【小説】田舎暮らし案内人奮闘記 第1話
こんにちは、移住専門FP「移住プランナー」の仲西といいます。
ここでは、これまでの17年間の活動、2500組以上の移住相談対応から
皆さんに役立つ情報を書いています。
今回は、これまで受けた移住相談を小説風に書いてみました。
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第1話 奥様だけ移住?献身的なご主人の本当の理由
私の朝の日課。
5㎞のジョギングとシャワー、梅干しと卵かけご飯、そしてスマホで為替相場をチェック。
やがて、遠くから小学校のベルが聞こえてくると、私も子供たちと同じ様に、書斎に向かいデスクに向き合う。
そして、教科書の代わりに、PCを開けて電源を入れる。
まずは、メールチェックが仕事のスタート。
本日も受信トレイには50件の未読メッセージ。
移住に夢見る人からの熱いメッセージが届いている。
相談メールをフォルダー移動し、着信の古いものから内容を確認をする。
子供のようにワクワクした気分でメールを開く。
本日の相談。
私は「妻だけの移住」に違和感を感じた。
これが「ご主人だけ移住」ならば、違和感を感じることはなかっただろう。
何故ならば、田舎暮らしに憧れるのは、男性が圧倒的に多いからだ。
特に、高齢の女性は若い女性よりも、田舎暮らしに憧れる率は下がってしまう。
これは何か嫌な匂いがする。
まずは、簡単な文章で探り入れてみる。
「今からそちらに向かいます」に驚いた。
○○県からだと車で高速を飛ばしても、片道4時間は必要である。
「移住」を焦っているケースに、あまり良い事例はない。
私は目一杯の不安を感じながら、安藤ご夫婦の到着を待つことにした。
午後になり、安藤ご夫婦が時間通りに到着。
私の車にご夫婦が同乗し、準備していた空き家に向かった。
まずは、車中で定番の質問をぶつけてみた。
「移住の理由」はとても大切である。
これが明確でないと、移住の実現は難しい。
目的を持たずに移住をしても、移住後に満足する人が少ないからである。
また、地域に人を呼び込む以上、移住の理由を確認し、地域の人に説明する責任が私にはある。
地域に馴染めず、地域とトラブルを起こすような人を呼び込んではいけないからである。
ご主人が答える。
奥様がほとんど言葉を発しないことに、さらに疑念が膨らむ。
やがて、目的の空き家に到着。
すると、ご主人が足早に飛び出すと、待ち構えていた不動産業者の若い営業マンに挨拶もなく、積極的に家のチェックを始めた。
そして、奥様は私と一緒に、ゆっくりと家の中に入る。
奥様が移住を希望しているのに、ご主人が乗り気で奥様は乗り気ではない?
やがて、内覧から家の周囲を確認したご主人が戻ってくると、奥様に話しかけた。
その後も、2件の空き家を内覧したが、同じようなパターンを繰り返し、私の事務所へと戻ってきた。
私はもう少し詳しい内容をヒアリングするために、ご夫婦を来客のテーブルに案内した。
一度、席に着いたご主人が、トイレに席を立った。
唐突に、奥様が重たい口を開いた。
その後、ご夫婦と雑談を交わして、お帰り願った。
予想した通り、その後、ご夫婦から連絡が来ることはなかった。
「移住とは、とてもポジティブな行為である」と、私はいつもお伝えしている。
または、「思い描いている夢を、田舎で実現するものでもある」と、お話をしている。
そのため、私は「できるだけご夫婦で移住をしていただきたい」と願う。
「離婚」をきっかけに、移住をする人も少なくはない。
ただし、心が離れたご夫婦のご相談には、寂しいものだけが残った。
一期一会。
今日のご夫婦に幸があることを・・・
(終わり)
#創作大賞2024 #お仕事小説部門
移住専門FP「移住プランナー」として活動をしています。これまで18年間2500組以上の移住相談に対応をしてきました。ここでは、私の経験からお役に立てる情報を日常的に綴っていきます。「移住」という夢の実現にお役に立てればうれしいです。大阪出身、北海道と鹿児島の3拠点生活中。