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【終了しました】北大の先生が選んだ本(28) ヒグマ学と自然・文化の多様な世界(増田隆一先生)

三省堂書店札幌店様とのコラボレーションコーナー「北大の先生が選んだ本」が現在展開中です。テーマは「ヒグマ学と自然・文化の多様な世界」、選者は北海道大学大学院理学研究院教授の増田隆一先生です。本記事では、三省堂書店札幌店様にて配布中の選書リストを公開します。みなさまぜひ足をお運びください!
★三省堂書店札幌店様の紹介ページ:
「北大の先生が選んだ本」第28弾更新しました! | 三省堂書店 (books-sanseido.co.jp)
*「品切れ」などの在庫状況は2023年5月現在の情報です。

■選者紹介

増田隆一(ますだ りゅういち)
北海道大学大学院理学研究院教授
【専門】分子系統進化学、生物地理学

■選者の著作

01 増田隆一編著『ヒグマ学への招待:自然と文化で考える』北海道大学出版会、2020年

「ヒグマ学」とは、ヒグマを自然ととらえながら、その生態・生物地理、古来からの文化や儀礼の歴史、人間社会との共存を考える、学際的で独自の学問分野である。北海道から世界に発信する環境人文学ということもできる。ヒグマの生物学やヒグマに関する文化や歴史を研究対象にしてきた理系・文系の研究者が分担執筆している。本書は、北海道大学全学授業の中で人気の高い「ヒグマ学入門」の教科書にもなっている。
定価: 3,960 円(本体3,600 円+ 税)
ISBN : 978-4-8329-7415-9

02 増田隆一著『はじめての動物地理学:なぜ北海道にヒグマで、本州はツキノワグマなの?』岩波書店(岩波ジュニアスタートブックス)、2022年

「動物地理学」とは、身のまわりにいる動物が、いつ、どこからやってきたかを解き明かす分野である。副題のように、なぜ北海道にヒグマがいるのに対し、本州ではツキノワグマが分布しているのか? このような疑問から始まり、世界の大陸や島々に生息する動物たちの移動の歴史を解説する。都市動物や外来生物の問題点も考える。読者として想定する小学生から大人までのすべての方を、動物のはるかな移動の世界にいざなう。
定価: 1,595 円(本体1,450 円+ 税)
ISBN : 978-4-00-027247-6

03 増田隆一著『うんち学入門: 生き物にとって「排泄物」とは何か』講談社(ブルーバックス)、2021年

生き物の宿命は、食べること、そして「うんち」を排泄すること。その排泄物から生き物とは何かを考える。うんちの役割は、①生き物と進化の証となる、②個体間のコミュニケーションを担う、③種間の情報戦略と種の存続に
役立つ、④生態系での物質循環を担うこと。この課題について、うんち君ともうひとりの謎の登場人物が語り合いながら旅を続ける。旅の終わりには、ふたりが自信を取り戻す。その謎も解ける。
定価: 1,100 円(本体1,000 円+ 税)
ISBN:978-4-06-517014-4

04 増田隆一著『ユーラシア動物紀行』岩波書店(岩波新書)、2019年

動物地理学に取り組む著者は、日本列島の動物の起源や渡来ルートを明らかにするため、海外との共同研究を進めてきた。訪れたユーラシア大陸各地の大自然、人々の生活を紹介した紀行文として綴る。出発は北欧フィンランドのヘルシンキ、そして東へ、ボルガ川、ウラル山脈、シベリア、バイカル湖を経て、極東へ到達する。ヒグマやマンモスなど様々な動物にも出会う。動物地理学研究の世界へご招待する。
定価: 1,056 円(本体960 円+ 税)
ISBN : 978-4-00-431757-9

■選書リスト

01 増田隆一・阿部 永編著『動物地理の自然史: 分布と多様性の進化学』北海道大学出版会、2005年

従来の動物地理学は、各動物種の平面的な分布を記載する伝統的分野であったが、分子系統学と出会うことにより、移動の歴史や進化的関係を解明する系統地理学に発展した。また並行して、形態的特徴に基づく研究も進展している。本書は、哺乳類、爬虫類、両生類、寄生虫を対象に動物地理学研究に取り組む気鋭の15 名が共同執筆したものである。動物地理学をめざす学生・若手研究者、自然史に興味をもつ一般の方に贈る1 冊。
定価: 3,300 円(本体3,000 円+ 税)
ISBN : 978-4-8329-8101-0

