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小説

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#ショートショート

シソハムチーズトースト

シソハムチーズトースト

食パンにマヨネーズを塗る。その上にハムを乗っけて、シソの葉を1枚そっと乗せる。仕上げにとろけるスライスチーズを乗せてトーストする。
これで完成、シソハムチーズトースト。ポイントはシソの葉だ。コッテリとしたマヨネーズとチーズの間にシソの爽やかな香りがこんにちはする。
これが僕のお気に入りの朝ごはん。

このレシピは彼女の夏野れいが生み出したものだった。

はじめてれいの家に泊まった朝、れいはシソハム

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五月病で中二病

五月病で中二病

「先生、最近このままでいいのかと不安で夜も眠れません。自分が成長できていない気がして、焦りと不安でいっぱいです」

「おそらく五月病ですね、ストレスを溜め込まないようにしましょう。といっても火花さんには難しいかな。一応お薬用意しておきますね」

先生はそう言ってQueenのCDを渡した。

「五月病!?先生、五月病は治るのですか?」

「火花さんの場合、おそらく5月が終われば治るでしょう。五月限定

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こどもの日

こどもの日

「今日でGW終わりだな」

「ごめん俺明日も休み」

「うざ。終われよ。てか今日って何の日か知ってる?」

「5月5日だろ?そしたら郷ひろみの日か」

「なんだよ郷ひろみの日って。聞いたことねえよ。何すんだよ郷ひろみの日」

「そりゃ各ご家庭で二億四千万の瞳を歌うんじゃん?」

「じゃあ一人暮らしの俺たちはどうすんだよ」

「リモート帰省して歌うんだよ。今の時代は」

「あー嫌な時代に生まれちゃっ

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片道切符

「ねえ、俺たちはこの片道切符握りしめてどこへ向かってると思う?」

「地獄」

真っ赤なルージュのカレンは嬉しそうに答える。

そして、僕たちは闇夜に優しく佇む三日月に向かって乾杯した。

アーモンド

アーモンド

僕はアーモンド。

桜の花に似ているのに、みんなが綺麗だというのは桜ばかり。

桜より早く咲くのに、桜まだ開花しないねってみんなの頭の中は桜のことばかり。

学校近くの公園に咲くアーモンドをブランコに揺られながら見つめる。桜によく似ていて綺麗なのに、僕らはどうして桜ばかり追いかけるのだろう。

「俺はアーモンド好きだな。だってさ、アーモンドチョコレートうまいもん」

靴を飛ばしながらそう言

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【短編集】beautiful mess

【短編集】beautiful mess

beautiful mess

金木犀と線香花火

人間は運命や奇跡という言葉が好きだ。現実に起きた自分にとって都合のいい出来事を、全て運命と奇跡にするのだ。そして僕もまたそういう人間だった。

八月が終わり、空が少し高くなった気がする九月の初旬。もう夏も終わってしまったのかと言わんばかりのこの世界の雰囲気。アブラゼミが最期の力を振り絞り命の音を鳴らしている。

「翔、もう夏も終わりだな。」

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