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Music × English なエッセイ 【6】

今回の動画

『ジョジョの奇妙な冒険』でも、ラスボスの一人が帯びているスタンド、キング・クリムゾン。例の二重人格の人ですね。ドッギャーン(このオノマトペは初期だけ?)。

モデルのバンドは、オールドファンの方には恐れ多いんですが、プログレッシブロックという重厚長大なサウンドを率いていました。


しかしコンセプトが重すぎて、あるいは曲の長さや複雑さが冗長化、陳腐化を招いてしまって、80年代に「ロックの冬の時代」を創る一因にもなってしまった(シンセサイザーの台頭で、世の中はダンサブルな機械音だらけに?)。

…そういう独特の過渡期なジャンルの旗手の一つ。という理解でおります。

Starless

歌詞(抜粋、ほぼ全部)

ほぼというのは、繰り返しによってできているためです。

Sundown dazzling day
Gold through my eyes
But my eyes turned within
Only see
Starless and bible black

Old friend charity
Cruel twisted smile
And the smile signals emptiness
For me
Starless and bible black

Ice blue silver sky
Fades into grey
To a grey hope that all yearns
To be
Starless and bible black

*Starless*
by King Crimson

試訳

夕暮れのまばゆい日に
黄金(のごとき景色?)が眼を通り抜けていく
なのに内奥に向いてしまった私の眼差しは
見るのみだ
星一つない悠久の闇を

旧友の慈悲
残酷に歪んだ笑み
そしてその笑みは虚無を発している
私に向けて
漆黒の神がかった闇

アイスブルーの銀世界の空が
グレーへと滲んで消えゆく
皆が憧れてやまぬグレーの希望
聖書の正体が無明かのような黒に
転ずる定めの


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収録アルバムはこちらからお求めになれます。

さらに10周年加算(汗)。
オマケの2枚目つき。

全く同じ曲のラインナップを、リマスターの違いで二枚組で売るというマニアック仕様はこちらです(汗)。あ、ライブ音源のオマケなどの差異はあります。


訳出にあたり考えたこと

後世の人間から見た、当時の世相

彼らのデビューアルバムはビートルズのアビーロードを倒したとされるんですよね。集計方法にもよりそうですけど(苦笑)。

何が言いたいかというと、ビートルズがインドの神秘主義に触れて、サイケデリックな音に傾斜した時期が日本では有名ですよね?

当然、カウンターカルチャーを自認しているヒッピー文化などが同世代の間で花開いているのと足並みを揃えて、キング・クリムゾンも独自の神秘思想解釈を持っていたと思われるんです。歌詞、抽象的過ぎますが…。

従来の保守主義を解体したいがために、怪しげな理論だとか、カルトだとか、新しいはずの進歩主義の周りに副産物がくっついてきてしまったのは、オールドファンにおかれてはご存知かと思いますので、スキップしときます。ニューウェーブがどうのこうのと…

歌詞の中ほどの、残酷な笑みを浮かべているのは、体制護持派じゃないでしょうか?

日本に当てはめて言うと。この曲は1974年の曲なので、1969年に安田講堂が陥落したのが学生運動の敗北だったとするなら、それで利益を得た人たち。

学生紛争とか一連の活動に向き合わなかった人たち。
今の世襲政治家、弁護士会とか医師会の重鎮になっている人たちかもしれません。

図書館に籠って資格勉強していて、マルクス主義の運動なんかあほらしくて付き合ってられるかって人たちです。ベトナムで人が巻き添えでも知らないと。安保が改定されて自衛隊がアメリカの手駒にされても知らんよと…。

ウクライナ情勢やパレスチナ情勢で愕然とするのは、既に先の世代で白けが来ちまって、空虚しか日本には待っていなかったのではということです。

いや、バブルはこの後来るんですけど。
弾けたのもご存知ですよね…。

その余波の中を今もまだ生きているんじゃないか。
彼らの孫やひ孫まで生まれているのに。
認識が繰り返していないかっていう愕然。

キング・クリムゾンも暗喩で旧世代(及びその劣化コピー)に抗ってたのかなと

日本だと、学生運動した人は、刑法上微罪だとしても、社会的制裁とかいう意味不明な現象があって(つまり、民主的過程で選ばれた議員が創った禊の的システムを経たのに、間人がリンチできるおまけつきの社会)、現実問題としてまともな出世路線からは排除されたそうですよね。

ロックの本場としてのイギリスやアメリカでそんな干されがあったのかはわかりませんが、この歌詞には、自称・他称、敬虔なクリスチャンほど気になるであろうバイブルって単語が繰り返し出てきます。

歪んだ笑みで返してくる連中は、ベトナム戦争に貧困家庭の青少年を派兵した上流階級かもしれません。

今、日本でも議論の俎上にあるという黒い噂の経済的徴兵制で反射的利益を得ながら。

当時アメリカでは、奨学金免除してやるからと、有色人種をして先陣切らせたそうです。

啓蒙主義ってありますよね?
英語に直すと enlightenment なんですよね。
光をお前ら愚者にもたらしてやろうと。

究極の上から目線とも言えなくもない。もちろんそれによって庶民の知性が底上げされ、今の礎になっている市民革命だって起きたわけですが…。

バイブルの黒い革張りの黒さなら、単に古書の味わいですけど(苦笑)、おそらくそうではないんじゃないかなあと。むしろ、聖書遵守で構築された国家や社会の設計こそが以下略。

この歌に漲っているどす黒さや、不穏さ、急転直下で拮抗する緊迫感は、それこそ、ニーチェの言っていたようなもの(深淵を覗く者は…)ではないか。

保守層の維持しようとする社会にクラックが入って、そこから垣間見える深淵の黒さ、闇の深さ、欺瞞や虚無・虚構との戦いのサウンド(そして諦念と絶望へ?)ではないでしょうか。

日本では、その墨を落としたような真っ黒な闇には、なんとオウムとか統一教会も潜んでいたんですが…魔物役で…。政権与党にも影響を及ぼすような形で。

締めくくりに

さあ、皆さんご一緒に。
Starless and bible black.


▷共同マガジンの紹介

ご縁があって、共同マガジンに参加させていただいております。
皆さん、色んな作風で、多彩な寄稿をされているようです。
よろしければ、ご覧になってみて下さい。

※ 2023年12月14日追記


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10記事ひと単位でまとめたものが2巻にまでなりました。
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もちろん無料です。
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