02増田隆一著『哺乳類の生物地理学』東京大学出版会、2017年

著者が過去30 年程の間に取り組んできた哺乳類の生物地理学の研究成果を紹介し、研究の魅力と楽しさを語る。研究手法の紹介に始まり、日本列島の生物地理の特徴、北海道ヒグマの三重構造と渡来の歴史、イタチ科日本固有種ニホンイタチ・ニホンアナグマの系統進化と多様性、糞分析から探る動物のミクロな行動範囲、都市動物キタキツネ・外来種ハクビシンの生物地理学の成果を章ごとに紹介している。
定価: 4,180 円(本体3,800 円+ 税)
ISBN : 978-4-13-060252-5

03 増田隆一編著『日本の食肉類: 生態系の頂点に立つ哺乳類』東京大学出版会、2018年

日本列島に分布する食肉類には、最大のヒグマから最小のイイズナまで計13 種が含まれる。キツネやタヌキのように日本列島に広く分布する動物もいれば、西表島のみに生息するイリオモテヤマネコもいる。これらの動物と向き合ってきた気鋭の研究者たちが、その生態や研究の魅力を紹介する。北は北海道、南は西表島まで、多様な自然環境に生息する各食肉類について解説する本専門書は、日本で初めてのものである。
定価: 5,390 円(本体4,900 円+ 税)
ISBN : 978-4-13-060237-2

04 増田隆一・金子弥生編著『知られざる食肉目動物の多様な世界: 東欧と日本』中西出版、2022年

東欧ブルガリアとの国際共同研究の成果を中心として、10 名の研究者が分担執筆した。表紙の掲載写真は、ブルガリアでのキンイロジャッカル、ヨーロッパヤマネコ、アナグマ、キツネ、ムナジロテン、ヒグマ。黒海西岸・バルカン半島に位置するブルガリアには、ヨーロッパとアジア双方の動物相と豊かな生物多様性が見られる。多様な自然環境、伝統的なバラ祭り、トラキア文化などを紹介するカラーグラビアも満載。
定価: 3,300 円(本体3,000 円+ 税)
978-4-89115-416-5

05 チャールズ・ダーウィン著/八杉龍一訳『種の起源(上・下)』岩波文庫、1990年

「種の起源」は、進化学の発展の原点である。動物地理学においても、進化の概念が根底に流れる。本書の中で、ダーウィンは、集団中の突然変異が長い世代をかけて自然選択され進化が生み出されたと考える。その説明のひとつとして、家畜や家禽の品種の多様性が、人による人為選択によってもたらされたことをあげている。この古典をあらためて読むことにより、そこにある斬新な考え方を学ぶことができる。
【上】定価: 1,243 円(本体1,130 円+ 税)
ISBN : 978-4-00-339124-2
【下】定価: 1,166 円(本体1,060 円+ 税)
ISBN : 978-4-00-339125-9

06 宮田 隆著『分子からみた生物進化:DNA が明かす生物の歴史』講談社(ブルーバックス)、2014年

私が動物地理学研究を開始した頃に入門書として読んだ『分子進化学への招待』(宮田隆著: 講談社ブルーバックス、1994 年)が全面改訂されたものである。分子進化学とは、分子レベルから進化学を探求する分野。
本書では、分子進化の基礎、研究最前線、今後の展望が語られている。さらに現在では、技術革新も加わり、全ゲノム解析による各生物の進化および種間の系統進化の研究が進展している。
定価: 1,430 円(本体1,300 円+ 税)
ISBN : 978-4-06-257849-3

