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毎日読書メモ

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2022年10月の記事一覧

『ふしぎ駄菓子屋銭天堂16』(廣嶋玲子・jyajya)(毎日読書メモ(429))

『ふしぎ駄菓子屋銭天堂16』(廣嶋玲子・jyajya)(毎日読書メモ(429))

廣嶋玲子・jyajya『ふしぎ駄菓子屋銭天堂』(偕成社)紅子のアップの顔が怖い16巻。
いよいよ紅子と六条教授直接対決。六条教授の研究所で作った、偽銭天堂アイテムの毒消し行脚は、だんだん研究所の足跡に近づいてきていて、貰ったアイテムを食べてしまって後悔するより前に紅子が回収できるようにまでなってきた。
六条教授のアイテムでひどい目に遭った人が、その毒素を打ち消せる(但し銭天堂のアイテムもきちんと説

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『ベスト・エッセイ2021』(毎日読書メモ(428))

『ベスト・エッセイ2021』(毎日読書メモ(428))

北大路公子さんの著作を、図書館のデータベースで検索していたときにヒットした、『ベスト・エッセイ2021』(日本文藝家協会編、光村図書)を読んでみた。
編纂委員 が 角田光代、林 真理子、藤沢 周、堀江敏幸、町田 康、三浦しをん。その年に新聞や雑誌に掲載されたエッセイとか追悼文なんかから選りすぐられた、4-5ページ程度のエッセイが77編収められている。幾つかは新聞や雑誌で読んだ記憶のあるものだった。

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小豆島に行くから『二十四の瞳』再読してみた(毎日読書メモ(427))

小豆島に行くから『二十四の瞳』再読してみた(毎日読書メモ(427))

トップ画像は、古本屋さんのサイトから借りてきた、壷井栄『ジュニア版日本文学名作選5 二十四の瞳』(偕成社)の表紙。昔持っていた本。当時2-3回は読んだと思う。
それから40年以上たってしまったのだが、瀬戸内国際芸術祭で小豆島に行くことになったので、やはり、もう一度読んでおかなくてはね、ということで図書館で借りてきた。
先生の名前が大石先生で、小柄だから生徒たちに小石先生と呼ばれていたこととか、泣き

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村上春樹『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』(毎日読書メモ(426))

村上春樹『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』(毎日読書メモ(426))

『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです 村上春樹インタビュー集1997-2011』(文藝春秋、のち文春文庫)。

世界の色々なメディアで発表された村上春樹インタビューの集大成。企画を立てた編集のオガミドリさん(として昔よくエッセイに出てきた)の病気の話を後書きで読んで切ない。広告批評の島森さんも亡くなってしまったし。長いタイトルだが、この通りのことを何回もインタビューの中で述べていて興味深い。タイ

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林真理子『みんなの秘密』(毎日読書メモ(425))

林真理子『みんなの秘密』(毎日読書メモ(425))

林真理子『みんなの秘密』(講談社文庫)の読書メモ。そんなに全作品読むほどフォローはしていないが、飛び飛びに結構読んでいる筈なのの、これまでに林真理子の本の感想をあげたことがなかったようだ。
日本大学の理事長になられて、さぞやお忙しいことと思うが、今でも「週刊文春」のエッセイは連載を続けられており、体力のある方なんだろうな、と感嘆する。
新聞の投書欄に、日本大学カザルスホールの復活を願う投稿が掲載さ

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松家仁之『泡』(毎日読書メモ(424))

松家仁之『泡』(毎日読書メモ(424))

松家仁之『泡』(集英社)を読んだ。デビュー作『火山のふもとで』(新潮社)があまりに好きすぎて(わたしにとって、2010年代ベスト小説、と言い切ってもいいくらい)、その後の小説は、その余韻で読んでいる気持ちがどうしてもぬぐえない。どの小説も、何かをあきらめているような、静かな人たちの物語、と読んでしまう。どの登場人物も、嫌いにはならないけれど、自分の友達になるかな、というとちょっと違う、そんな感じの

