わってもなお神は沈黙を貫く。ならば神はいるのか。信仰の有無を問わず、壮大なテーマを突きつけずにはいません。


②考察

● 「主よ、あなたは何故、黙っておられるのです。あなたは何故いつも黙っておられるのですか」

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読書:『ソクラテスの弁明・クリトン』プラトン

読書:『ソクラテスの弁明・クリトン』プラトン

①紹介

古代ギリシアの哲学者プラトンによる『ソクラテスの弁明・クリトン』(久保勉訳、岩波文庫、1964年)を紹介します。神々を信じず、アテネの青年たちを腐敗させた罪で告発されたソクラテスの抵抗と最期。生涯一冊も書物を遺さなかった師が法廷で語ったことを弟子のプラトンが速記者の如くまとめたのが本書です。


②考察

● 「自ら知らざることを知れり」(『弁明』)
➢ かの有名な「無知の知」である。

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読書:『存在と時間』(上)M.ハイデッガー

読書:『存在と時間』(上)M.ハイデッガー

①紹介

ドイツの哲学者マルティン・ハイデッガーによる『存在と時間』(上巻、細谷貞雄訳、ちくま学芸文庫、1994年)を紹介します。内容があまりにも難解ですので読むのに根気がいるでしょう。「ある」とは一体どういうことなのか。その問いは精神的な緊張を伴う極めて壮大な旅の始まりに過ぎません。
 

②考察

● 「われわれ自身が各自それであり、そして問うということを自己の存在の可能性のひとつとしてそなえ

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