2022年12月の記事一覧
井上荒野『生皮 あるセクシャルハラスメントの光景』(毎日読書メモ(448))
井上荒野さんの小説が好きで、『切羽へ』で直木賞受賞される前からずっと順々に読んできたのだが、こんなにもストレートに問題提起する小説は初めてだったかもしれない。『生皮 あるセクシャルハラスメントの光景』(朝日新聞出版)は、2020年から2021年にかけて「小説トリッパ―」で連載されてきた小説。表紙のインパクトもすごい(装画リトルサンダー、装幀佐藤亜沙美で、横たわり、鼻血を拭こうとしている女性の絵)。
もっとみる多和田葉子『太陽諸島』、地球にちりばめられてシリーズ完結!(毎日読書メモ(447)
多和田葉子の新刊『太陽諸島』(講談社)は2021年から2022年にかけて「群像」に連載されていた、言語をめぐる冒険を描く3部作の完結編。
『地球にちりばめられて』の感想がこちら。
『星に仄めかされて』の感想がこちら。
3部作すべて、彗星菓子手製所という和菓子屋さんのお菓子をモチーフにした装丁で、砂糖菓子のマットな半透明感が美しく印象的。
『地球にちりばめられて』を読んだのが2018年12月、『星
今村夏子『むらさきのスカートの女』(毎日読書メモ(445))
今村夏子『むらさきのスカートの女』(朝日文庫)を読んだ。芥川賞を受賞した作品(短編と中編の間くらいの長さ)に、芥川賞受賞時に様々な媒体に書いたエッセイを合わせて収録。Wikipedia見ても今ひとつピンとこなかった今村さんのこれまでの歩みが、本人の言葉で語られていて腑に落ちた。本当は、作者の私生活とかそれまでの人生とかは、個々の作品の評価とは関係ないものだが、この人は何故こういうものを書きたいと思
もっとみる佐野眞一『あぶく銭師たちよ!ー昭和虚人伝』(毎日読書メモ(443))
今年9月に亡くなった佐野眞一さん。文藝春秋から刊行された『昭和虚人伝』が、ちくま文庫で『あぶく銭師たちよ!-昭和虚人伝』というタイトルで刊行されたときに読んだ。
一人一人に割かれたページが少なくて、全体像を掘りおこしたとは言えないが、バブルの時代を象徴する人たちについて、ぎりぎりの部分まで書いたよいルポだと思う(存命の方が大半なので、これ以上書くと裁判になっちゃうもんね)。林真理子『アッコちゃん