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2021

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#フォトポエム

我が家の守り神

我が家の守り神

お日様が長めの夏休みをとっていたから

帳尻合わせの残暑 蒸し風呂のような熱帯夜

ぬるま湯に浸かろうと風呂場に向かうと

洗濯機の白壁に張り付いたのは家守殿

突然の蛍光灯に右往左往

物陰にすすすとお隠れになる

我が家を守っていただくお方ゆえ

ずっと家内にいていただいても構わぬが

洗濯機の中にお隠れになると

渦潮に巻かれる恐れがござる

くれぐれもご注意召されませ

走り梅雨

走り梅雨

あまりにも早い走り梅雨に降り込められて家の中

気になるのは畑の様子 やりかけのあれやこれや

植え付けたばかりの苗 適期を迎えた青菜たち

窓を叩く横殴りの雨 轟々と鳴る森の樹々

強い風を受け流して太い幹までもが右に左に大きくしなる

耐えかねたのか枝葉がひとかたまりドサリと落ちてくる

恵みの雨も晴耕雨読も程度の問題

まだまだ五月だ梅雨には早い

今少し皐月の澄んだ青空を

我がはらからに

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春の夜の侵入者

春の夜の侵入者

湯船にお湯を張ろうとしたら

ステンレスの浴槽に大きな百足

一体どこから侵入したのか

六寸ほどある立派な躯体

驚いたのはおたがいさまで

登れぬ壁面に四苦八苦

行き場を失い右往左往

森の古家に住むということは

こんなことにも慣れること

慌てず騒がず軍手をはめて

そっと掴んで窓から放る

あくまでこちらが新参者

したてにそして丁寧に

ついでにひとつお願いです

お互いびっくりしま

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ゴージャスな収穫祭

ゴージャスな収穫祭

ゴールデンなウィークだということで

ちょっとゴージャスな若菜の収穫祭

順調に育った小蕪、小松菜、ほうれん草

ここまでこればそれぞれの個性がくっきり

素材の味を楽しみながらいただきます。

ワインもステーキも生ハムも

今宵は脇役に追いやって。

ああ、うまし。

幸せ。感謝。

そしてもう一杯。

くじら雲

くじら雲

新しいクルマのCMソングの軽快なリズム

「連れてって どこまでも」とリフレイン

強い風が木々をひらりと大きく揺らして

緑の葉陰に世界がさらりと見え隠れする

わずかな隙間がさあっと広がった瞬間

突然現れたくじら雲 ふわりと浮かんで

五月の澄み渡った空を悠然と泳いでいく

流れる曲が風のように心地よく響いてる

どこにいたの どこにいくの

連れてって どこまでも

森の黒子・クロジ

森の黒子・クロジ

森の入り口に開店した小鳥のレストランは

連日たくさんの小鳥たちが訪れて

品切れ続出の人気ぶり

この度新しいお客さまが仲間入りされました

スズメ目スズメ亜目ホオジロ科ホオジロ属の

クロジくん(多分オス)です

グーグル先生によれば

警戒心が大変強く、薄暗い場所にお住まいで

なかなか出会うことのない鳥のようです

マナーのなってないスズメたちが食い散らかして

餌台の周りに落ちている雑穀

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ダマシに注意

ダマシに注意

こやつ、かわいいてんとう虫と思って

見逃してやってはいけません。

ニジュウヤホシテントウ又の名をテントウムシダマシ。

テントウムシのふりをして、

実はジャガイモやナスの葉を食い荒らす

とんでもなく繁殖力旺盛なやつなので

見つけたら躊躇なく駆除せねばです。

雑草という草がないのと同じで

害虫という虫もいませんが、

好ましくない草虫は存在します。

それでもそこは武士の情け。

液剤

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間引き菜の収穫祭

間引き菜の収穫祭

筋蒔きした種から育った小松菜、小蕪、ほうれん草。

大きく育てるために一定幅で間引きます。

ちょっともったいない気もするけれど、

そこはこころを鬼にして選抜。

ひっこ抜いた若菜だって決して無駄にはいたしません。

鮮度抜群、食感抜群のベビーリーフ。

泥をしっかりと洗い流して

根も葉もそのままこんもり盛りつけて

ビールとくるみパンと一緒にいただけば

今年最初の収穫祭。

ああうまし。

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ある日の夕景

ある日の夕景

畑仕事の帰り道 

小高い丘の上から

見下ろす小さなまち

西に傾いた太陽

キラキラと照る川面

山山の緑とあかねの空

小鳥の囀りとキジのひと鳴き

汚れた軍手に今日の余韻

心地よい疲れと喉の渇き

風呂に入ってさっぱりしたら

美味しいビールが待っている

ああ、今日も一日頑張った

明日もきっといい日だろうよ

こもれび

こもれび

かおる風に吹かれて木々の若葉が揺れておどる

さわさわと音を立てながら森の香を漂わせる

冬枯れの日にはたっぷりと陽光に包まれた庭先が

今は繁る若葉の葉陰でこもれびがゆらゆらと遊ぶ

枝から枝へ小鳥たちのせわしない声が鳴き渡る

目も耳も鼻も肌も舌までも。五感のすべてで森を感じる。

芽吹いた萌え木は濃い緑の繁る葉へ。

名残りも戸惑いも後悔も置き去りにして

季節はもう、春から初夏へと動いてい

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新緑の富士山

新緑の富士山

富士山を見ると何故か敬語になってしまう

強い風のおかげで霞が晴れて

くっきりとあらわれた稜線の

なんともお美しいそのお姿に

ぽっかりと浮かぶ綿雲さえも優雅に見えて

まだ山裾までたっぷりと湛えた純白の雪が

麓の山々が織りなすとりどりの緑を

ひとつひとつ取り上げて褒め称えるようで

あなたが今日もそこにいてくれてよかったと

ただそれだけで本当によかったと

心の底から思える今日の幸せ

小鳥の食卓

小鳥の食卓

新緑の森に続く小さな庭の片隅に

小鳥の餌台を作ってみた

いたずら半分、本気半分

初めの数日は誰も寄り付かず

さもありなんと思ったが

メニューをちょっと変えたら

急に顧客が増えてきた

コガラ、ヤマガラ、スズメ、ヒヨドリ

今では入れ替わり立ち替わり

森の入り口の人気店

その場でついばむ子もいれば

お持ち帰り専門の鳥もいて

だんだん個性も見えてくる

森と庭とわたしの境がとけて

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ニリンソウ

ニリンソウ

三国にまたがる 軍神の社

奥の院に向かう 険し参道

楚々と咲いた ニリンソウ

親指の先ほどの 小さな花

真白な花びら 黄色のしべ

詣でる人の こころを癒す

見上げる 萌色のトンネル

響く囀りと 沢水の冴え音

薫風が 若い葉をくすぐる

歩を緩めて 手足を伸ばす

生まれたての 緑が放った

生まれたての 冷たい空気

細胞の隅々に 沁みわたる

下界に降れば あれこれと

やんごと

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清明の候、新緑の紅葉

清明の候、新緑の紅葉

先走った暖かさが続いて

いつもより早く深さを増した紅葉の新緑

半月前まで見えた萌黄越しの遠景は

今はもうすっかりと緑陰に隠れて

枝先に遊ぶ小鳥の声を響かせる

華やいだ空気も今日はひとやすみ

朝からしとと降る静かな雨が

清らかで明るい木々の若葉を

寿ぐように降り注ぐ

春の日は雨もまたよし