ダイデラモネ🏳️‍🌈

アマゾンに書いたレビューからの転載がメインですが、たまにオリジナルも書きます。また、転…

ダイデラモネ🏳️‍🌈

アマゾンに書いたレビューからの転載がメインですが、たまにオリジナルも書きます。また、転載は時事にあわせる場合もあります。出版関係の仕事をしていたことがありますが今は足を洗っていますので、読者の立場から出版界のあれこれについて書くこともあります。

記事一覧

人はなぜ本を読まなくなるのだろうか―読書月記55

(敬称略) 三宅香帆著『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)を入手し、読み始めた。話題の本なので(発売から3か月少しだけど、Amazonのレビューがか…

文学に青春を、人生をかけた若者たちが躍動する『日本文壇史』―読書月記54

(敬称略) 『日本文壇史』を再読している。執筆は伊藤整と瀬沼茂樹だが24冊もあり、かなりゆっくりとしたペースで読んでいるので読了までに1年以上かかりそうだ。今、第3…

町に本屋さんがあり、みんなが本を読むのは当たり前のことなのか?―読書月記53

(敬称略) ここしばらく、書店(以下、町の本屋さん)の減少に関するニュースをよく見かける。確かに町の本屋さんは減少している。原因として、ネット書店や電子書籍の普…

清原なつのの『じゃあまたね』を読みながら、10代の頃の精神的「背伸び」について考える―読書月記52

(敬称略) 60代以上の人なら、1969年にヒットした『フランシーヌの場合』という歌を覚えている人も多いだろう。私の場合、歌詞の内容の詳細について知ったのは大人になっ…

黒い霧事件と赤ちゃんあっせん事件と十一谷義三郎の『花より外に』―読書月記51

(敬称略) 久々に「野球賭博」という言葉がネットに溢れたのを見てビックリした。ただ、私の中では「野球賭博」という言葉は「八百長」という言葉とセットだ。私の子ども…

『鬼の筆』を読みながら考えた、映像化の功罪―読書月記50

(敬称略) 先月、本(活字メディア)と映画(映像メディア)を中心に論じた『夢想の研究』について書いたが、そのすぐ後、脚本家・映画監督の橋本忍についての評伝『鬼の…

瀬戸川猛資の『夢想の研究』を再読しながら考えたアレコレ―読書月記49

(敬称略)             瀬戸川猛資の『夢想の研究』(創元ライブラリ版)を再読した。最初に読んだのは、1999年に同書が刊行されて間もない頃だったと記憶し…

2023年に読んだ本ベスト5―読書月記番外編

『終盤戦 79歳の日記』メイ・サートン著(みすず書房) 『ニジンスキー 踊る神と呼ばれた男』鈴木晶著(みすず書房) 『大いなる錯乱 気候変動と〈思考しえぬもの〉』ア…

買った本にまつわる「記憶」と「記録」―読書月記48

(敬称略) マンガ家の篠有紀子が初期に発表した作品に『冬の日の1ページ』がある。篠の作品のなかでは、私が最も好きなものだ。コミックス『フレッシュグリーンの季節』…

ミステリのトリック集とコスパ重視―読書月記47

(敬称略) 最近もあるのかどうか分からないが、私が子どもの頃に、ミステリのトリックだけを集めて解説した本があった。もちろん、私が読んだのは子ども向けだ。犯人の名…

古書を買うとき、売るときのアレコレ―読書月記46

(敬称略) 何がきっかけだったのか忘れたが、少し前に斎藤栄の『水の魔法陣』を読み返した。最初に読んだのは30年以上も前だと思う。読んだ文庫の解説によると、『火の魔…

個人出品が増加する古書市場―読書月記45

(敬称略) 8月終わりぐらいから、蔵書整理を始めた。終活まではいかないが、リタイア後のことも考えてのことで、7~8年かけてのことになりそうだ。基本的には4~5割程度…

『大島弓子選集8 四月怪談』―Amazonレビュー欄から消されたレビュー1

本選集第1巻末尾に付された「作品リスト」を開き、1978年5月から1979年6月までに発表された作品を見てみると、感嘆してしまう。もちろん、この前にも、この後にも、傑作が…

「月刊みすず」と「STORY BOX」の紙版が終刊号を迎えた―読書月記44

(敬称略) 「月刊みすず」が8月号で、「STORY BOX」が9月号で、それぞれ紙版を終了し、WEB版へ移行する(ともに発行は8月中)。両誌の移行は、現今の雑誌の厳しい状況を…

『Slowdown 減速する素晴らしき世界』を読んで考えたこと二つ―読書月記43

(敬称略) 『Slowdown 減速する素晴らしき世界』を読んだ。興味深い指摘が多い本だった。ただ、中身の全体についての話ではなく、同書を読むことで思いついた二つのこと…

