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部下からの折り入っての相談

「折り入って相談があります。」

部下からされるとドキッとする発言です。

「折り入って」とは、心を込めて人に頼んだり相談したりする時にいう特別な言葉です。

話す側の覚悟はもとより、聞く側にも心の準備が求められます。

これまでの経験上、折り入っての相談で良かったことなどほとんどありません。

だから、つい条件反射的に返してしまうのは、「折り入っての話はあまり聞きたくないんだよね」という弱々しいジャブ。

でも、まあ結局、役割上聞かないといけなくなるわけですよね。

これまで聞かされた「折り入っての相談」でプラス要素であったというのはたったの一回だけでした。

当時は、採用の担当部署で働いており、その部署の長を任されていました。

その日は週末で全員が内勤だったのですが、金曜日ということもあってか、部下たちはそれぞれ所用があるということで少しずつ帰っていきました。

私はというと、すでに日中に「折り入って相談がある」とある部下から申し出があり、その日の夜に外で話を聞くことになっていました。

店は先に出た部下が見つけておくということでしたので、仕事が終わり次第連絡を受けてそこに向かうという段取りでした。

深刻な内容でしょうから、お酒を入れながらというよりは近所の喫茶店とかだろうなと勝手に思っていたのですが、部下が連絡をしてきたのは数駅離れた聞いたこともないお店。

そもそも聞きたくもない話を聞かされないといけないということで既に気が重くなっているのに、近場でなくてわざわざ電車に乗らないと行けないような店を指定してきたことにも少し腹ただしく思いつつ、重い腰を上げて向かうこととしました。

到着した先のお店は、なぜか飲み屋が沢山入ったビルの一画に。

お店をくぐると、突然「おかえりなさーい、ご主人様ぁ!!」とメイド姿の女性のお出迎え。

「なんであいつはよりによってこんな店で相談しようと思ったんだ。」といよいよ腹ただしく思っていると、メイドさんに「ご主人様ぁ、入店前にこれでいいかどうか身だしなみを整えてくださいませぇ。」と鏡の前に立たされます。

鏡に映り出されたのは、ここじゃない感丸出しでイライラした表情の自分の姿。

黙って、鏡を見てうなずき、仕方なくメイドさんに案内されるがままに席に向かっていきます。

到着すると、私より先に帰路についた部下たちが全員集合しており、「お誕生日おめでとうございまーす!!」と一斉に祝福を受けました。

あとはもう、それまでのイライラモードからメロメロモードになり、最後の方はベロベロに酔っ払って坊主頭にメイドさんのティアラを乗っけて可愛く写真撮影されていたのを覚えております。

高低差のあったサプライズでしたから喜びもひとしおでしたが、ともあれ、折り入っての相談というものは、できればしたいものではありませんよね。

今日も読んでくださいまして、ありがとうございます。

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