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【小説】濡翼のヴィジリア

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ダークファンタジー・サスペンス。"カーニバル・ロウ"と"The Raven"の影響をバチクソに受けて書いたので、だいぶ史実ネタが怪しいことになっている。 参考資料で作ったほうれん…
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記事一覧

【小説】濡翼のヴィジリア【第九話】

 リゾートホテルのロビーでは声楽のコンサートが開かれていた。  パーティの演目らしい。晩…

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【小説】濡翼のヴィジリア【第八話】

 レンガ造りの総督府にはまだ聖ゲオルギウスのイコンが飾ってあった。  スラヴァからひと月…

【小説】濡翼のヴィジリア【第七話】

 玄関に放られた朝刊には、一面に劇場の事件が載っていた。  拾い上げてぱらぱらとめくる。 …

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【小説】濡翼のヴィジリア【第六話】

 法院に遣いを送ったところ、半刻ほどで判事がやってきた。  頬の脂をハンカチに吸わせる彼…

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【小説】濡翼のヴィジリア【第五話】

 違法就労、営業法違反、賃貸料の滞納。  資料に並ぶ文字からは想像もできないほど、劇場の…

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【小説】濡翼のヴィジリア【第四話】

 解剖室の遮光窓にはべったりとタバコのヤニが付いていた。  ウィルドがノックをする前にド…

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【小説】濡翼のヴィジリア【第三話】

 あんなに夜を徹したというのに、朝になると自然に目が覚めるのは、仙鳥としての習性なのかもしれない。あるいは従軍時代の習慣か。  あれだけ耳障りだったラッパの音が、ときおり恋しくなる。  レナータはまだ眠っているようだった。  霧で煙った町並みを横目に、ドアの前に置かれた新聞を手に取る。第一面には頬まで裂けた口で悲鳴を上げる娼婦と、ナイフを振りかぶる暴漢の版画が刷ってあった。 「資本主義だねえ」  新聞版画というものはひどくコストがかさむものだ。それだけの価値が『突き刺し魔』

【小説】濡翼のヴィジリア【第二話】

 下宿先のアパルトマンに戻ると、戸口に浮浪者の少年がたむろしていた。  きっと移民の息子…

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【小説】濡翼のヴィジリア【第一話】

『焼けた鉄と、河原の石のような濡れた匂い』と法院では教えている。  生き物の壊れ方はどれ…

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