不世出の天才ダンサー、ニジンスキーの生涯を描くー『ニジンスキー―踊る神と呼ばれた男』(鈴木晶著/みすず書房)

(敬称略 「はじめに」に「本書が対象にするのは」「ダンサーかつコレオグラファー(振付家)としてのニジンスキー」と書かれているように、マリインスキー劇場時代も含め…

人はなぜ本を読まなくなるのだろうか―読書月記55

(敬称略)

三宅香帆著『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)を入手し、読み始めた。話題の本なので(発売から3か月少しだけど、Amazonのレビューがかなりある)、読んだ人、手に取った人も多いだろう。ただし、私は読み始めたばかりなので、ここでは内容については深くは立ち入らない。書名から連想されることと「まえがき」の部分を読んで感じたこと、私の体験などを書いてみる。

幾度となく書い

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文学に青春を、人生をかけた若者たちが躍動する『日本文壇史』―読書月記54

(敬称略)

『日本文壇史』を再読している。執筆は伊藤整と瀬沼茂樹だが24冊もあり、かなりゆっくりとしたペースで読んでいるので読了までに1年以上かかりそうだ。今、第3巻を読んでおり、明治24~26年辺りで、樋口一葉がデビューしている。

再読といっても、前に読んだのは30年以上も前だ。私が持っているのは単行本で1980年代の後半に古本で購入している。1994年には講談社文芸文庫版が刊行されているが

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町に本屋さんがあり、みんなが本を読むのは当たり前のことなのか?―読書月記53

(敬称略)

ここしばらく、書店(以下、町の本屋さん)の減少に関するニュースをよく見かける。確かに町の本屋さんは減少している。原因として、ネット書店や電子書籍の普及をあげている場合が多い。たしかに、それらも要因であるが、本質的な問題は、日本人が書籍や雑誌を買わなくなったことだ。1996年には書籍と雑誌で約2兆6000億円あった売り上げが、2023年には約1兆6000億円。しかも5000億円は電子書

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清原なつのの『じゃあまたね』を読みながら、10代の頃の精神的「背伸び」について考える―読書月記52

(敬称略)

60代以上の人なら、1969年にヒットした『フランシーヌの場合』という歌を覚えている人も多いだろう。私の場合、歌詞の内容の詳細について知ったのは大人になってからだが、歌そのものと、抗議の焼身自殺ということだけは、子どもながら知っていた。

先日、清原なつのの自伝的作品『じゃあまたね』(kindle版)を読んでいたら、この曲の話が出てきた。『じゃあまたね』では、清原は個人的なことはもち

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黒い霧事件と赤ちゃんあっせん事件と十一谷義三郎の『花より外に』―読書月記51

(敬称略)

久々に「野球賭博」という言葉がネットに溢れたのを見てビックリした。ただ、私の中では「野球賭博」という言葉は「八百長」という言葉とセットだ。私の子ども時代、1960年代末から1970年代初頭、プロ野球界を賑わせたこの二つの言葉は、最終的に「黒い霧事件」という言葉に集約されていく。
日本のプロ野球では、1970年代には様々な世間を騒がせる事件も多かったが、やはりこの「黒い霧事件」ほどショ

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『鬼の筆』を読みながら考えた、映像化の功罪―読書月記50

(敬称略)

先月、本(活字メディア)と映画(映像メディア)を中心に論じた『夢想の研究』について書いたが、そのすぐ後、脚本家・映画監督の橋本忍についての評伝『鬼の筆』を読んだ。日本映画に関して多少の知識があれば、橋本忍の名を知らぬ人はいないだろう。橋本は多くの作品の脚本を手掛けているが、原作ありの作品がかなり多く、そういった意味では『夢想の研究』の内容と通じる部分があったし、橋本の原作の読み込み、

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瀬戸川猛資の『夢想の研究』を再読しながら考えたアレコレ―読書月記49

(敬称略)            

瀬戸川猛資の『夢想の研究』(創元ライブラリ版)を再読した。最初に読んだのは、1999年に同書が刊行されて間もない頃だったと記憶している。ときどき、部分的に拾い読みをすることはあったが、通読するのはかなり久しぶりだ。
創元ライブラリ版が刊行された時点で、著者は鬼籍に入っていた。著者はミステリや映画に関する文書を多数発表していた。しかし、私は映画も観ていたしミステ

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2023年に読んだ本ベスト5―読書月記番外編

『終盤戦 79歳の日記』メイ・サートン著(みすず書房)
『ニジンスキー 踊る神と呼ばれた男』鈴木晶著(みすず書房)
『大いなる錯乱 気候変動と〈思考しえぬもの〉』アミタヴ・ゴーシュ著(以文社)
『暗闇の効用』ヨハン・エクレフ著(太田出版)
『昆虫絶滅 地球を支える生物システムの消失』オリヴァー・ミルマン著(早川書房)

