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エッセイ

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あのときの、あの感覚
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あんな親にはなるまい

弟家族と一緒にランチに行ったときのこと。

私は待ち合わせ場所に先に着いていて、みんなの到着を待っていた。
弟は時間ぴったりにやってきた。

後ろからとぼとぼ歩いてきた9歳の甥っ子は、不機嫌そうだった。
ここに着く前に何か一悶着あったのだろう。

レストランの席に着いても、甥っ子はまだ不貞腐れていた。

弟が「いつまでそのままでいるの?スマホのゲーム一回やったら、機嫌なおせる?」と声をかけると、

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好きな人の好きな作品くらい観ろや

好きな人が「好きだ」と言った作品(映画や漫画やドラマなど)を私は積極的に観るようにしている。

特に付き合う前の段階では共通の話題が欲しいということもあるし、好きな人がどんな物を好きなのかを知りたい。作品を通してその人の一部分が見える気がするから。

だから逆に、私が好きだと言った作品を観ない人は私に興味ないのかな?と思う。
好きな人が好きな作品って、どんな内容か気にならないの?

というか、好き

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忘れることはどうせ大したことじゃない?

坂元裕二さん脚本のドラマ「カルテット」がTVerで配信されていて、久しぶりに観た。

リアルタイムで夢中になった作品なのにほとんど忘れていて、自分の記憶力の無さに引いている。

第1話で、高橋一生が「からあげレモン」の話をするシーンははっきりと記憶にあったけれど。

松たか子の夫が「からあげにレモンかけるの嫌いなのに言い出せなかった」という伏線回収は覚えていなかった!

すごく大事な所なのにね。

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ずっと、書けずにいた

21歳の時に初めて一人旅をした。
ペルーのマチュピチュ。
見るもの全てが新鮮で刺激的だった。
そこで恋に落ちた。

まあ、よくある話。
チープな物語なのだけれど、世間知らずの大学生にとっては、一人で抱えきれないほどの衝撃的な出来事の連続だった。

「いつか、この体験を作品に昇華したい」と思った。そうすることでしか、気持ちを整理できないと思ったのだ。誰かに読んで欲しい。誰かと共鳴したい。

書きたい

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とっといたって仕方ないじゃん

自分の中の常識が覆される瞬間はきもちいい。

え、そんなことしちゃうの?
それ、ありなの?
そんな考え方あるんだ?

と気が付くことで、世界が広がっていく。
常識に縛られていたと思い知ることができる。

昔勤めていた会社の上司がとても素敵な女性で。
部下のやりたいようにやらせてくれて、ミスがあったらカバーしてくれるような、懐の深い人だった。

上司と、私と、もう一人の社員と、三人で打ち合わせをして

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元夫と子どものこと

私は一度、離婚を経験している。
子どもはいない。

元夫はずっと欲しがっていたけれど、結局作らなかった。

セックスレスだった。
人としては好きだけれど、生理的に無理だった。結婚前からそれは変わらず。

じゃあなんで結婚したんだよ、って話だけど、浅はかでしたとしか言えない。

セックスはしなくてもキスやハグはしていたし、友だちみたいにくだらないことで笑い合って仲良しだったから、結婚して必要となれば

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ガーベラ

初めて自室に飾った花は、ピンクのガーベラだった。

ガーベラって、絵に描いたようないわゆる「お花」って感じでかわいいなあと思っていた。

たぶん中学生のころ。
プラスチック製の透明の花びん(薄ピンク色で、コップみたいにまっすぐで、表面にぼこぼこした加工が施してあった)に、一輪入れた。

その様子は、脳内に3D映像みたいに思い浮かべることができる。

当時マンションの5階に住んでいて、私の部屋は北側

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枯れてゆく切り花

切り花が好きだ。
2週間くらいで枯れてくれる所がありがたい。

ひとしきり会話を楽しんだ後で、長居をせずに帰っていく友人みたいだと思う。
その場をぱっと明るくして、さっさと立ち去るのはかっこいい。

鉢植えの良さももちろん知っている。同棲相手やペットのようにずっと同じ家で過ごす喜びがあるし、長く連れ添ったら愛着もわく。

けれど「枯らさないようにお世話をしなくては」と、プレッシャーを感じて苦しいの

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長文メール センチメンタル さすがに迷惑

友だちに送ろうと思って打ったけど、長文過ぎてさすがに迷惑だよね、と思って。

送れなくて、ここに投稿します。

行き場のない気持ち、どこかの誰かの心に響いてくれたら嬉しいです。

元気?
すっかり新緑の季節だね🌱

なんだか昔を振り返って、センチメンタルな気分になっちゃったから、聞いて欲しくてメールしたよ。
急な長文ごめんね。お時間あるとき読んでくれたら嬉しいです😌

昨日、行きたいご飯屋さん

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おばあちゃんに会いたい

一人暮らしで、勝手気ままに暮らしている。

ラジオやテレビやYouTubeをお供に家事をして、ご飯を食べていると、
日常的に「寂しい」と感じることはない。
強がっている訳でもなくて、普通に楽しく過ごしている。

けれど、ふと、とんでもなく寂しくなる時がある。

今日小玉スイカを買ってきた。一気に全部一口大にカットして、お皿に山盛りにした。

独り占めできるなんて、贅沢。

テレビを見ながら半分食べ

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マシュマロを焼きながら考えたこと

バーベキューで、マシュマロを焼いた。

マシュマロは、炎で炙ると一瞬で焦げ目がつく。
けれど、油断すると黒焦げになる。

私はビビって、マシュマロを炎になかなか近づけられなかった。
近づけても、さっと一瞬くぐらす程度で、
なかなか焦げ目が付かなかった。

そんな中、
友人は躊躇なくマシュマロを炎に触れさせて、すぐに良い感じの焦げ目をつけていた。

それを見ていて、
「恋愛に対しても、同じかもしれな

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子どもがいないということ

7歳の甥っ子と一緒に野球盤で遊んだときのこと。
甥っ子はこのゲームが得意で、母親にもいつも圧勝なのだという。
5回裏、12対6になったときに、
甥っ子は
「もうやだ!負ける。終わりにする」と言い出した。
甥っ子の方が12点を取っていて、まだまだ圧勝なのに、私が連続で2点取って6点になったことで気持ちが折れたようだった。

「なんで? まだまだ勝ってるじゃん!」と言っても、涙目で、「もうやめる!」と

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おじさんとお花見

近所の川沿いに桜並木がある。
ベンチが点在しているのだけれど、
その中に一つ、お気に入りのベンチがある。

座ると、桜越しに川が流れる様子が見える。
鳥の鳴き声も聞こえる。

心地いい。

満開の桜を見上げてぼうっとしていたら、
両手に杖(スキーのステッキみたいな)を持ったおじさんに話しかけられた。

「そこに、座っても良いですか?」
「あ、はい、どうぞ」
桜を見て作られた、にこやかな表情のまま、

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雪が積もった次の日

雪の日の翌日は、朝から晴れていた。
カーテンから漏れる光で、お日様の存在を感じる。
窓の外を見ると、雪はすっかり溶けていた。

昨日、結構積もっていたのにな。
なんだか、夢からさめた思いだ。

楽しかった昨日という日を
イリュージョンみたいに、
一瞬で消された気分。

全てのモノが白に覆われる非日常に興奮していた昨日が、なかったことみたいになる。

昨日という一日が終わったんだ。

いや、毎日、“

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