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#講談社
毎日読書メモ(541)なかなかまとめきれなかった感想文、走り書きで
本を読むスピードと、感想文を書くスピードが合ってなくて、読み終わってかなり時間がたったのに感想をまとめられないでいた本がたまってしまったので、短くても控えとして簡単な感想を書いておこうかな、と。
吉川トリコ『余命一年、男をかう』(講談社文庫)
昨年、山本文緒『無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記』を読んだときに、文中に出てきた読書記録で気になって、割とすぐ読んだのに、うまくまとめられな
恩田陸『夜明けの花園』(毎日読書メモ(537))
恩田陸続く。
今年の1月に刊行された『夜明けの花園』(講談社)、水野理瀬シリーズ最新刊だが、2022年に雑誌に発表された「絵のない絵本」(学園を出たあとの理瀬が、ヨーロッパ方面のリゾート地で思いがけない事件に巻き込まれる)
2023年に雑誌発表された「月蝕」(学園を出る直前の聖が思い出話と暗殺への不安を並行して語る、過去のおさらい的物語)、書下ろしの「丘をゆく船」(聖のひとり語りにも出てきた、黎二
川上弘美『恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ』(毎日読書メモ(517))
川上弘美の近作『恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ』(講談社)を読んだ。「群像」に2020年から2023年にかけて不定期連載。
六十代の小説家八色朝見の一人称で語られる物語は、コロナのちょっと前から5類移行に至るまでの3年余を、比較的在宅仕事の多い小説家がどのように生きてきたかを語る、エッセイのようにも見える小説だった。
離婚歴があり、おそらく子どものいない八色は、子ども時代、父の仕事の
多和田葉子『太陽諸島』、地球にちりばめられてシリーズ完結!(毎日読書メモ(447)
多和田葉子の新刊『太陽諸島』(講談社)は2021年から2022年にかけて「群像」に連載されていた、言語をめぐる冒険を描く3部作の完結編。
『地球にちりばめられて』の感想がこちら。
『星に仄めかされて』の感想がこちら。
3部作すべて、彗星菓子手製所という和菓子屋さんのお菓子をモチーフにした装丁で、砂糖菓子のマットな半透明感が美しく印象的。
『地球にちりばめられて』を読んだのが2018年12月、『星
滝口悠生『長い一日』、そして君はこの2週間何をしていたのか(毎日読書メモ(431))
滝口悠生『長い一日』(講談社)を読んだ。結構分厚い本で、まさか一日に起こった出来事をこの1冊かけて書いている? それじゃジェームズ・ジョイスの『ユリシーズ』だろ、とか思いつつ読み始めた。
結果的にそんなことはなく、「長い一日」はいくつもの章に分かれた物語の一つの章のタイトルであった。小説家滝口とその妻の生活を中心に、滝口の高校時代の同級生の窓目くんとけり子(けり子のパートナーの天麩羅ちゃん)、窓目
乗代雄介『本物の読書家』(毎日読書メモ(386))
乗代雄介『本物の読書家』(講談社、先月講談社文庫も出た)を読んだ。中編「本物の読書家」「未熟な同感者」の2編所収。「本物の読書家」で野間文芸新人賞受賞。
「本物の読書家」は、川端康成の「片腕」、「未熟な同感者」はサリンジャーの「ハプワース 16、一九二四」を中心に据えた、けれんたっぷりの文学解釈小説。両方の作品で言及されているのはサリンジャー、カフカ、フローベールなど。それ以外にも二葉亭四迷、シャ
井戸川射子『ここはとても速い川』(毎日読書メモ(384))
中原中也賞を受賞している詩人の井戸川射子さんの初の小説集『ここはとても速い川』(講談社)、野間文芸新人賞受賞。
「ここはとても速い川」「膨張」の2作品収録。ことばを大切に、丁寧に綴られているのが感じられ、大切に読む。
「ここはとても速い川」は、児童養護施設に暮らす小学生の少年が、一緒に暮らす年下の少年と過ごす日々を時系列で描いていく。児童養護施設というと有川浩『明日の子供たち』(幻冬舎文庫)みた
津村記久子『現代生活独習ノート』激おも! (毎日読書メモ(361))
津村記久子『現代生活独習ノート』(講談社)を読んだ。めちゃくちゃ面白かった!
初出はすべて文芸誌「群像」、2012年から2021年にかけて。全く連関のない短篇8編。どれもすごく面白い。簡単にまとめてしまうと、「生きにくさ」について色々な角度から書いているのだが、アプローチが作品ごとに全然違って、読んでいてワクワクする。
表題作「現代生活独習ノート」は驚きのSF、自宅で自営の仕事をしている主人公が
柳美里『ファミリー・シークレット』(毎日読書メモ(323))
柳美里の構築力の強さに心惹かれ、何冊も読んでいた時代の記録。『ラミリー・シークレット』(講談社。のち講談社文庫)の感想。
やや下世話な興味で読む。自分の育ち、自分が子どもに行ってきた虐待的行為、虐待の結果子どもと引き離された母親との対話、畠山鈴香や酒井法子についての考察、そうした断片の間に、カウンセラーとの複数回のセッション、カウンセラー臨席での父との再会の記録が入っているが、読んで感じたのは、