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明かり  Ι詩

月光は障害物に遮られ水面に届かず
暗い部分から触手が無数に伸びてくるイメージで
揺れるたんびに酔う
微かな水音はたしかに心地よく
川のように空気がすべり流れていく匂いをかいでる
 
花の名前はひとつも知らない
帰り道に咲く花壇の香りがある
その下で蠢くようにしているけど
わたしが手を下にかざして歩いている
心情のパターンは過去の記憶から切り離して
わたしの身体はひとつも影を落とさない
 
ひいていく波のように息を吐く
生暖かい春の暖気が引っ張ってくるのは
花開く花弁そのものの陽気
それでいっぱいになった容器で
暮らしていってる
 
引き連れそうになった憑き物は
家の灯りで落とされる
ひとは塩を撒いて自ら季節の色を変える
仄暗い冬の幕引きは単なる節目で
夜の散歩は繰り返し終えられる

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