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伊坂幸太郎『仙台ぐらし』(毎日読書メモ(423))

伊坂幸太郎『仙台ぐらし』(毎日読書メモ(423))

伊坂幸太郎の『仙台ぐらし』、単行本は荒蝦夷(あらえみし)という、仙台の出版社から刊行された(文庫本は集英社文庫で刊行されている)。東京の商業出版社からの刊行だったら買っていなかったかも。2012年2月刊行、ということで、収められている作品は多くが震災前に書かれ、でも、震災1年目に刊行されたことに思い入るところが多かった。

ぼそぼそとした、伊坂幸太郎のつぶやき、そこには昨年の3月11日に喪われた仙

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村井理子『全員悪人』(毎日読書メモ(422))

村井理子『全員悪人』(毎日読書メモ(422))

ずっと気になっていた村井理子『全員悪人』(CCCメディアハウス)を読んだ。作者の夫の母の認知症の様子を、本人のモノローグの形をとって再現した、事実に基づいた物語。
認知症は、脳の働きが、それまでと違ったようになる病気だが、その脳の働きの変化が人によって全然違う。この物語の語り手である「私」の症状は、夫に対する疑念(デイサービスの職員と浮気している/脳梗塞で入院しているので、今ここにいるのは夫ではな

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村上春樹『羊をめぐる冒険』(毎日読書メモ(421))

村上春樹『羊をめぐる冒険』(毎日読書メモ(421))

村上春樹の『羊をめぐる冒険』(講談社→講談社文庫)、村上春樹作品の中でも一番再読回数の多い作品かもしれない。1983年、『1973年のピンボール』が講談社文庫に入った時に村上春樹の小説と電撃的に出会い、慌てて『風の歌を聴け』を読み、当時まだ文庫化されていなかった『羊をめぐる冒険』を単行本で買い、上下巻に分かれて刊行された文庫本もその後買って、図書館みたいな透明シールでカバーして、それを持ち歩いて読

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瀬川深『チューバはうたう』『ミサキラヂオ』(毎日読書メモ(420))

瀬川深『チューバはうたう』『ミサキラヂオ』(毎日読書メモ(420))

読書メーターで名前を見かけて読んでみた瀬川深。あんまり多くの作品は出ていないようだが、静かな作風が記憶に残っている。もうあまり小説は発表されていないのだろうか。と思ったらnoteにも小説掲載されていますね。末尾にリンクを貼ります。

『チューバはうたう―mit Tuba』(筑摩書房、その後小学館文庫):読書メーターで他の人の感想が目にとまって、存在を知った本。チューバという楽器との遭遇は偶然だった

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近藤史恵『エデン』『サヴァイヴ』(毎日読書メモ(419))

近藤史恵『エデン』『サヴァイヴ』(毎日読書メモ(419))

近藤史恵のサイクルスポーツもの。『キアズマ』は前にあげてある(ここ)。『サクリファイス』(新潮文庫)の衝撃、感想文が見つからないので当時の驚きを紹介できないが、その後のチカの物語を幾つか。

近藤史恵『エデン』(新潮社→新潮文庫):『サクリファイス』に圧倒された後、待ち望んでいた続編をようやく読む。ミステリーの真相としては『サクリファイス』ほどの驚きはなかったが、しかし、フランス人固有の文化、価値

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庄野潤三『逸見小学校』(毎日読書メモ(418))

庄野潤三『逸見小学校』(毎日読書メモ(418))

逸見は神奈川県横須賀市の地名。京浜急行に逸見という駅があります。

大好きな庄野潤三さんが2009年に亡くなって、この本が出たのが2011年だった。新作が読めなくなった寂しさを感じていた時期に、発掘された旧作もまた愛しい。

もう新作は出ないから、発掘された原稿も本になる。戦時中の若者の姿を描いた物語は、意外と雄弁に時代の現実を物語っている。老年の夫婦の物語よりも、リアル、きれいごとでなく、従軍す

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