【小説】濡翼のヴィジリア【第三話】
あんなに夜を徹したというのに、朝になると自然に目が覚めるのは、仙鳥としての習性なのかもしれない。あるいは従軍時代の習慣か。
あれだけ耳障りだったラッパの音が、ときおり恋しくなる。
レナータはまだ眠っているようだった。
霧で煙った町並みを横目に、ドアの前に置かれた新聞を手に取る。第一面には頬まで裂けた口で悲鳴を上げる娼婦と、ナイフを振りかぶる暴漢の版画が刷ってあった。
「資本主義だねえ」
新聞版画というものはひどくコストがかさむものだ。それだけの価値が『突き刺し魔』