新しい音楽の始まり
先生、助けてください。
昔教えた生徒のお母さんは、私の前でたくさんたくさん泣いていた。
彼女は、優しすぎてよく泣いてしまうお母さん。
たくさん迷うことがあるけれど、鎧をまといながらも、柔らかな部分はなかなか隠しきれずにどうしても傷ついてしまう。
彼女の幼い娘はピアノを学んでいる。
娘のピアノの先生から、親子でたくさん脅しのような言葉を投げつけられていた。
ここに書けないくらいの傷つく言葉。
音楽家は、大量の人格否定の言葉を浴びながら成長して嫉妬ともに歪んでいく。
そのなかには、不必要なものも含まれていたりする。
私だって同じ。
かなりの修羅場をくぐってきた。
でも、私は、自分の生徒は愛で包みたいから。
どんな注意も、どんな言葉も愛で包む。
甘え過ぎな時は突き放しながら。
私は、早速新しいピアノの先生を見つけてあげることにした。
私が見つけてきた男の先生は、私の生徒を教えることに興味はなかった。
先生が教えれば、と。
いやいや、私、ヴァイオリンじゃん。
私がこの先生にお願いしたのは、先生がピアノの生徒が習っていた巨匠の弟子であること。
私が共演した彼の恩師である巨匠が教えた最後の弟子が、私の生徒だから。
先生は忙しいし詳しい経緯を知らなかったから軽く説明した。
私が、偶然泣いている生徒のお母さんの話を巨匠にしたら、巨匠からそのピアノの生徒を連れてきて教えるからと言われたのだ。
私は、あまりにも高齢の巨匠に会わせることをためらったけれど。
それから、ずっとずっと皆で楽しくレッスンをした。
しかし、ある日、巨匠は、施設に入ることに。
またピアノの先生が変わることに戸惑っていた生徒のお母さん。
ある日連絡が来た時は、再び様々な言葉の刃に苦しんでいた。
泣いていた彼女に優しく言葉をかけて、話を聞いたあとに、巨匠の弟子を紹介することにした。
そして、巨匠の弟子である先生は、全てのご縁が、私が、泣いていたお母さんを助けたかったから繋がったご縁であることを知り、感銘を受けている様子だった。
音楽で困っている人は助けたい。
誰にも音楽で傷ついてほしくなかった。
生徒を無事にレッスンしてもらえるようになり。
そして、今度は、その先生に、私は私の演奏を助けてほしいとお願いをした。
イタリアでの本番のために、助けてほしいと。
すると、激務だけど無理をして時間を作ってくれることに。
仕事が忙しいけど頑張ると言ってくれたことが嬉しい。
イタリアへ行く前に、新たな音楽に出会えるのが楽しみ。
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