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#7 まずは日本で売るんだからさ…
昔からアンソロジーというものが苦手だ。
目的の作家のたかが1,2篇のために、残り300数ページのペラ紙を本屋から売りつけられる。
たいがい元から興味のあるジャンルを買うので、そこで収録される知らない作家というのはおおよそ業界で目立ってないわけである。つまるところ実力不足の水増し枠…はっきり言えば、読者目線から見るとハズレだ。
よしんば作家を発掘しても、次回作もどうせまたアンソロジーである
#6 そも、文字は読まれるものじゃね?
プロットコンテストの結果発表が延期ということで、出すアテのない推敲をつらつらと重ねるのもつまらなく、こちらの賞にも参加することにした。
べつに人に見せられるほど彩りのある毎日を送っているわけではないが、日記ぐらいなら帳簿のついでに付けているので、出すだけならカロリーゼロ、あわよくば今晩のメシにひと品足せる程度の賞金(というか掲載料)も稼げる。出し得というやつである。
日記は、読んだ資料の
【小説】濡翼のヴィジリア【第九話】
リゾートホテルのロビーでは声楽のコンサートが開かれていた。
パーティの演目らしい。晩餐を終えた外交官がボルドーの注がれたグラスを片手に細君と談笑している。その横で文官たちが分厚い手帳を繰ってスケジュールを確認していた。
ウィルドが電話を借りて部屋にかけるあいだに歌の旋律が変わってタ、タ、タとテノールパートが繰り返し始める。アカペラにしてはおちゃらけてやがると思いつつ横目でうかがうと、カフェ
#5 旨いプリンを旨いラーメンに入れようぜという話
新規のレーベルがプロットコンテストを開くという。色々とレーベル側に不安要素は多いものの、この9月までの新人賞閑散期にただ文字を並べた習作で自己満足するのもつまらないので、久々のラノベで参加してみた。
たまにはハンドルネーム通りニッチ層でも攻めてみるかと募集欄にあったゾンビを題材に取ったが、困ったのが先人の不足っぷり。
基本的にゾンビ物の小説って流行らないんですかね。小説版のワールドウォーZ
#4 新作構想という体の小休止
どうも最近の学校では読書感想文に”新書”を指定するところがあるそうで、やはりと言うか、普段から本の山で寝泊まりしているのを買われて適うものを頼まれた。
昔から自分の体感では新書の打率は2割だ。1万程度JPYをつぎ込んで2冊壁に叩きつけずに済んだらオーライの代物で、アタリを探せとはなかなか先生も酷なことを仰るとは思うが、とりあえず直近2ヶ月のものではブルーバックスで良い本があったので、簡単なレク
【小説】濡翼のヴィジリア【第八話】
レンガ造りの総督府にはまだ聖ゲオルギウスのイコンが飾ってあった。
スラヴァからひと月も経つのに、片付けていないらしい。クリスチャンだらけのここでは、おそらく次の聖ヴァイタスの日になるまで誰も気付かないのだろう。
二階の廊下を通るとき、鉄道局員が執政室から出てきた。目の下に深い隈のある男で、ウィルドを見ると軽く帽子に手を添えてくる。
「また線路でも爆破されたのかね」
声をかけると驚いた様子
#3 ジャンルって書く側の役に立ってるか?
別名義でmonogataryに投稿した短編だったが、転載規約が特に無かったので、こちらでも載せた。要は記事数の水増しね。
中の人含めて架空のヴァーチャルアーティストの立ち上げ企画ということで、つまるところヤマハの初音ミクやギブスンのidoruをもういっちょ再解釈して作ってやるぜということらしい。
で、例によって例のごとく他の応募作を見ると、どうもSFテイストの強いもののウケが良く見受けられ
【小説】あるいは落ちる木の葉の不確実性
文庫小説、三〇〇キロバイト。
読み切りコミック、六〇〇メガバイト。
楽曲ワントラック、四〇メガバイト。
二〇二三年の全世界、一五〇ゼタバイト。
ときおり、きみは開いた手を見つめる。
無数のポリゴンとテクスチャでくるまれたIKボーンの構造物。
押せばたわみ、引っ張ればコンストレイントいっぱいまで伸びる肌は、観測できる限りでは非常に"リアル"だ。うまい具合にディフォルメしている、と思
【小説】濡翼のヴィジリア【第七話】
玄関に放られた朝刊には、一面に劇場の事件が載っていた。
拾い上げてぱらぱらとめくる。
急いで作った記事らしく版画は無かった。読み進めて、死んでいた支配人の名前がアレクサンダルというのを初めて知った。ただし犯人は筋骨隆々の男になっており、「法院のベテラン審問官」が事件現場で負傷したらしいと書いてある。
「それ、終わったら貰っていいかい?」
ウィルドがドアを閉めようとすると、毛むくじゃらの手