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エッセイ

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#エッセイ

ホテルの窓から眺めている

ホテルの窓から眺めている

神戸。

定期的に訪れる地。

今回は、妙に早く一日目の予定が片付いた。
いつになく早めのチェックイン。
部屋の明かりも点けず、ベッドにドサリとよこたわる。
まだ外は明るい。
まもなく陽は沈んで行くだろう。
人気の感じぬホテルの部屋から、ぼんやりと窓の外を眺める。
ずいぶん前にもこんなことがあった気する。
はて、あれはいつぞやのことか。
どこぞの地だったろう。
なんだか悲しかったということだけが、

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何かと少し戦ってみようか

何かと少し戦ってみようか

なんかしらないけど戦ってたな…

ふと、そんなふうに思うのだ。
もうずいぶんと遠い昔の話だ。

まだまだ子供だったのだ。
そこには明確な敵など居なかった。
見えない何かに、徒手空拳でジタバタしてたといったところか。
まあそうはいっても、いつもイライラ、触れるものみな傷つけるナイフみたいに過ごしていた訳ではない。
ただ、さぞかし周りの大人は扱いづらかったことだろ。
ただただ、いつも漠然と世の中に半目

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フラミンゴの空

フラミンゴの空

フラミンゴ色の空だ。
車のヘッドライトがポツリポツリと点りはじめた頃、フラミンゴ色の空に真っ直ぐにのびる虹をみたのだ。

この美しさをどう伝えればいいだろう。

言葉でこの美しさを伝えられたら。
写真でこの美しさを伝えられたら。
まして譜面におこすことなど、そんなことは奇跡すらおきないだろう。

上手く伝えることなど出来ないのは承知の助だ。

だからなるべく大切な人と一緒に居よう。
伝えられないか

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少し面倒 そしてほんのり…

少し面倒 そしてほんのり…

毎年このくらい時期って、いささか面倒である。

「明けましておめでとう」にはもう遅くって、お互い、「なんか今頃だとね〜」ってな目配せがありつつ、明けましてを省いて「今年もよろしく」くらいの挨拶となるのだ。

その「間」が、何とも億劫なのである。
年始の挨拶など無い方が楽だ。

かと言って、「いつもお世話になってます」の一言で済ませてしまうと、逆に何だか素っ気ないというか、愛想がないと思われはしまい

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大概のことはゆずる

大概のことはゆずる

「ゆずれない大切な何か」

そんなものが問われる事なんか、そうそう無い。

多くの場合、本当はゆずれる事ばかりだ。
だからあれこれ考えずにゆずってしまう。
頭は「ゆずりたくない」と一瞬ボヤくのだが、心で、「それホントにゆずれない事?」って問い直す。
そうしたら、「やっぱりゆずれないよ」ってことはそうそう無いと思っている。

だから、大概、ゆずる。

その方が、本当に大切なゆずれない何かを守りたい時

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明るくて、少しだけ寂しい

明るくて、少しだけ寂しい

北国の冬の夜は明るい。

皆が陽気という意味ではない。
光が明るいのだ。

それは、あたり一面を真白に覆った雪のせいだ。

流れる車のヘッドライトは、真白な道路に光のウェーブをつくり出し、テールランプはゆらゆらと路に揺れている。
信号の光、街の灯が、その白に眩しく反射し、街行く人々の服装がダーク系の色が多いのと対象的に、街はなんだか明るく華やぐ。
いつもの街、いつもの路がまるでステージの上みたいに

