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本は静かに積み上がる(2023/12特別篇── あなたに紙のお恵みを)
本屋は誘惑の場所だ。
本たちが、「読んでみなよ」と誘う。
あるいは、「読めんのか?」と煽る。
さらに、本の中に引用された本、参考文献としてあげられた本、著者紹介に載っている既刊書などなど、本と本とが手に手を取って、声もなく我が袖を引く(イタロ・カルヴィーノ『冬の夜ひとりの旅人が』(脇功訳、白水Uブックス)の冒頭部分を思い出しながら)。
負けてはいけない。
いや、負けていいのだ(みんな、
編集担当Xの拾い読み(2023/10)
*仕事で読んだ本のメモです。
新潟大学日本酒学センター編『日本酒学講義』(ミネルヴァ書房 2022年)序章 日本酒学への招待 鈴木一史・岸保行
・新潟大学で2018年にスタートした「日本酒学(Sakeology)」の取り組みについての紹介。日本酒学のコンセプトと設立の経緯について。
・日本酒学とは日本酒という限定された対象を領域横断的に(農学、工学、理学、経済学、経営学、人文学、社会学、法学、
本は静かに積み上がる(2023/10)
積ん読と云うのは、人の思わくに調子を合わせてそう云うだけの話で、自分で勿論積ん読でいいやなどと考えてはいない。すぐに読む気がなければ本を買ってはいけないと云うわけはない。すぐ読む積もりはないけれど、本屋に行って本を買って来ようと思う。
(以上、内田百閒「特別阿房列車」書き出しを元に。『第一阿房列車』(新潮文庫)参照)。
てな具合いの、百鬼園阿房列車マインドで、日々の本屋旅行&積ん読である。件
編集担当Xの拾い読み(2023/6)
*仕事で読んだ本のメモです
井上暁子編『東欧文学の多言語的トポス』(水声社 2020)
編者まえがき
科研基盤Bの助成を受けたシンポジウムの報告に加筆・修正を加えた論文集。「東欧」「中欧」「中東欧」について。作家たちによって「中間性」を強調する「中欧アイデンティティ」の試みと、商業的な「中欧」イメージ、難民の流入を背景にしたナショナリズムの高まり。多様性の価値観は失われつつある。東欧とその外部
本は静かに積み上がる(2023/6)
本を眠らせ、本の尾根に本ふりつむ。
いや、「尾根」という表現はこの部屋の実態を反映しておらず、本の山脈というよりも、本の群島がまずは起源的に形成され、それらが徐々に隆起して、初めは独立した島々と見えたものが結果的にひとつの高原(プラトー)として存在する状態。
ミル・プラトー(©ドゥルーズ&ガタリ)ならぬ、ヨム・プラトー。
簡潔に言うと、ほぼ読んでいない本が、床面積の大半を一定の高度で占拠し
編集担当Xの拾い読み(2023/5)
藤本大士『医学とキリスト教』(法政大学出版局 2021年)
序章 先行研究で包括的な研究がないので、医学史とミッション史両方の観点から、幕末ーアジア・太平洋戦争後までに来日したアメリカ人医療宣教師を教派にかかわらず宣教看護婦も含めて網羅的に取り上げる方法をとる。すごい。
1章 幕末期。シモンズみたいに宣教よりも医学の普及に関心があった宣教師もいたのは意外。
2章 1870年代。アメリカ人医療宣教
本は静かに積み上がる(2023/5)
読んだ本の紹介文を書けと言われたものの、こちとら筋金入りの積ん読派である。
買った本を報告するだけでよいというので引き受けてみた。
自己紹介は省略する。
本よりも、私という人物に興味があるという奇特な御仁は、2018年のこちらの記事 http://www.core-nt.co.jp/syoten_nav/archives/12493 をご参照いただきたい。
さて、買った本の報告である。
編集担当Xの拾い読み(2023/4)
*仕事で読んだ本のメモです
宮下遼『多元性の都市イスタンブル』(大阪大学出版会 2018年)
序章 イスタンブル人たちがイスタンブルがかつて「世界の中心」だったことを忘れられないでいる憂愁。
1章 イスタンブルという特別な都市へのアプローチについて文学資料の活用を提言。
2章 世界の中心近世イスタンブルの空想ツアー。ランドマークもショッピングも食事もするするイメージできて最高!地球の歩き方+歴
【開催レポート】“博士論文を本にするまで・本にしたあと”(2022/11/14 橋場典子オンライン講演会)
1. 博論概要紹介これまでの経緯
こんにちは、橋場典子と申します。
今日は北海道大学出版会から出していただいた『社会的排除と法システム』をきっかけにお話しさせていただくことになりました。この本は博士論文をベースとしているものですが、出版に至る過程でどういった苦労があったか、出版した前後でなにが変わったか等を中心に、後輩の皆さんに役立ちそうなことや、出版に関して悩んでいる方にとってポジティブなメ