昼夜を問わず明るい電灯のまわりを飛び回る羽虫 それを覆い囲むようにして宙を這いまわる蛇の視点で 恥ずかしいおもいをしたことを思い出す夜半に じゅわっと熱した電球に…
月光は障害物に遮られ水面に届かず 暗い部分から触手が無数に伸びてくるイメージで 揺れるたんびに酔う 微かな水音はたしかに心地よく 川のように空気がすべり流れていく匂…
よく晴れているため散歩に出ると、いつの間にか近所のお婆さんの家が取り壊されていることに気がついた。我が家を出てほんの数秒のところにある家だったのに、解体されて…
ソフトボールがなんなのかということを真剣に考えていた。机のまえに座らされて、今日は放課後のクラブ活動のアンケートをとりますといわれて、紙とペンを渡される。ほか…
有酸素運動を室内で行う方法を探しています。思い当たる節がある方は下記電話番号、もしくはメールアドレスまでご連絡ください。そういう張り紙を貼った。近所の電柱とい…
寂しい気持ちを誰にも共有できなかった夜を幾度となく超えて、人は自室にお守りの御札を貼るようになる。ぺたりと裏側に両面テープを貼って。御札にこんなに強力な糊をは…
Kei
2023年10月13日 23:38
昼夜を問わず明るい電灯のまわりを飛び回る羽虫それを覆い囲むようにして宙を這いまわる蛇の視点で恥ずかしいおもいをしたことを思い出す夜半にじゅわっと熱した電球にぶち当たる死よりも痛みをそこで感じるエネルギーだ 至近距離で傷口を見つめて溢れる血液を接写するジャーナリズムでもっと傷つけたいわたしの身体 この感情を晒して自由になれるくらいだったらすべてを秘密にして呪いたい幾千もの忘却
2023年7月11日 21:52
月光は障害物に遮られ水面に届かず暗い部分から触手が無数に伸びてくるイメージで揺れるたんびに酔う微かな水音はたしかに心地よく川のように空気がすべり流れていく匂いをかいでる 花の名前はひとつも知らない帰り道に咲く花壇の香りがあるその下で蠢くようにしているけどわたしが手を下にかざして歩いている心情のパターンは過去の記憶から切り離してわたしの身体はひとつも影を落とさない ひいてい
2023年6月14日 22:11
よく晴れているため散歩に出ると、いつの間にか近所のお婆さんの家が取り壊されていることに気がついた。我が家を出てほんの数秒のところにある家だったのに、解体されていることにもお婆さんがいなくなっていることにも気がつかなかった。更地だった。土しかない更地だった。お婆さんの住む家の下は、こんな風に土だったのかと思った。 よくよく考えればわたしがまだ小さな子どもだった二十年前から、あのお婆さんはずっとお
2023年5月23日 00:03
ソフトボールがなんなのかということを真剣に考えていた。机のまえに座らされて、今日は放課後のクラブ活動のアンケートをとりますといわれて、紙とペンを渡される。ほかに説明がない。サッカー、バスケ、卓球、バドミントン。わかる。水泳、柔道、剣道、まあやったことないけどなんとなく。わかる。ソフトボール。え、ソフトなボール? 柔らかいボールというのならきっとハードなボールが別種存在するのだろう。それならソフ
2023年4月22日 21:25
有酸素運動を室内で行う方法を探しています。思い当たる節がある方は下記電話番号、もしくはメールアドレスまでご連絡ください。そういう張り紙を貼った。近所の電柱という電柱に貼ってまわったが、1件として連絡がきていない。こんなものはインターネットで検索してもぜんぜんおもしろくない。室内で使用する特殊な器具を勧めるのをやめてください。 本来、「室内でできる」といったときに想像されるのは、本当に外に出ない
2023年4月22日 20:08
寂しい気持ちを誰にも共有できなかった夜を幾度となく超えて、人は自室にお守りの御札を貼るようになる。ぺたりと裏側に両面テープを貼って。御札にこんなに強力な糊をはっつけてバチがあたらないのだろうかといつもおもう。わからないけれど貼る。きっと救われるような気がする。自分の頭よりも上の位置に御札を貼って、貼ってからコンパスで向きを確認する。御札をどちらの方角に向けてよいかは元から決まっているらしい。調べ