見出し画像

瀬川深『チューバはうたう』『ミサキラヂオ』(毎日読書メモ(420))

読書メーターで名前を見かけて読んでみた瀬川深。あんまり多くの作品は出ていないようだが、静かな作風が記憶に残っている。もうあまり小説は発表されていないのだろうか。と思ったらnoteにも小説掲載されていますね。末尾にリンクを貼ります。

『チューバはうたう―mit Tuba』(筑摩書房、その後小学館文庫):読書メーターで他の人の感想が目にとまって、存在を知った本。チューバという楽器との遭遇は偶然だったけれど、それが主人公の人生の中で必然になっていく様子が淡々と冷静に描かれている。すごい説得力。併録の「飛天の瞳」はちょっとタイトルがわかりにくいが、角田光代の東南アジア旅行ものをちょっと思わせる、失われた歌の話。「百万の星の孤独」はメガスター開発者を思わせるプラネタリウム自作者と、プラネタリウム興行をめぐるある一日の色んな人々の物語。どれも丁寧に描かれていて、じわっとくる。(2010年6月の読書メモ)

『想像力の文学 ミサキラヂオ』(早川書房):2050年の架空の土地ミサキ。どうしても三浦半島の先端をイメージして読んでしまうが、土着の人、流れ着いた人、老人から若者まで、沢山の登場人物の群像劇が、コミュニティFM局を芯にして繰り広げられる。最初はとりとめがなさすぎる気がしたのに、1年の物語が終わるときには、すべての登場人物が愛おしくなっていた。最後はみんな集まっての大団円。よく作られた物語。未来ものでも奇をてらわないで書ける、というのも面白かった。(2010年7月の読書メモ)


#読書 #読書感想文 #瀬川深 #チューバはうたう #ミサキラヂオ #筑摩書房 #早川書房 #想像力の文学

この記事が参加している募集

#読書感想文

189,831件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?