07 オズワルド・シュミッツ著/日浦 勉訳『人新世の科学:ニュー・エコロジーがひらく地平』岩波書店(岩波新書)、2022年

「人新世」とは、人間活動によって地球全体が大きく影響される「人間の時代」という地質時代を示す新しい言葉である。著者は、持続可能な地球環境を維持するためには、人間と自然が互いに絡み合って依存する「社会−生態システム」を再認識する必要があると考える。この思考は、本書の副題でもある「ニュー・エコロジー」ともよばれる。さらに、これはSDGs (持続可能な開発目標) を考えた人間地球系にも結びつく。
定価: 968 円(本体880 円+ 税)
ISBN : 978-4-00-431922-1

08 萱野 茂著『アイヌと神々の物語: 炉端で聞いたウウェペケレ』山と溪谷社(ヤマケイ文庫)、2020年

著者がアイヌの古老から収集したウエペケレ(昔話) 38 編がまとめられている。本来、アイヌ語で語られる昔話であるが、本書では和文で記されている。教訓的な話が含まれ、子供だけでなく大人が読んでも心温まるとともに、古来の生活の様子やクマ送り儀礼を含むアイヌ文化の世界観に知らず知らずのうちに触れることができる。各話の終わりには解説があり、語り手の紹介、話の背景、話の中に出てきた民具について説明されている。
定価: 1,210 円(本体1,100 円+ 税)
ISBN : 978-4-635-04878-1

09 語り手・姉崎等/聞き書き・片山龍峯『クマにあったらどうするか: アイヌ民族最後の狩人 姉崎等』筑摩書房(ちくま文庫)、2014年

作家の片山氏が、北海道で65 年間の狩猟人生を送った姉崎氏にヒグマ猟についてインタビューした記録をまとめたものである。ヒグマの生態を知り尽くした姉崎氏の「クマは私のお師匠さん」、「クマは人間を観察している」という言葉には重みがある。物理的にも精神的にもヒグマに近づいた姉崎氏の考えを綴った本書は一読の価値がある。もちろん、本のタイトルであるクマに出会った時の対処法も述べられている。
定価: 924 円(本体840 円+ 税)
ISBN : 978-4-480-43148-6

10 西村武重著『ヒグマとの戦い: ある老狩人の手記』山と溪谷社(ヤマケイ文庫)、2021年

大正から昭和にかけて北海道東部(道東)を中心に活躍したヒグマ狩人の回想記である。森林の中でヒグマを追い、狩猟する状況を描いた場面は読んでいても緊張するものだ。アイヌ民族の古老からの教えや交流も描かれ
ている。また、当時の道東やエトロフ島の自然環境やそこに生息する動植物、さらに人の生活についても述べられていることは大変興味深い。
定価: 990 円(本体900 円+ 税)
ISBN : 978-4-635-04918-4

11 ベルント・ブルンナー著/伊達 淳訳『熊:人類との「共存」の歴史』白水社、2010年

ヒグマは人の精神や文化に深く入り込んだ動物である。地域や時代が変わってもそれは継続される。著者は、ヨーロッパとその他の地域から見たヒグマと人の関係を親しみと畏敬の歴史に基づいて語っている。ヒグマの分布域には人に類似した霊長類がいないという指摘は新鮮である。北海道のヒグマの文化やヒグマ学を考えるうえでも大いに参考になる。
定価: 2,640 円(本体2,400 円+ 税)
ISBN : 978-4-560-08085-6

12 デイヴィッド・ロックウェル著/小林正佳訳『クマとアメリカ・インディアンの暮らし』どうぶつ社、2001年【品切】

ヒグマは、ユーラシアだけでなく、北米にも分布している。本書は、北米先住民とヒグマの文化的関係について、文化人類学的な側面から紹介している。北米においても、ヒグマは精神的に人の心に深く入り込む存在である。比較として、アイヌ民族のクマ送りを含め、ユーラシアのクマ儀礼についても語られている。果たして、北米とユーラシアとの間でクマ文化の共通性は見られるのか。この課題は極めて興味深い。
定価: 3,080 円(本体2,800 円+ 税)
ISBN : 978-4-88622-313-5

