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毎日読書メモ

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2022年12月の記事一覧

白石一文『道』(毎日読書メモ(450))

白石一文『道』(毎日読書メモ(450))

白石一文『道』(小学館)を読んだ。
白石一文の小説は、主人公のディテイルがすごく細かく描かれ、その仕事と恋愛や家族関係を緻密に描いた上で、スピリチュアルな超常現象が起こって、それが物語のかじ取りをするものが多く、割と初期に、『見えないドアと鶴の空』を読んだ時に(感想ここ)えっえっ、と驚いたのが最初だったと記憶しているが(それより前の小説では見られなかった展開だった)、ずっと、説明しがたい超常現象が

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今村夏子『星の子』(毎日読書メモ(449))

今村夏子『星の子』(毎日読書メモ(449))

最近あんまり毎日じゃない毎日読書メモです…。

今村夏子『星の子』(朝日文庫)を読んだ。今月は『あひる』を読んで(感想ここ)、『むらさきのスカートの女』を読んだので(感想ここ)その流れで、ってか、今村夏子は作品数が少ないので、これで『こちらあみ子』を読み返して、今年出た『とんこつQ&A』(講談社)を読んだら、ほぼ終わり?...あ、そんなことない、『むらさきのスカートの女』の前後に『父と私の桜尾通り

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井上荒野『生皮 あるセクシャルハラスメントの光景』(毎日読書メモ(448))

井上荒野『生皮 あるセクシャルハラスメントの光景』(毎日読書メモ(448))

井上荒野さんの小説が好きで、『切羽へ』で直木賞受賞される前からずっと順々に読んできたのだが、こんなにもストレートに問題提起する小説は初めてだったかもしれない。『生皮 あるセクシャルハラスメントの光景』(朝日新聞出版)は、2020年から2021年にかけて「小説トリッパ―」で連載されてきた小説。表紙のインパクトもすごい(装画リトルサンダー、装幀佐藤亜沙美で、横たわり、鼻血を拭こうとしている女性の絵)。

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多和田葉子『太陽諸島』、地球にちりばめられてシリーズ完結!(毎日読書メモ(447)

多和田葉子『太陽諸島』、地球にちりばめられてシリーズ完結!(毎日読書メモ(447)

多和田葉子の新刊『太陽諸島』(講談社)は2021年から2022年にかけて「群像」に連載されていた、言語をめぐる冒険を描く3部作の完結編。
『地球にちりばめられて』の感想がこちら。
『星に仄めかされて』の感想がこちら。
3部作すべて、彗星菓子手製所という和菓子屋さんのお菓子をモチーフにした装丁で、砂糖菓子のマットな半透明感が美しく印象的。

『地球にちりばめられて』を読んだのが2018年12月、『星

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朝井リョウ『何様』(毎日読書メモ(446))

朝井リョウ『何様』(毎日読書メモ(446))

朝井リョウ『何様』(新潮社、のち新潮文庫)を読んだ。タイトルからもイメージできるように、直木賞受賞作『何様』(新潮社、新潮文庫)のスピンオフ的な作品だが、単独の短編集としても普通に読める。わたしは『何者』を読んでから長い年月がたっていて、『何者』との関連をあんまり意識しないで読んで、読了後、作者インタビューや書評サイトを見て、この作品のこのキャラは『何者』の中のこの人だった、というのを復習。ふむふ

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今村夏子『むらさきのスカートの女』(毎日読書メモ(445))

今村夏子『むらさきのスカートの女』(毎日読書メモ(445))

今村夏子『むらさきのスカートの女』(朝日文庫)を読んだ。芥川賞を受賞した作品(短編と中編の間くらいの長さ)に、芥川賞受賞時に様々な媒体に書いたエッセイを合わせて収録。Wikipedia見ても今ひとつピンとこなかった今村さんのこれまでの歩みが、本人の言葉で語られていて腑に落ちた。本当は、作者の私生活とかそれまでの人生とかは、個々の作品の評価とは関係ないものだが、この人は何故こういうものを書きたいと思

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今村夏子『あひる』(毎日読書メモ(444))

今村夏子『あひる』(毎日読書メモ(444))

今村夏子『あひる』(書肆侃侃房、現在は角川文庫)を読んだ。表題作は第155回芥川賞候補作(今村が芥川賞を受賞したのは第161回、『むらさきのスカートの女』によって)。2011年に太宰治賞をとった『こちらあみ子』(ちくま文庫)で三島賞もとり、しかしその後全く新作の発表がないまま5年がたち、突如発表されたのがこの『あひる』、表題作以外に「おばあちゃんの家」「森の兄妹」が収録された短編集。美しい挿絵(重

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佐野眞一『あぶく銭師たちよ!ー昭和虚人伝』(毎日読書メモ(443))

佐野眞一『あぶく銭師たちよ!ー昭和虚人伝』(毎日読書メモ(443))

今年9月に亡くなった佐野眞一さん。文藝春秋から刊行された『昭和虚人伝』が、ちくま文庫で『あぶく銭師たちよ!-昭和虚人伝』というタイトルで刊行されたときに読んだ。

一人一人に割かれたページが少なくて、全体像を掘りおこしたとは言えないが、バブルの時代を象徴する人たちについて、ぎりぎりの部分まで書いたよいルポだと思う(存命の方が大半なので、これ以上書くと裁判になっちゃうもんね)。林真理子『アッコちゃん

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