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自分の書いたもの(作品)

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自分の作品やら、自分で翻訳した文章やらを載せていこうかな…と思っております。
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記事一覧

A Day In The Life(あるいは、灰色の教室)

A Day In The Life(あるいは、灰色の教室)

 何もかもが嫌になっていた。

 梅雨は嫌いだ。
 6月某日、我が誕生日、14歳になった。
 誕生日自体は嫌ではない。バースデイケーキが出るような歳で自分の誕生日を祝うような歳でもないと思っていたし、事実今年はケーキはなかった。片親に近い状況の家庭で、我武者羅に働き養ってくれている母親に頼んでも良かったが、たぶん世間一般に言われるように、思春期、と言うヤツに飲まれているのだろう。かといって、反抗期

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「ローズマリー」

「ローズマリー」

私は気づいたら、夜の海にいた。

旅から旅への放浪暮らし。
旅芸人と言えば聞こえはいいが、
このサーカスに身を置く商売女。
昔覚えたダンスでショウに出る。
相手の考えていることを読み取る道化師、
昔っからのなじみのギター弾き、
三人の、踊りのおぼつかない、団長好みの若い女、
青二才の手品師に笑顔を忘れたピエロ、
動物の飼育をしているおっさんと動物たち、
その他諸々の旅の一座。
旅先で誰かが入って、

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「ねえ、歌唄いさん」

「ねえ、歌唄いさん」

 一日の始まりに通り過ぎる、勤め先の出版社への向かう道すがら、ベンチとブランコが申し訳程度に置かれている公園がある。そこにポツンと立っている、ギターを抱えた男の人に声をかける。

 「ねえ、歌唄いさん」

彼は普段は表情を顔に出さない。いつも、まるで哲学者かのように浮かない顔をして、ギターをつま弾いている。それは時にチューニングだったり、私の知らない曲だったり、たまに「禁じられた遊び」なんて古い映

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短編戯曲「冷たい海と馬鹿」

短編戯曲「冷たい海と馬鹿」

「冷たい海と馬鹿」

登場人物
ミユキ
タカヒコ

波音。
辺りはまだ薄暗い。
ミユキは薄手のブラウスにデニムのパンツで体育座りをしている。
タカヒコはアロハを羽織っていてショートパンツ。ミユキより、もう少しくだけて座っている。
二人とも缶ビールを持っている。
ミユキはほろ酔い、タカヒコはミユキよりもう少し酔っている。
二人とも陽気に笑っている。

ミユキ (缶ビールを少し飲んで)バッカじゃないの

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「何もない」

「何もない」

「何もない」
作:ニイモトイチヒロ

 「私には何もない」
 目覚めた彼女は、透き通る声でそう言った。
 「物語のない人生、私には物語がない」

 昨晩。
 強い雨の夜。
 待ち合わせ場所に、赤い傘を差した青いコートの彼女が立っていた。
 彼女の青白く細い手を繋ぎ、私にとって大切な場所である、馴染みのバーへと向かった。
 老いたバーテンダーの作るカクテルは、強いアルコールで、私と彼女を心地よく酔わ

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観覧車のてっぺんで【ひとり芝居】

観覧車のてっぺんで【ひとり芝居】

登場人物(2役)
ハナ
マイカ

舞台上には、中央に椅子になる箱が置いてあり、3つのライトで照らされるようになっている。
ひとりの女優がその中を動くことで、2人の人物のモノローグ及びふたりをひとりで演じる動きを表す。

舞台上の中央の箱の前に、女がひとり立っている。
ふたりの女性を演じる女だ。
花柄が目を惹く浴衣を着ている。
はじめはマイカとして話し始める。

マイカ (どこか勝気な口調で、人に話

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「文字と本とものがたりと」

「文字と本とものがたりと」

文字と本とものがたりと

「長く短い人生で、苦い想いを心に抱いた時、キャンディだって毒になる
時折キャンディよりも、甘い物語が苦い想いを打ち消すだろう
甘い物語が苦い物語に感じたなら、それは死よりも悪い運命だ」