13 中沢新一著『熊から王へ』講談社(講談社選書メチエ)、2002年 【品切】

人間と動物の関係、文化と自然の関係を世界の神話を中心に考察している。本書は、東北地方の大学での講義内容がまとめられており、「東北」という地域性も話の根底に流れている。文化(人間) は、本来、自然(動物) との対照的な関係のもとで初めて意味があると説く。北米とユーラシアにおけるヒグマを含む動物儀礼の歴史、シャーマンの役割など文化人類学的な考察は、ヒグマ学を学ぶ私には新しい刺激となっている。
定価: 1,870 円(本体1,700 円+ 税)
ISBN : 978-4-06-258239-1

14 河合隼雄著『無意識の構造(改版)』中央公論新社(中公新書)、2017年

著者は、心理学者ユングが考える人間の無意識の構造について普及啓蒙すると同時に、著者独自の考えを述べている。臨床心理学者である著者は、臨床経験や知見に基づき、日本人の心や日本文化を考察した。意識の下層には、個人的無意識と普遍的無意識が存在するという。本書により、私自身、生物学とは異なる視点から、文化の多様性について考えるきっかけとなった。
※改版 定価: 770 円(本体700 円+ 税)
ISBN : 978-4-12-180481-5

15 榎本武揚著『榎本武揚シベリア日記』講談社(講談社学術文庫)、2008年【品切】

榎本武揚は、明治初期にロシア公使となり、帰国時にはサンクトペテルブルクからシベリア経由の陸路をとった。馬車や汽船での2 か月の旅であったが、その間に見聞した出来事や経験を記したのが『シベリア日記』である。『現代語訳 榎本武揚シベリア日記』(諏訪部揚子・中村喜和編注: 平凡
社、2010 年) も出版されている。当時の状況は、現在のシベリアと相通じるところがあり、私にとって興味深い紀行書である。
定価: 1,265 円(本体1,150 円+ 税)
ISBN : 978-4-06-159877-5

16  桂川甫周著/亀井高孝校訂『北槎聞略: 大黒屋光太夫ロシア漂流記』岩波書店(岩波文庫)、1990年

江戸時代1782 年12 月から7か月間漂流し、アリューシャン列島に漂着した大黒屋光太夫一行は、苦難の末、カムチャツカからサンクトペテルブルクの間を約10 年かけて往復し、日本への帰国を果たす。ロシアで見聞した生活習慣・制度・ロシア語などについて、蘭学者・桂川甫周が聞き取りを行った記録である。光太夫一行に助力したキリル・ラックスマンの存在も忘れられない。当時のロシアを知ることができる貴重な1 冊。
定価: 1,320 円(本体1,200 円+ 税)
ISBN : 978-4-00-334561-0

17 イザベラ・バード著/高梨健吉訳『日本奥地紀行』平凡社(平凡社ライブラリー)、2000年

著者はイギリスの旅行家で、1878 年(明治11 年) 47 歳で単身日本を訪問し、各地を旅行した時の記録である。旅で見聞した日本の生活風習や感想を語り、スケッチも掲載されている。北海道では、函館に渡った後、森、室蘭、白老、平取などを訪問した。明治初期の北海道の様子がうかがえる。アイヌ民族の村では、飼育されていたヒグマにも出会っている。
定価: 1,650 円(本体1,500 円+ 税)
ISBN : 978-4-582-76329-4

18 アルセーニエフ作/パヴリーシン絵/岡田和也訳『森の人: デルス・ウザラー』(絵本) 群像社、2006年

100 年以上前の極東沿海地方を探検した、隊長アルセーニエフと猟師デルス・ウザラーとの心のきずなや自然への深い世界観を描いた絵本である。この実話として探検紀行『デルスウ・ウザーラ: 沿海州探検行』(アルセーニエフ著/長谷川四郎訳: 平凡社〈東洋文庫〉、1965 年) がある。絵本も著書でも、沿海地方の自然豊かな森の中を探検する情景が生き生きと描かれている。トラ、クズリ、クロテンなど多くの動物が登場する。
定価: 2,200 円(本体2,000 円+ 税)
ISBN : 978-4-905821-28-1