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お手軽センチメンタル

お手軽センチメンタル

この時期おれは、ちょっとしたセンチメンタルなジャーニーを密かに楽しんだりしている。
それというのも、お手軽な方法があるのだ。

センチメンタルジャーニーといっても、なにも雨の中を駆け出すような恋に破れたわけではない。

そう、ジャーニーといっても、つかの間のセンチメンタルタイムのことをそう呼んでいるのだ。
いや、タイムって何のことだ。

それは、ふとした瞬間の胸を締めつける甘酸っぱい一瞬のことだ。

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またきっと聴くだろう

またきっと聴くだろう

先日も書いように、この時期、無性にジャニス・ジョプリンを聴きたくなる。

夏の終わりを静かに見送る。
そんなジャニスの『サマータイム』は本当に心に沁みるのだ。

見送られる夏を思いながら、ぼんやりとと考える。
よく彼女の声を評して「魂の…」と表現されるが、生き急いだ彼女の魂は何を伝えたかったのだろう。
澄み渡る声とは程遠いハスキーボイス。
それでいて、誰よりも無垢な、時に、純粋が故の危うさすら感じ

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ジャニス・ジョプリン、そして晩夏

ジャニス・ジョプリン、そして晩夏

日に日に陽は傾き、黄色い日差しがかすれた葉に照りつける9月の初旬。
目に映る全てのもの、吹き抜ける風すらも、なんだか疲れ切ってしまっているように感じる。

そんな時、いつも無性に聴きたくなるのが「ジァニス・ジョプリン」だ。

どこか気怠さを帯びたハスキーな声が、夏の終わりにピッタリな気がするのだ。

今は日も暮れて、微かな風がレースのカーテンをフワリと揺らせている。
風呂上がりの隙だらけの格好で、

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風をいっぱいに集めたら

風をいっぱいに集めたら

電車待ちのホーム。

今日は、晴天なれど思いのほか風が強い。
着ているシャツが、パタパタとはためく。
バタバタといってもいいくらいだ。

電車到着までは、まだ時間があるようだ。
そこでおれは、目をつむり思考を飛ばしてみる。

目の前に広がるのは、広大な海だ。
ここは日本海か。
海風が容赦なくおれを洗う。
あいにくの曇空。
じきに一雨くるだろう。
人影も無く、猫の子一匹見当たらない。
ただただ、白浪

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レモンスカッシュ

レモンスカッシュ

レモンスカッシュ…

なんとも甘酸っぱい単語だ。

レモンスカッシュ

おれにとってのレモンスカッシュは、初夏の季語だ。
まあ、同じく夏のイメージを抱く方が多かろう。
しかし、おれにとっては「初夏」なのだ。
真夏の太陽ギラ!ではない。
あくまでも初夏。
お気に入りのTシャツをやっと着れるようになる季節。
タバコをぷかりとふかし、隙だらけの構えで、入り浸っていた喫茶店でまったりする。
耳元で流れる曲

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ラブは遠ざけろ

ラブは遠ざけろ

ラブというものには、よくよく気をつけた方がいい。
細心の注意を払い、遠ざけることだ。

これまでだって、ラブにはさんざん苦しめられてきたのだ。
時に振り回され、打ちのめされ、ずいぶん遠回りもさせられた。

ラブは、強くなればなるほど、相手にとっては重荷になって行く。
ラブは、自分と等しい熱量を、相手にも強要してしまう。
そんなラブはいつしか執着に変わる。
いや、ラブこそが、執着の本質だ。
人への執

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ラサっと女神が

ラサっと女神が

こんなふうに言ってきた若い娘がいた。

「札幌って大都会ですよね!私のところなんてホント小さな街で、札幌は大都会過ぎて怖いです!」

そうか…
住んでいる者として、自分の街が大都会と思ったことはなかった。

学生時代、東京に出ていたこともあり、むしろ「程よい大きさの街」くらいの認識だった。
まあ、東京でも住んでしまえばしまったで、自分の住む街を「大都会だなぁ」などと意識などしながら暮らしてはいなか

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人生の句読点

人生の句読点

先日ある方と話をしていて、「なんか分かるな〜」と言い得て妙な表現を聞いた。

生活の中に『句読点』がない人がいると言うのだ。
その方は話の流れの中で、「そうね〜、なんだか見ていて句読点のない人って居るわよね〜」まあ、そんな感じだったように思う。
それを聞いて、なんだか妙に納得した。

所謂「メリハリがない」と少し違う感じで受け止めた。メリハリでいったら、こっちも頭の一つも下げたくなる。

人生の節

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