『昆虫絶滅』のみ読んでいる最中。『世界は五反田からはじまった』星野博美著(ゲン

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買った本にまつわる「記憶」と「記録」―読書月記48

(敬称略)

マンガ家の篠有紀子が初期に発表した作品に『冬の日の1ページ』がある。篠の作品のなかでは、私が最も好きなものだ。コミックス『フレッシュグリーンの季節』に収められた作品で、1979年の「LaLa」2月号に掲載されたのが初出だ。
この作品の中には好きな台詞がいくつかあるが、その一つに「いつもと違うことすると いつもは見えないものが見えてくるから」というものがある。ごみなどが落ちていて普段は

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ミステリのトリック集とコスパ重視―読書月記47

(敬称略)

最近もあるのかどうか分からないが、私が子どもの頃に、ミステリのトリックだけを集めて解説した本があった。もちろん、私が読んだのは子ども向けだ。犯人の名前はなかったと記憶しているが、トリックの紹介にはイラストがあるものが多く、それに加え、ご親切に作品名まで書かれていた。子どもの頃の私は、この本を読んで後々どんなことになるかなんて考えずに、この手の本を何冊か読んだ記憶がある。覚えていないも

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古書を買うとき、売るときのアレコレ―読書月記46

(敬称略)

何がきっかけだったのか忘れたが、少し前に斎藤栄の『水の魔法陣』を読み返した。最初に読んだのは30年以上も前だと思う。読んだ文庫の解説によると、『火の魔法陣』『空の魔法陣』の3部作だということなので、そちらも、ネットで古書を、それぞれ上下セットを見つけ購入し、読むことにした。この2作も以前に読んでいるが、3作ともほぼ記憶にない。
それぞれ共通する登場人物がいるものの、独立して読める作品

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個人出品が増加する古書市場―読書月記45

(敬称略)

8月終わりぐらいから、蔵書整理を始めた。終活まではいかないが、リタイア後のことも考えてのことで、7~8年かけてのことになりそうだ。基本的には4~5割程度の本を処分するつもりだ。
蔵書整理については、3年前の「読書月記番外編」でも触れているが、基本的に今回も売るのは「ヤフオク」「ブックオフ」「日本の古本屋」になる。個人出品先としては「メルカリ」もあるが、購入先としてはいいが、固定価格な

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『大島弓子選集8 四月怪談』―Amazonレビュー欄から消されたレビュー1

『大島弓子選集8 四月怪談』―Amazonレビュー欄から消されたレビュー1

本選集第1巻末尾に付された「作品リスト」を開き、1978年5月から1979年6月までに発表された作品を見てみると、感嘆してしまう。もちろん、この前にも、この後にも、傑作がないわけではない。それでも、この14か月間に発表された作品の凄さは、やはり特別だ。樋口一葉に「奇跡の十四か月」があるが、大島弓子にも「奇跡の十四か月」があったのだろう。

本巻には、その時期に書かれた作品4作を含め8作が収録されて

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「月刊みすず」と「STORY BOX」の紙版が終刊号を迎えた―読書月記44

「月刊みすず」と「STORY BOX」の紙版が終刊号を迎えた―読書月記44

(敬称略)

「月刊みすず」が8月号で、「STORY BOX」が9月号で、それぞれ紙版を終了し、WEB版へ移行する(ともに発行は8月中)。両誌の移行は、現今の雑誌の厳しい状況を反映していると考えていいだろう。

私の読書の中心は書籍で、雑誌にはそれほど思い入れはないものの、それでも1980年以降、40年以上に渡って、途切れることなく最低でも月に1冊以上の雑誌を買い続けてきた。普通の活字の雑誌、出版

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『Slowdown 減速する素晴らしき世界』を読んで考えたこと二つ―読書月記43

(敬称略)

『Slowdown 減速する素晴らしき世界』を読んだ。興味深い指摘が多い本だった。ただ、中身の全体についての話ではなく、同書を読むことで思いついた二つのことについて書いてみたい。ちなみに、私はkindleで読んだが、紙の書籍だと540ページ、それなりの厚みだ。寝転んで読むには少し分厚いだろう。

まずは、第4章「データ-新しいものがどんどん減っていく」のなかでオランダの出版に関する部

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不世出の天才ダンサー、ニジンスキーの生涯を描くー『ニジンスキー―踊る神と呼ばれた男』(鈴木晶著/みすず書房)

(敬称略

「はじめに」に「本書が対象にするのは」「ダンサーかつコレオグラファー(振付家)としてのニジンスキー」と書かれているように、マリインスキー劇場時代も含め、ニジンスキーの「踊り」の部分について詳しく描かれている。著者は四半世紀前に『ニジンスキー 神の道化』を書いているが、「あとがき」によると、「最初からもう一度全部書き直すことにした。ただし、前著をそのまま残した部分も若干はある」とのこと。

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