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【読書感想文】芥川龍之介「蜘蛛の糸」

こんばんは!
目の前に糸が垂れてきたら、まずは誰か別の奴に上らせてみて、その糸が切れないかどうかを確認してから、自分も糸を掴むかな!小栗義樹です(笑)

僕の前に糸が垂らされても切れることが分かった時点で、本日は読書感想文を書かせて頂きます!

僕が読んだ本を題材として感想文を書くという企画です。感想文を通して、少しでも多くの方に「その本の面白さ」が伝われた万々歳だと思っています。

本日の題材はコチラです!

芥川龍之介「蜘蛛の糸」

僕が書く読書感想文の中で最も登場回数が多い芥川龍之介さん。僕が好きなので、若干偏っています(笑)

過去には「羅生門」と「鼻」を題材に感想文を書きましたが、今回は「蜘蛛の糸」です。地獄変か蜘蛛の糸かで悩んだのですが、蜘蛛の糸の方がお話自体がシンプルなので、コチラを採用することにしました。

本題の前に、少しだけ読書近況報告をさせて頂きますと、現在僕は村上龍の「コインロッカーベイビーズ」を読んでいます。僕の知っている限り、村上龍ほどロックな作家はいません。ロックが好きな僕からすれば、村上龍の作品を読むのは必然で、今とてもギラギラしています。

恐らく、あと1週間半くらいで読み終わると思います。再来週あたりの感想文で「コインロッカーベイビーズ」を題材にしていくつもりです。今からとても楽しみです!ワクワクします!もし「コインロッカーベイビーズ」を知っている方がいれば、再来週、一緒に盛り上がりましょう!よろしくお願い致します。

というわけで、そんなギラギラした状態の中で「蜘蛛の糸」の感想文です。

こちらは芥川龍之介の短編なのですが、「舞踏会」以上「羅生門」以下の知名度かなって思っています。「鼻」と「地獄変」より少しだけ、ほんの少しだけ知名度が弱いという印象です。(個人的な見解です。人によります笑)

お話としては、地獄にいる人間の前にお釈迦さまが一本の糸を垂らします。その人間は糸を掴み、地獄からの脱出を試みます。ずんずん登っている途中、地獄を彷徨っている他の人間が糸を発見し、自分も助かりたいと糸を登っています。最初に意図を発見した人間は、後から登ってくる人間に「この糸は自分のものだ。沢山登ろうとすると糸が切れるだろ。降りろ」と文句を言いました。お釈迦様はその文句を聞き、悲しい顔を浮かべて糸を切りました。

めちゃくちゃざっくりしていますが、こんな感じです。

以前、芥川龍之介の作品を題材にした感想文でも書きましたが、芥川龍之介という作家は「個人」にフォーカスし「人間の醜さ」をテーマとした作品が沢山あります。

明治時代までの道徳は「集団」であり「日本人」でした。夏目漱石も森鴎外も、個人ではなく「この時代の日本人の在り方」を作品で表しています。芥川龍之介は大正の文豪です。今までは「時代」がメインだった文学に「個人」を持ち込むというのは、当時で言えば「イノベーション」だったわけです。

言うなれば芥川龍之介は、現代の文学では当たり前である「日本の人文学」の元祖と言うべき存在なのです。ロックで言えば「エルビス・プレスリー」で、日本ロックで言えば「スパイダース」にあたる存在でしょうか?

とにかく、それくらい大きな功績を残した人であるということです。

蜘蛛の糸は、そんな芥川龍之介が残した「人間ってこの程度の生き物だよねシリーズ」です。

羅生門・鼻・地獄変・蜘蛛の糸。

人間には無限の可能性があるなんて言葉をたまに聞くのですが、僕はこの4つの作品が「人間の全て」を説明しているように思えてならないのです。

極端だなと言われるかもしれませんが、人間って「個体」で見れば、そんなに崇高な生き物ではないと思うのです。

自分がピンチになれば生きるために奪う・自分の尊厳を守るためなら他者を平気で、あるいは無自覚に傷つける・権力を持てば残酷な無茶振りをする・こだわりを持てば誰かを不快にする・いつだって自分が救済されたくて、他者が救われようとする、あるいは自分の救われるチャンスを邪魔されそうになると嫉妬し・見下してしまう。

そんなもんじゃありませんか?

芥川龍之介は、人間は性弱であるということをよく分かっていて、それを物語にして多くの人に流布したのではないかと思います。それはすなわち、集団が大切であるということの証明でもあり、社会が形成されるのは「生存本能」として当たり前である事を指しているようでもあります。

蜘蛛の糸は、人は救われるべきか否かを問うた作品で、芥川龍之介の答えは「救われない」だったわけですが、僕はこの頃すでに、芥川龍之介は「救済」という欲求に縛られていたのではないか?と思えて、非常にやるせない気持ちになります。

一生懸命読めば読むほど思うのですが、この頃の人って「死後への恐怖」が圧倒的に強いですよね。「死」そのものが恐いという発想ではなくて、死んだあと我々は救われるのか?死後、僕たちは本当にあらゆる苦しみから開放されるのか?が論点です。

「死」そのものが恐いという考えは、昭和以降、日本が豊かになってから導入されたもので、現世の豊かさがもたらした新しい価値観なのかなと思います。

僕はこの「死後」と「死」の感覚がどうしても分かりません。分からないからこそ、死後の救済を必死に祈るこの時代の作家の作品に、ある種の尊さと圧倒的な興味を持っているのかなと思います。

蜘蛛の糸は、まさに「死後の救済」を真面目に考えた作品です。僕からすれば、そもそもイメージが出来ないので、読めば読むほど尊さと興味が湧いてきます。

人間、死後、死、弱さ。

こうした普遍的なものを考えるうえで、蜘蛛の糸ほど分かりやすい作品はなかなか無いと思います。

短編なのでサクッと読めますし、他の話も収録されているのでお得です。

古本屋などで100円で落ちていたりします。人間とは?を考えてみたい方がいらっしゃれば、ぜひ読んでみてください。

というわけで、本日はこの辺で失礼致します。
また明日の記事でお会いしましょう!
さようなら〜



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