19 マルコ・ポーロ著/愛宕松男訳注『東方見聞録(1 ・2)』平凡社(平凡社ライブラリー)、2000年

13 世紀ヴェネツィアを出発し中央アジアを経て元朝フビライ・ハーンに仕え、24 年後に帰国した。その間に訪れたユーラシア大陸の様々な地の宗教や風習を詳細に伝えている。後のスウェーデン探検家スウェン・ヘディンは、東方見聞録に記された中央アジアの正確な地理情報に驚いたという。私も、シルクロードの動物調査に参加する前には本書を再度読み返した。現在でも新鮮で魅力的な旅行記である。
【1】定価:1,430 円(本体1,300 円+ 税)
ISBN : 978-4-582-76326-3
【品切】【2】定価:1,430 円(本体1,300 円+ 税)
ISBN : 978-4-582-76327-0

20  ヘディン著/福田宏年訳『さまよえる湖(上・下)』岩波書店(岩波文庫)、1990年

私の高校時代の英語教科書に、本書英語版の一部が掲載されていた。スウェーデンの探検家スウェン・へディンは、タリム盆地のロプノール湖が長い年月をかけて周期的に移動することを実証する旅に出る。本書には、探検中に訪れたシルクロードの自然環境や人々の暮らしも記されている。私自身、動物調査のため、タクラマカン砂漠、タリム川、オアシスの街々を訪れ、ヘディンが記した自然や人々の生活を垣間見ることができた。
【上】定価: 792 円(本体720 円+ 税)
ISBN : 978-4-00-334523-8
【下】定価: 858 円(本体780 円+ 税)
ISBN : 978-4-00-334524-5

21 斎藤 孝著『読書力』岩波書店(岩波新書)、2002年

読書の重要性はあえていうまでもない。著者は、「読書力」の基準は文庫100 冊新書100 冊を読むことにあると説く。読書力があるということは、読書習慣につながる。限られた人生において、いかに様々なことに出会い、
心豊かな時間をもつか? その方法のひとつが読書であろう。自身が訪れたこともない場所で新しい経験ができることは、読書の醍醐味である。私も文庫新書各100 冊の読書をめざそう。
定価: 924 円(本体840 円+ 税)
ISBN : 978-4-00-430801-0

22 藤沢晃治著『「分かりやすい表現」の技術: 意図を正しく伝えるための16のルール』講談社(ブルーバックス)、1999年

相手に伝えたいことを十分わかってもらうためには、その受け手におもてなしの心をもて。受け手のプロフィールを設定せよ。著者によるこれらの言葉は、授業や講演を準備する際の心構え、パワーポイントや配布資料の作成のし方、話し方にも大いに参考になる。同著者のシリーズ本『「分かりやすい教え方」の技術』、『「分かりやすい説明」の技術』(ともに講談社ブルーバックス) もお勧めである。
定価: 880 円(本体800 円+ 税)
ISBN : 978-4-06-257245-3

23 木下是雄著『理科系の作文技術』中央公論社(中公新書)、1981年

私は、大学生時に初版をそのタイトルにも惹かれて購入した。現在も重版が続いているが、それには納得がいく。著者は物理学者だが、短い例文について、理由とともに校正内容を解説する形式は、生物系の学生であった私にも大変わかりやすく、レポートや論文を書く際に大変役立ったことを覚えている。著者の講義を聞きながら、論理的な文章を書く技術が自然と身につく文系の学生さんにも参考になるだろう。
定価: 770 円(本体700 円+ 税)
ISBN : 978-4-12-100624-0

24 長谷川修司著『研究者としてうまくやっていくには: 組織の力を研究に活かす』講談社(ブルーバックス)、2015年

研究者をめざす学生や若手研究者を対象に、大学、大学院、ポスドク、助教、准教授、教授など、各時期にどのような心構えで研究生活を進めるべきかについて、著者自身の経験に基づき具体的に語られている。私と同年代の著者は物理学教授で、研究分野こそ異なるが、本書の内容は、私が考えていることとピタリと一致し、大いに納得した。理系・文系を問わず、若手研究者および研究者をめざす学生さんに必読の書である。
定価: 1,100 円(本体1,000 円+ 税)
ISBN : 978-4-06-257951-3

