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【将棋】将棋AIは何手先まで読めるのか単純計算をしてみた

藤井王位ー豊島竜王の王位戦第三局が始まったのでAIネタを書こう。ABEMA の将棋中継で使用されているAIがどこまで深く読んでいるのか勝手に推測してみることにする。多いときでは100億~1000億ほどの手を読んでいるのを目にしたことがあるので上限を1000億手にして考えてみよう。

今回は候補手数を2~5種にそれぞれ固定してその組合せ数を単純計算する。例えば、候補手数を2種とした場合の組合せ数は、1手先は2、2手先は4、3手先は8……という具合だ。結果を下のスライドに示した。

210721 AI将棋候補手 - コピー (2)

候補手数が2種(青)の場合、1000億手かけると約36手先まで読める。この手数は候補手数を一つ増やすにつれて3種なら約23手先(緑)、4種なら約18手先(橙)と少なくなっていく。そして、ABEMA の中継で用いられている候補手数が5種(赤)の場合は約15手先までに減ってしまうことが分かった。15手程度先を読むのであればプロ棋士なら造作もないだろう。実際には、指した手に対する応手の候補手が同数になるとは限らないため、多少のズレは生じる。飽くまでも、この先を読める手数は目安に過ぎないということを断っておこう。

この結果から、「どれを選んでも一局」となるような候補手がたくさんある局面が連続する場合、AIの読みよりも人の読みの方が上回る蓋然性(公算)が高いと言える。人が優れているのは候補手を絞り込んでそこから深堀りできるという点だろう。同じリソースで候補手5種それぞれを10手先まで読むより、候補手を2,3種まで絞って20手ずつ先まで読んだ方が形勢を損ねるリスクが少なくなるからだ。下図のようにAIは広く浅く、人は狭く深く読むのに長けていると自分は捉えている。

210721 AI将棋候補手2 - コピー

タイトル戦のようにトッププロ同士が激突した場合、AIの考慮の限界を超えた未来の局面を考えることもあるはずだ。その場合、表示されている評価値が正しいかどうか分からないという現象が起こり得る。しかしこれは特殊なケースで、並のプロやアマチュア同士の対局となるとこのAIの手数の範囲内で読みがカバーできてしまうため、評価値はより高精度となる。

そうすると、特に候補手数が多い初手~30手までの序盤研究においては、ある程度絞り込める人の方が得意分野だと言ってもいいような気がする。

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