フォローしませんか?
シェア
綾部まと
2023年3月1日 09:48
住みたい場所が選べるなんて、考えもしなかった。今までの自らが住む場所を選んだ経験は、皆無に近い。高校卒業まで親と暮らし、大学進学とともに上京。新卒で就職した銀行では、女子寮に入っていた。結婚とともに追い出されたが、夫の勤務先が近い場所に住むことになった。夫は職業柄、職場のすぐ近くに住む必要があったからだ。そのまま出産し、ネズミのようにポコポコと2歳差で3人が生まれた。都内のマン
2023年3月3日 09:12
一月に「今年こそは」と近所のスポーツジム、Kクラブへ入会した。三月を迎えた今、ジムへは週三程度で足を運んでいる。こう書くと「あ、自慢ね」「ジム、語学? よくいる意識高い系か」と思われるかもしれないが、安心して欲しい。ジムの利用は大浴場とサウナのみ。筋トレエリアには近づいていない。筋トレのマシンは、初心者の私にとって使い方が難しかった。トレーナーさんに声をかければ良いのだろうが、面倒
2023年3月15日 19:41
好きな店を聞かれて、いつも愕然とする。三十三年の人生で、今まで散々食べ歩いてきたくせに、どこも思い浮かばない。 現在、住んでいる東京は『世界中の食を堪能できる街』と言われる。確かにイタリアン、フレンチ、中華、変わり種ではベトナム料理やブルガリア料理まで、何でもそろう。そんな東京での生活が十二年目を迎え、他に世界二十五か国も旅してきた。しかし、記憶に残る店がないのだ。 これではnoteはお
2023年3月29日 11:35
「家出してきた」と祖母の家に乗り込んだのは、二月の終わり。暦は春に移ろうとしていたが、高校三年生の私にはその気配がまるでなかった。「あれ、来たのかね」「うん。ばあちゃん、元気そうだね」 そう。七十を過ぎ、青白い、太った女性にしては。「ママが、こんなのよこしてきた」 玄関で立ちすくむ祖母に、私は靴も脱がずに手紙を押し付けた。「『大学受験、ほぼ全滅ね。残るは国立後期。同級生との再会が後ろ