25 丸山真男著『日本の思想』岩波書店(岩波新書)、1961年

哲学的タイトルに惹かれ本書を手にとった。読み始めると、第1 章から難解だ。政治学とはこのように難しいものか。その後の第4 章「である」ことと「する」こと、に入って内容がわかったような気になった。私なりの理解では、「である」ことは消極的行動、それに対し「する」ことは積極的行動であり、その二面性を把握することの重要性を感じた。しかし、今もって第1 章と第2 章は私には難解であり、今後の課題としたい。
定価: 924 円(本体840 円+ 税)
ISBN : 978-4-00-412039-1

26 司馬遼太郎・ドナルド・キーン対談『日本人と日本文化』中央公論社(中公文庫)、1984年

歴史作家・司馬氏と日本文学者・キーン氏の対談形式で、日本文化の特徴や外国文化との関係が熱く語られている。日本から見た外国文化、外国から見た日本文化、そして国内から見た日本文化、が浮き彫りにされていて、私にとって新鮮な見方であった。シーボルトを始め幕末に日本を訪れた外国人の話題や江戸文化の話にも花が咲く。いつの間にか、二人の対談の場にいるような感じになる。
定価: 770 円(本体700 円+ 税)
ISBN : 978-4-12-202664-3

27 青木 保著『異文化理解』岩波書店(岩波新書)、2001年

文化人類学者としてタイの僧修行の体験も交えながら、異文化を理解することの意義は、自分たちにないものを発見し、なぜ自分たちにはないのだろうかとあらためて考えること、また、異文化には自分たちとは異なる時間が
あることを発見することにあると説く。それにより、物事の見方が硬直せず、緊張した心が穏やかに豊かになる。そして、自分たちが生
きる意味も、異文化・自文化を捉え直す過程で見出されると考える。
定価: 924 円(本体840 円+ 税)
ISBN : 978-4-00-430740-2

28 会田雄次著『アーロン収容所: 西欧ヒューマニズムの限界(改版)』中央公論新社(中公新書)、2018年

高校時代、倫理社会の先生が自身の終戦体験を語りながら、本書を紹介してくださった。大学生になり思い出して読み、40 年以上経た今でも読み返す時がある。西洋史研究者の著者が若き頃、第2 次大戦のビルマ(現ミャンマー) 戦線に送られ、イギリス軍の捕虜として収容所で送った異常な体験を歴史学者の視点から明快に描く。一方、ミャンマー
において、なぜ日本とイギリスが戦うことになったのか? これを考えることも重要だ。
定価: 858 円(本体780 円+ 税)
ISBN : 978-4-12-180003-9

29 マルクス・アウレーリウス著/神谷美恵子訳『マルクス・アウレーリウス 自省録』岩波書店(岩波文庫)、2007年

偶然にもテレビ番組(100 分de 名著) で「マルクス・アウレリウス『自省録』2019 年4 月」(岸見一郎著: NHK 出版、2019 年) を知り、本書とともに読んでみた。約2 千年前の第16 代ローマ皇帝が、日々の生活の中で思い
悩み自身を見つめて記された手記が「自省録」である。そこには、政治的な内容ではなく、今をいかに生きることが重要かを考える哲学があった。この1 冊との出会いにより、私自身何度も勇気づけられている。
定価: 946 円(本体860 円+ 税)
ISBN : 978-4-00-336101-6

30 山本太郎著『感染症と文明: 共生への道』岩波書店(岩波新書)、2011年

この4 年間、新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的流行) によって、私たちは大いに苦しめられている。いかにして感染症を予防、治療すべきか? その共存の道はあるのか? 本書は新型コロナ禍が始まる以前に出版されたものであるが、国際的に様々な感染症対策に取り組んできた著者が、歴史、疫学、生態学の視点から感染症への対処とその共存の行方を語っている。新型コロナ禍の今後を考える上でも大いに参考になる。
定価: 792 円(本体720 円+ 税)
ISBN : 978-4-00-431314-4