Frohliches-Kind

プロのヴァイオリンニスト。高校卒業後、単身ドイツへ。趣味は小説を書くこと。

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プロのヴァイオリンニスト。高校卒業後、単身ドイツへ。趣味は小説を書くこと。

記事一覧

彼と彼女と彼女と彼

ドイツの彼からメールが届く。 彼は、私にとって彼が1番のピアニストであることを改めて知り、嬉しそうだ。 優しいメッセージに夜中に号泣する私は、きっと彼のピアノか…

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彼のピアノが恋しくなる

南アフリカ人のピアニストが来日して1週間。 かなり大変だが、彼女と楽しい時間を過ごしている。 2人でプロとして良い演奏を弾くことはできる。 でも、何か違う。 どう…

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静かな時間

静けさが必要な彼と、8月になってから一度も話せていない。 メールの返信が苦手。 コンサートなどの本番から引退済み。 大学で仕事すると疲れてしまう。 様々な要素を総…

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数十年の月日を結ぶ旅

イタリアへ行く前に一瞬弾いてもらったピアニストの音楽は透明で、色が無かった。 引退したという彼の音楽は、心をどこかに置いてきたかのような音楽だった。 きっと、何…

Frohliches-Kind
2週間前
2

激務な音楽家と恋愛する覚悟

偶然だが、30代を振り返ると非常に仕事ができる激務な音楽家としか恋愛してこなかった。 激務な音楽家と恋愛する女性に向けて、私の経験を記しておきたいと思う。 きっと…

Frohliches-Kind
1か月前
2

新しい音楽の始まり

先生、助けてください。 昔教えた生徒のお母さんは、私の前でたくさんたくさん泣いていた。 彼女は、優しすぎてよく泣いてしまうお母さん。 たくさん迷うことがあるけれ…

Frohliches-Kind
1か月前
5

17年の月日を越えて

眠気を取り払うように、用があって、ふと自分の名前を検索した。 私が彼と出したかった音楽が全世界リリースされていたことを目にする。 私は、涙が止まらなくなるのを抑…

Frohliches-Kind
1か月前
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イタリア音楽旅行の前に

ある日。 仕事で少しの間ベルギーに旅立つ前。 突然知らないイタリア人から連絡が来た。 誰? そう思いながらも、メールを読む。 え? イタリアに招かれて仕事をする…

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1か月前
6

夏夜のマジックを聴きながら

偶然が重なり恋に落ちた気がした夏の日。 indigo la End の「夏夜のマジック」を聴きながら、ふと、ものすごく好きだった人のことを思い出してしまう。 5年前のクリスマ…

Frohliches-Kind
1か月前
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彼と彼女と彼女と彼

彼と彼女と彼女と彼

ドイツの彼からメールが届く。

彼は、私にとって彼が1番のピアニストであることを改めて知り、嬉しそうだ。

優しいメッセージに夜中に号泣する私は、きっと彼のピアノからは離れられないだろう。

お互いの音楽への愛を確認できたことは、とても嬉しかった。

数ヶ月話さないで音楽の絆を確認できるのって、少しロマンチックな気がした。

かくいう、友人ピアニストのピアノは、少しずつ、お互いの体に馴染んでいった

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彼のピアノが恋しくなる

彼のピアノが恋しくなる

南アフリカ人のピアニストが来日して1週間。
かなり大変だが、彼女と楽しい時間を過ごしている。

2人でプロとして良い演奏を弾くことはできる。

でも、何か違う。

どうしてもドイツにいる彼のピアノと比べてしまう。

透明感。
男らしさ。
はっとさせるような美しさ。
優しさ。

彼のピアノが恋しい。
本当に泣きそう。

南アフリカ人の友人とは、友情のピアノを弾くことはできる。
彼女のピアノは素晴らし

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静かな時間

静かな時間

静けさが必要な彼と、8月になってから一度も話せていない。

メールの返信が苦手。
コンサートなどの本番から引退済み。
大学で仕事すると疲れてしまう。

様々な要素を総合してみる。

彼は、きっと、HSP、繊細さんなのだ。

学問を極めることができる。
書類作成など対人がないことが得意。

そんな彼は、私に、先にNGポイントをたくさん言ってきた。

繊細さんだから、自分を守るために、それを言わないと

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数十年の月日を結ぶ旅

数十年の月日を結ぶ旅

イタリアへ行く前に一瞬弾いてもらったピアニストの音楽は透明で、色が無かった。

引退したという彼の音楽は、心をどこかに置いてきたかのような音楽だった。

きっと、何かがあったのだろう。
まだ、私には触れさせてはもらえない傷のようなものを隠していたかのようだった。

日本にいる共通の恩師の施設に2人で訪れた時。

私の向かうイタリアのマスタークラスの指導者の中に、彼は、彼の海外で師事した恩師の名前を

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激務な音楽家と恋愛する覚悟

激務な音楽家と恋愛する覚悟

偶然だが、30代を振り返ると非常に仕事ができる激務な音楽家としか恋愛してこなかった。

激務な音楽家と恋愛する女性に向けて、私の経験を記しておきたいと思う。
きっと何かしらの参考になるはず。

まず、音楽家に休みはない。
毎日何時間も練習するし、練習時間の長い優秀なピアニストは、11時間以上練習する人も多い。
不定休に休みはあっても、休みにならない。

優秀であれば優秀であるほど全ての時間を音楽に

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新しい音楽の始まり

新しい音楽の始まり

先生、助けてください。

昔教えた生徒のお母さんは、私の前でたくさんたくさん泣いていた。

彼女は、優しすぎてよく泣いてしまうお母さん。
たくさん迷うことがあるけれど、鎧をまといながらも、柔らかな部分はなかなか隠しきれずにどうしても傷ついてしまう。

彼女の幼い娘はピアノを学んでいる。

娘のピアノの先生から、親子でたくさん脅しのような言葉を投げつけられていた。

ここに書けないくらいの傷つく言葉

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17年の月日を越えて

17年の月日を越えて

眠気を取り払うように、用があって、ふと自分の名前を検索した。

私が彼と出したかった音楽が全世界リリースされていたことを目にする。

私は、涙が止まらなくなるのを抑えられなかった。

彼は、天才ピアニストと呼ばれる人だった。

私より年下で、18歳で日本1を取り、音大中が彼の噂で持ちきりだった。

私が彼に出会ったのは、音大前の横断歩道だった。

しばらくして、彼から、マイナーな作曲家のヴァイオリ

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イタリア音楽旅行の前に

イタリア音楽旅行の前に

ある日。

仕事で少しの間ベルギーに旅立つ前。

突然知らないイタリア人から連絡が来た。

誰?

そう思いながらも、メールを読む。

え?

イタリアに招かれて仕事をすることになった。
初めてのイタリアが仕事になった。

それから、よく分からないなか、手探りで準備を進めた。

すると、なぜか、世界的な指導者が山ほど集まるところで指導するらしいことを知る。
そして、私は指導陣代表で演奏することが決

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夏夜のマジックを聴きながら

夏夜のマジックを聴きながら

偶然が重なり恋に落ちた気がした夏の日。

indigo la End の「夏夜のマジック」を聴きながら、ふと、ものすごく好きだった人のことを思い出してしまう。

5年前のクリスマスイブに、日本に住むヴァイオリニストの私に、ドイツからボイスメッセージを送ってきたピアニストの彼。

ある日、突然、私に会いにくると飛行機に乗ってやってきた。

強引に彼の国を見てほしいと言われて彼の国に飛んだあと、コロナ

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