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書評:『あなたとSDGsをつなぐ「世界を正しく見る」習慣』原貫太

①紹介

フリーランス国際協力師の原貫太さんによる『あなたとSDGsをつなぐ「世界を正しく見る」習慣』(KADOKAWA、2021年)を紹介します。巷で何かと話題の「SDGs」。それを重視するあまり、見逃されてきた世界の不都合な真実の数々を「知る」ことから始まる真のSDGsがここにあります。

②考察

● 「私たちが豊かで便利だと感じている生活は、地球環境の、そして誰かの『犠牲』の上に成り立っている」
➢ 資本主義に否定的な内容の書籍を今までに何度か手にしてきたので、この言葉を真実だと思えるようになったが、同時に言い表し難い残酷さを覚える。「中心―周辺」という構造が今も世界中で幅を利かせている限り。

● 「社会問題というのは、人々に認知されて初めて社会問題になる」
➢ かつて労働問題をマルクスが、環境問題をR.カーソンが告発したように、「それ」が社会問題と考えられるようになるまでには先人たちの物事を疑う思考と気が遠くなるような観察があった。先人がいなくなれば、それを受け継ぐ者が現れる。社会問題が忘れ去られずに残り、関心を持たれ続ける理由はそれだろう。

● 「多様な依存先を持つことが、自分らしく生きることにも繋がるのです」
➢ ここで言う「依存先」は否定的な意味ではなく、「コミュニティ」や「集まり」など肯定的な意味で捉えて問題ないだろう。私の場合は教会と病院がそれだが、どこかに所属し、同じ趣味や似たような境遇を持つ者と交わることでもたらされるものは何にも増して尊い。

③総合

本書を読めば、その前後でアフリカと日本の社会の見方が大きく変わるに違いない。経済的にアフリカより日本の方がマシかと言えば全くそうではないことが一目瞭然だ。ファストファッションや肉食、スマホにせよ、「中心」が享受する豊かさの代償は専ら「周辺」に流れ込み、対症療法では取り除けないほどの深刻さを帯びている。真のSDGsの第一歩は、その奥の問題に関心を持ち続けることによって初めて果たされるものであろう。実際に「現場」を見て何度も葛藤したからこそ、原さんの訴えは力強く説得力に満ちている。

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