この詩集で間違いありませんか?
そう、それならば、良かった。
私も好きなんですよ、この詩。
長い詩の中の、この一文、私も好きなんです
この文字列の中で、文字より長い物語を、私は感じます。

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【短編戯曲】東京は雨降り【最終稿】

「東京は雨ふり」
作:ニイモトイチヒロ

登場人物
マサユキ
ユカ
カナコ
場所:東京ではない、どこかの海辺
時間:夏、夕方。

 波の音、大きく。
 砂浜。
 マサユキ、おいしくなさそうな表情でタバコを吸いつつ立っている。
その右隣りにユカ、視線を別にして、チュッパチャプスをくわえて座っている。
 ふと、マサユキ、ユカに目をやると、ユカ、片手で作った指ピストルを誰かに狙い定めて向けている
 そし

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習作戯曲「ハローもグッバイもサンキューも」

これは、たぶん10年くらい前の8月31日の真夜中に、一気呵成で書いた、習作戯曲です。
その当時の想いとか何とかが混じっていて、若書きなんですが、せっかくこういうネットツールがあるんだから、再掲しても良いかな、と思って、あえて改定しないで載せます。
よかったらご覧下さい。

「ハローもグッバイもサンキューも」

登場人物
トシノブ(25歳・フリーター)
アサト(25歳・会社員)
サチエ(23歳・劇

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習作戯曲「パッとしねぇ夏」

「パッとしねぇ夏」
作:ニイモトイチヒロ

登場人物
小津
武田
若林
ユリエ

時と場所
時:残暑が厳しい9月。
場所:人目につかない、森の中のような場所。

 小津は黒の背広にサングラス。
 武田はジーパンに青いスカジャン。
 若林は緑のアロハシャツに丸メガネ。
 ユリエは赤いワンピース。

 男3人は30歳前後に見える。
 ユリエは3人より若くは見えるが、3人に対してタメ語である。

 車の

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「無題」(2014/08/29)

これは、平成26年8月28~31日の日程で行われた、[平成26年度 小田原市文化創造活動担い手育成事業/平成26年度 一般財団法人 地域創造 リージョナルシアター事業]「演劇ワークショップで学ぶ“見えないものを見るチカラ” ―想像力と創造力を鍛えるヒント」に参加した、ワタクシことニイモトイチヒロ(よみづれーな、この書き方)のワークショップ(以下WS)で書いた作品を、まず公開しよう、と思って書き起こ

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短編戯曲「僕と彼女と週末に」朗読用初稿

以前書いた戯曲を朗読会用に書き直してみました。

登場人物 サトシ カナコ
時と場所・ある初夏の真夜中
・海辺の近くのアパートの一室のベッドの上。

カナコ:やっぱ夏だね、、シャワーが気持ちいい。
サトシ:あれ、そんなパジャマ、持ってたっけ?
カナコ:昨日、衝動買いしちゃった。そんなに高くなかったよ、3500円、税込。
サトシ:可愛いな、その星のマーク
カナコ:だからね

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習作戯曲:「彼方で『笑え』」

4年前に書いた習作を、今回は手を入れずに掲載します。
3時間くらいで一発勝負で書いた…と記憶してます。
よろしければ。

人物
コウノ
タシロ

場面:都心の雑居ビルの屋上。
   夜。
   空に星が見えないのだから、曇っているのだろう。
   
   コウノ・タシロ、ともにスーツを着たサラリーマン風情。
   タシロの方が若干年下に見える。

   コウノ、一人で缶コーヒーを飲ん

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[短編戯曲]「僕が見る淫らな妄想は」

数年前に、「劇作集団QDC」の戯曲ワークショップ用に書いた短編台本です。何年前にいつ書いたか、よく覚えてないんですけど…。元データは前のパソコンの中にあって、HDごと、それは吹っ飛びました。
紙に印刷されたものが引越し準備中に出てきたので、新たに書き起こしてみました。元の台本から言い回しとかを少し修正したものの、基本的には元の物と変わりません。
良ければ読んで下さい。

あ、何がしかで使うとか上演

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